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今回はこういうお題でいきます。怪談論に入るかな。
さて、ほんとうは推理小説と怪談の接点について考えてみようと
思ったんですが、この2つは比較しにくいものですよね。
推理小説が完全なフィクションであるのに対し、怪談は
フィクションかノンフィクションかがあいまいな場合が多い。

ですので、間にホラー小説をはさんで考察してみたいと思います。
推理小説とホラー小説なら比較はしやすいです。
どちらもフィクション、創作なんですが、推理小説が合理的に
謎が解けなくてはならないのに対し、ホラーの場合は
超自然の要素が入ってくる。

映画の場合は、サスペンス、スリラーと呼ばれる作品があります。
これは連続殺人鬼などをあつかい、観客の恐怖や緊張感をあおる
タイプのものですが、やはり超自然的な要素はありません。
ただ、最近はホラーとサスペンス映画の区別は
あいまいになってきています。

「100kmババア」などは怪談というより都市伝説
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これはどうしてかというと、ホラーとサスペンスの両方に
またがる、スプラッターというジャンルができたからでしょう。
例えば、『ソウ』のシリーズや『ホステル』など、超自然的な要素の
ないものも、『13日の金曜日』シリーズのように不死の殺人鬼が
出てくるものも、どちらもスプラッターと呼ばれます。

要はたくさん血しぶきがあがり、人体損壊などのグロ描写があれば
いいわけです。あと、SFホラーと呼ばれるジャンルも出てきました。
『エイリアン』シリーズの最初の作品は、まあSFなんですが、
映画の手法としては、ホラー映画のノウハウがたくさん入っていました。
また、『遊星からの物体X』などはSFスプラッター的ですね。

トリッキーなホラーである『ソウ』
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さて、推理小説では、本物の超自然的な存在を出すのは反則です。
このあたり、中国の映画の現状を考えてみればいいでしょう、
中国では基本的に、現代を舞台にした本格的な幽霊映画は
製作禁止なんですね。その理由として「幽霊話は人間の心理を
おかしくしたり、幻覚を起こしたり、夢に働きかけたりするから」

ということのようです。ですから、映画の序盤に幽霊が出てきたと
しても、それは心理的な錯覚であったり、生きた人間が扮装していた
ものであったことが最後のほうで判明します。ただこれ、
国の方針とはいえ、もったいない話だなあと思います。中国には
才能ある監督がたくさんいるのに。

幽霊は出てきませんがたいへんに怖い『黒い家』 いわゆる人怖
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もともと、推理小説はホラーと近いものでした。最初の推理小説と
言われる『盗まれた手紙』 『モルグ街の殺人』を書いた
エドガー・アラン・ポーは怪奇小説家なわけですから。
ですがだんだんに、推理小説の謎は合理的に解決されなくては
ならない、となっていきます。

「ヴァン・ダインの二十則」というのがありますね。推理小説家で
評論家でもあるS・S・ヴァン・ダインが、推理小説を書くにあたって、
やってはいけない20の決まりを述べたもので、その第8則で
「占いや心霊術、読心術などで犯罪の真相を告げてはならない」と
されています。

『13日の金曜日』シリーズ後半はギャグ的な要素も
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まあ当然の話で、それがありだとすると推理する意味がなくなって
しまいます。ヴァン・ダインがこれを書いたのが1928年で、
まだまだ心霊主義の交霊会などが行われていたため、
こういう条項が入ってるんでしょう。

では、推理小説とホラー小説にまたがる作品はないのかというと、
これがあるんです。ジョン・ディクスン・カーが1937年に
発表した『火刑法廷』で、カーの最高傑作と言われたりもします。
ネタバレになるので くわしい筋はご紹介しませんが、「火刑」は
魔女に対する刑罰で、魔女が出てくることがわかります。

最初の推理小説と言われる『モルグ街の殺人』
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殺人と納骨室からの死体消失という謎が出てくるんですが、
最後の場面で、推理小説的な合理的な解決と怪奇小説的な解決の
両方が示されます。で、どちらの解釈も拮抗するんですが、
自分は怪奇小説的な解釈のほうが話としては面白いと思いましたし、
カーもおそらくそちらに力を入れて書いた気がします。

たいへんな名作なんですが、翻訳が古いせいもあって最近あまり
読まれてないんですね。もし未読の場合は、ぜひご一読を。
あれこれ書いてきましたが、そもそも推理小説自体、かなり
非現実的ですよね。実際の事件はほとんどが短絡的な犯行です。

SFスプラッターといえる『遊星からの物体X』(リメイク)
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さて、残り字数が少なくなってきました。怪談の場合、上で書いた
ように「実際にあった話」とされることが多いので、最初から
フィクション前提のホラー小説とはその点が違います。
できるだけリアリティ、現実感があるのがよい怪談とされます。

そういう意味では推理小説的な面もあるんですね。現実の中に
ふっと超自然的な怪異がまぎれこんでくるから怖いわけです。
ですから、自分が怪談を書く場合も、できるだけ細部をきちんと
書いて現実感を出そうと思ってるんですが、うまくいっているか
どうかはわかりません。

さてさて、ということで、推理小説、ホラー小説、怪談の3者に
ついて見てきましたが、何を言いたいかわからないような記事に
なった気がします。自分の場合、本格的なホラー小説を書くのはとても
時間的に無理なんですよね。その点、短い創作怪談のほうが都合が
いいんです。では、今回はこのへんで。

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