このお題ですが、ここまでで、五行説の「火・水・木・金・土」を
すべてやったので、今回で終わりにしたいと思います。
金(きん)と入れたのは、金(かね)、つまりマネーのことではなく、
金属に関する内容だよ、という意味です。まあ、マネーについての
怖い話のほうがたくさんあるんですが、それはまたの機会とします。

さて、金属のオカルトと言えば「オリハルコン」を思い浮かべられる方が
多いと思います。ただ、オリハルコンの概念って幅広いんです。
古代ギリシアの様々な文献にこの名が登場していて、
実際にこの世に存在する金属元素、または合金と考えられます。

アトランティス
derty (1)

ところが一般的には、オリハルコンは、プラトンが著書『クリティアス』に
書いた古代に海に沈んだ幻の島、アトランティスで使われていたものの
ことを指す場合が多いんですね。ゲームなんかで登場するオリハルコンも、
そのイメージを踏襲しているものがほとんどです。

ちなみに、余談ですが、「アトランティス大陸」というのはちょっと違います。
プラトンのイメージは、書かれた内容から判断すると、
それほど大きくない島みたいなんです。この点、同じようなあつかいをされる
「ムー大陸」が大陸規模の面積を持っていたのとは違うんですね。

さて、実際に存在するオリハルコンの候補としては、
・真鍮(黄銅、銅と亜鉛の合金)・青銅(銅と錫の合金)・赤銅(銅と金の合金)
・天然に産出する黄銅鉱(銅と鉄の混合硫化物)や青銅鉱など、
さまざまなものがあって、どれも決め手に欠けるんですが、

古代沈没船から発見されたインゴット
derty (2)

2017年、イタリア・シチリア島の海岸から300m離れた海底で、
水深30mに沈む2600年前の貿易船から、オリハルコンかもしれない
金属のインゴットが発見されたんです。このように、古代の沈没船などを
発掘する分野を水中考古学といい、日本でも、800年以上前の
元寇のときの船が見つかって、調査されています。

上記の船から発見された金属は、分析によると、75~80パーセントの銅、
15~20%の亜鉛、わずかなニッケルと鉛と鉄が含有しているものでした。
やはり銅を中心とした合金だったんですね。自分はこれでほぼ決着がついたと
思うんですが、いくつか異論も出されています。

さて、では日本にオリハルコンのようなスーパー金属はなかったかというと、
これがあるんです。「ヒヒイロカネ」という言葉は聞かれたことが
あると思います。太古、日本で様々な用途で使われていたとされる、
伝説の金属または合金のことで、漢字では「緋緋色金」と書き、
字のとおり色は赤っぽいとされることが多いようです。

ゲームに登場するヒヒイロカネ
derty (3)

ヒヒイロカネが出てくるのは、古史古伝の一つである『竹内文書』です。
この『竹内文書』というのは、じつに興味深いもので、
近代オカルトと深い関わりがあるんですが、今回は書いている余裕が
ありません。いつか項を改めてやりたいと思ってます。

で、ヒヒイロカネは、日本の初代天皇である神武天皇の世に、すでにかなり
希少な金属になっており、祭祀用の鈴や剣、装身具などに用いられたが、
時代とともに資源が枯渇し、雄略天皇の時代に鏡を2枚作ったのを最後に、
精錬・加工されなくなったと出てきます。

雑誌「ムー」に登場したオウム真理教
derty (4)

ヒヒイロカネは「生きた金属」で、黄金より軽くダイヤモンドより固くて、
絶対に錆びないとされます。オウム真理教の教祖、松本智津夫は、雑誌「ムー」で、
ヒヒイロカネを持っていると主張していました。もちろんこれはヨタ話で、
何の信憑性もありません。ところで、「ムー」および学研社は、オウム真理教を
積極的に取り上げたことについて、何の反省や総括もしてませんねえ。

で、生きた金属と言われると、自分は映画の『ターミネーター』シリーズに
登場する、進化した人造人間を思い浮かべてしまいます。
あれは変形自在の液体金属でできていて、低温では凍りつくものの復活し、
最後は溶鉱炉に落ちて、完全に溶けてしまうという話になっていました。

あとはそうですね、ファンタージーゲームでは「ミスリル」というのも
出てきます。しかしこれは、完全な創作上のもので、
J・R・R・トールキンの小説、『指輪物語』などに登場します。
もしかしたら、オリハルコンをヒントにして考え出したのかもしれません。

ミスリルで作られた胴着
derty (1)

外見は銀によく似ていて、銅のように打ちのばせガラスのように輝く。
銀とは違って、黒ずみ曇ることはない・・・こんな描写だったと思います。
ドワーフはミスリルを加工することを誇りにしていて、
さまざまな伝説の武器や鎧が作られました。

さてさて、ということで、こういう架空の金属には古代からの人類のあこがれが
あるんだと思います。金・銀・銅・鉄・その他、金属の性質には、
人類が道具として使用する場合、一長一短があります。例えば、金は錆びませんが、
武器にするには軟らかすぎます。そこで、空想上の完全無欠の金属が
考えられたということなんでしょう。では、今回はこのへんで。

derty (5)