今回はこういうお題でいきます。『イベント・ボライズン』というのは
1997年のアメリカ映画で、SFホラーというべき内容の作品でした。
題名のイベント・ホライズン((Event Horizon)は、
相対性理論で、ブラックホール内において重力のために光さえも脱出
できなくなる境界のことを指します。そこより内側からは一切の情報が
出てくることはできません。事象の地平線と訳されています。

映画のストーリーは、7年前世界初のワープ航法を試みた宇宙船、
イベント・ホライズン号は、ワープ開始と同時に消息を絶ったが、再び
出現が確認され、そこでデータ収集と乗組員救出のために船へと
向かったクルーたちが遭遇する怪奇現象を描いたものでした。

ここからの内容は、この映画のネタバレを含みますので、未見の方は
ここで読むのを止めたほうがいいかもしれません。で、この映画、
興行的には成功とは言えなかったんですが、ビデオ発売と同時に
視聴する人が増えたため、『ドニー・ダーコ』などと同じように
カルトムービーと言われたりしています。

 


 
で、この映画のワープ航法の原理は、SFの王道というか、時空を捻じ曲げ、
ブラックホールからワームホールを通ってホワイトホールから出る、
というものが採用されていました。ただ、この内容が斬新だったのは、
キリスト教と組み合わされていたことで、

イベント・ホライズンの船内は、フランス、パリのノートルダム寺院を
モデルにして造形され、作中、いたるところに十字架のモチーフが
出てきたりします。イベント・ホライズン号が通ったワームホールの先、
異空間はじつは地獄だったというのが結論なんですよね。

しかも、イベント・ホライズン号の推進エンジンは、ミニブラックホール

であり、それが地獄を通ったことによって邪悪な意志を持ったんです。
そして、救出クルーに過去のトラウマを見せ始める・・・

 

事象の地平線(赤色の部分)


この内容、どう思われますでしょうか。SFはSFなんですが、完全に科学を
逸脱していますよね。地獄は異空間に実在していたというんですから。
キリスト教などの地獄の存在を説く宗教は、ある程度までそのことを
知っていたということになるんでしょうか?

さて、話を変えて、ここからはSFについて書きます。
SFで、ワープを扱うには、大きく分けて3つほどの方法があるかと思います。
一つは、時空の歪みを利用するもので、その利用のしかたはいろいろです。
『宇宙戦艦ヤマト』『スター・トレック』や『スターウォーズ』のシリーズは、
細かな方法の違いはあっても、すべて時空の歪み系と言っていいかと思います。

2つ目は、物質転送によるものです。われわれ人間の体は、つきつめれば
素粒子から成り立っているわけですが、それを分解して別の場所で再構成する。
ここで、再構成されたものが元の人間と同じなのかという議論は
あるかと思います。また、これはワープではなくテレポテーションなのでは
ないかとする考え方もあるでしょう。
映画でこれを使っているのは『ザ・フライ』『DOOM』などでしょうか。

 

ブラックホールワームホールホワイトホール



3つ目は、完全に物質界を離れ、精神の力で空間をワープするというものです。
はたして精神だけの存在がありえるのか? また、精神の力で空間を
跳びこえるなんてできるのか? という疑問は当然出てきます。
映画では、うーん、いい例が思いつかないですが、『ハリーポッタ』シリーズに
出てきた姿現しみたいなものなんでしょうか。あれは魔法でしたが。

まあ、ワープなんてできない、と言ってしまえば話は簡単なわけですが、
そこをなんとか実現させようと、あれこれ屁理屈をこねまわしているのを
読むのもSFの楽しみ方のひとつなんですよね。

 



それにしても、本作『イベント・ホライズン』の、ブラックホールを
抜けた先が地獄であった、という考えには意表をつかれました。
映画の中にはラテン語も出てきますすし、こういう形でSFと宗教を

融合させることができるとは思いもよりませんでした。
全体的にみれば、つじつまが合わない部分や意味不明な部分はたくさん
あるんですが、この映画がビデオでウケたというのはわかる気がします。

さてさて、上記した3つのワープするための方法、どれも無理そうな気が
するんですが、どれか一つを選べと言われたら、最初のものが可能性が
高いでしょうか。ホワイトホールも、もしかしたらそれではないか
という候補も見つかっているので、今後の研究の進展に期待しましょう。
では、今回はこのへんで。