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ミケランジェロ 『最後の審判』

今回はこういうお題でいきます。キリスト教のお話ですが、
日本人の中でキリスト教徒は人口の1%もいないので、
興味のない方はスルーされてください。あとまあ、自分も
キリスト教徒ではないので、いろいろ間違っているところも
あると思います。その点はご容赦ください。

さて、キリスト教的な世界観で怖い話を書くのって
すごく難しいんですよね。日本人はお盆には墓参り(仏教)、
新年には初詣(神道)に行く人が多いんですが、ある神仏に
深い信仰を抱いている人って多くないですよね。ところが
キリスト教国では、心のスキに悪魔がしのび込んできて、

悪の側に落ちてしまうことを恐れる人はたくさんいるんです。
なぜなら、悪の側に落ちた人間の魂は最後の審判において、
永遠に地獄の炎で焼かれることになるからです。そのあたりの
ことを描いたのが1987年のアメリカ映画『エンゼル・ハート』。

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自分も、悪魔を取り上げた怖い話をいくつか書いていますが、
いつも難しいなあと思います。あ、これだと字数が足りなくなる。
さて、「黙示録」は正式には「ヨハネの黙示録」とも言われ、
『新約聖書』の最終章にあたり、この世が滅ぶ様子と、
その後の最後の審判について書かれています。

英語では「Apocalypse」。1979年のアメリカ映画『地獄の黙示録』
は、原題が「Apocalypse Now」。ベトナム戦争の地獄を描いた
お話でしたね。さて、では「ヨハネの黙示録」は誰が書いたのか。
ヨハネはイエスの12使徒の一人と一般的には考えられていますが、
異説もあります。できたのはイエスの死後、早い時期。

 

ペイルは Pale 青ざめたという意味


2世紀にはすでに存在していたのは間違いありません。内容は、
神の預言と言えます。子羊(おそらくイエス・キリストのこと)
が神から与えられた巻物の7つの封印(seven seals)を解いて
いきます。まず第1の封印を解くと白い馬に乗った騎士が現れ、
世を支配します。第2の封印は赤い馬の騎士。

戦争の象徴です。第3の封印は黒い馬。飢饉が起きて誰も
食べ物が買えないくらい高価になる。第4の封印では、
蒼ざめた馬に乗った騎士が死をもたらします。アガサ・クリスティ
の推理小説に『蒼ざめた馬』がありますが、これは

死という言葉の同義語として使われることが多いんです。
また、日本でも作家の五木寛之氏が『蒼ざめた馬を見よ』を
書いて直木賞を受賞しています。あと、筒井康隆氏が
『馬は土曜に蒼ざめる』を書いていますが、自分が読んだかぎり
五木氏のパロディというわけではないようです。



クリント・イーストウッドの代表作の一つである『ペイルライダー』も
この語を意識してつけられた題名です。第5の封印が解かれると、
殉教者が甦って血の復讐を求めます。第6の封印は、地震と天災が
起き、第7の封印では「しばらく沈黙があり、祈りがささげられる」
とあります。ですが、この祈りは聞き入れられず、

7人の天使が次々にラッパを吹き鳴らし、植物が焼け、海が血になり、
地上に星が落ちてきます。太陽も月も暗くなり、イナゴの群れが
襲ってきます。4人の天使が人間の3分の1を殺し、天の神殿が
開かれ、契約の箱が見える。さらにこの後も数々の災いが起きて
地上は完全に崩壊し、悪魔と神の民の戦いが始まります。

災いのラッパを吹く7人の天使
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そして、最後の審判が行われ、新しい天地ができ、そこに
イエス・キリストが再降臨する・・・だいたいこんな内容ですね。
多くの宗教は終末論を持っています。仏教にも末法思想が
ありますが、これはキリスト教的な終末論。ただ、日本の神道には
終末論らしきものはありません。この世は千代に八千代に続いていく。

さて、この黙示録の内容はキリスト教徒の間ではくり返し読まれ、
また、教会での説教にも使われるため、よく知っている人が
多いんです。ですから、上記したように映画や文学でも
あれこれ出てくるんですね。あとそうですね、

黙示録の4騎士


オカルトとしては、「獣の刻印 666」という黙示録の内容がよく
知られています。「富める者にも貧しい者にも、自由な
身分の者にも奴隷にも、すべての者にその右手か額に刻印を
押される。そこで、この刻印のある者でなければ、
物を買うことも、売ることもできないようになった。

この刻印とはあの獣の名、あるいはその名の数字である」
で、この666、じつは616と書かれている写本もあり、
どっちなのかはっきりしないんですが、666のほうが語呂がよく、
こちらが正しいと考える研究者のほうが多いでしょう。

皇帝ネロ
キャプチャ

では、「獣」とはいったい誰のことか。キリスト教徒を迫害した    
ローマ皇帝ネロを表しているというのが定説です。ネロは
1世紀の人で、キリスト教徒と猛獣を戦わせたり、初代ローマ教皇
ペトロを迫害し十字架にかけたとも言われます。

さてさて、獣の候補はこの他にも何人かいて、近年では
ブッシュ父大統領とか、トランプ大統領と言われたりしました。
でも、ネロであったと考えるのがドラマチックですね。この後、
ローマ帝国はキリスト教の広がりを押さえきれず、ついには
国教として認めることになります。では、今回はこのへんで。