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今回はこういうお題でいきます。日本史のほうに
入れようかとも思いましたが、根拠のない話ですので、
妖怪談義にしておきます。さて、ヤマタノオロチは漢字で
「八岐大蛇(日本書紀)、八俣遠呂智(古事記)」
などと書き、8つの頭を持った蛇身の怪物です。

高天原を追放された須佐之男命(スサノオノミコト)は、
出雲国の肥河の上流の鳥髪に降り立った。箸が流れてきた
川を上ると、美しい娘を間に老夫婦が泣いていた。その夫婦は
国津神、大山津見神の子の足名椎(アシナズチ)と手名椎

(テナヅチ)であり、娘は櫛名田比売(クシナダヒメ)といった。
夫婦の娘は8人いたが、年に一度、高志から8つの頭と8本の
尾を持った巨大な怪物がやって来て娘を食べてしまう。
今年もオロチの来る時期が近づいたため、最後に残った末娘の

オロチと戦うスサノオ


櫛名田比売も食べられてしまうと言う。須佐之男命は、
娘との結婚を条件に、オロチ退治を請け負った・・・
まあ、書くまでもない、みなさんよくご存知の話です。
この手の筋の神話は世界各地にあり「アンドロメダ型神話」

と呼ばれます。ギリシア神話で、アンドロメダの母親が、
自分の美貌は神々より優る、と放言したため、怒った神々に
より、ケートスという怪物の餌食にされることとなった。
そこを訪れたのが、旅の途中のペルセウスで、

怪物に襲われるアンドロメダ
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ちょうどゴルゴンの三姉妹の一人、メドゥーサを退治し、

見れば石と化すその首を持っていたペルセウスは、怪物に

メデューサの首を見せてアンドロメダを救出した。
アンドロメダは後にペルセウスの妻となった・・・

ギリシア神話のほうが日本神話よりずっと成立が古いと 
考えられますので、遠く地中海から伝播してきたのかも
しれません。スサノオノミコトは計略でオロチに酒を飲ませ、
見事に退治して、美女と、オロチの尾から出てきた
天叢雲(アメノムラクモ)の宝剣を自分のものとします。

クシナダヒメ
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さて、ここでヤマタノオロチの正体は何か?  もちろん
実在していたとは考えられず、想像上の怪物と言っていいと
思いますが、何らかのものを象徴していたのではないかとする
話がありますね。大きく3つの説があります。

どれから紹介していきましょう。まずは明治の物理学者にして
随筆家の寺田寅彦博士が主張した溶岩説かな。寺田寅彦博士
については以前、記事で取り上げていますが、『怪異考』という、
各地に伝わる怪異を科学的に考察した著作があり、
これは青空文庫で読めます。



オロチの描写は、「目がほおずきのように赤く・・・長さは
山8つ分、谷8つ分あり、腹に血をにじませていた」とあり、
赤いということが強調されていて、溶岩を思わせるところが
たしかにあります。ただ、この説が弱いのは、

話の舞台となった出雲国の肥河(現・島根県斐伊川)付近には
それらしい火山がないことです。溶岩が流れた形跡もありません。
次が洪水説ですね。斐伊川は多くの支流をもつ暴れ川であり、
つねに氾濫して周囲に多くの被害をもたらしていた象徴という
わけです。生贄の娘の名が『日本書紀』では奇稲田姫。

稲田という言葉が入っているように、水田を表している。
考古学的には、弥生時代の水田跡は、川に近いと水を引くのに
便利ですが、洪水で全滅してしまいますので、川からは離れた、

水を上から下に流せるような、ゆるい傾斜地に

見つかることが多いんです。


斐伊川
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あと川に生贄を捧げることは、『日本書紀』の仁徳紀に、   
淀川の治水のとき、神のお告げで人柱を捧げれば工事が
上手くいくとなり、武蔵国の人・強頸(こわくび)が
泣きながら水に沈められたという話が出てきています。

最後の3つめは、製鉄を表しているというもの。
ヤマタノオロチが「野だたら」製鉄で炉から流れ出した
銑鉄を表しており、婚姻は一族を支配下に治めたことを
表現しており、ヤマタノオロチの討伐は「野だたら」製鉄を

野だたら製鉄
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する一族を支配下に治めて鉄剣を献上させたことを
表現しているという説。野だたらとは、露天で自然の通風を
利用したかまどで鉄を得るもので、実際、出雲近郊の山間部では、
時代のはっきりしない野だたらの遺跡が、数多く見つかっています。

さてさて、結論が出るような内容ではないんですが、自分は
いちおう洪水説にしておきます。あと、この話で、須佐之男命は
櫛名田姫を櫛に変えて自分の髪に挿して戦ったとあり、
櫛には女の霊力が宿るとも言われます。では、今回はこのへんで。