およそ1ヶ月前のことです。
大学の学園祭があって、俺らオカルト研究会でも催し物をしたんです。
何をやったかっていうと、小教室一つ借りてのビデオの上映会です。
しょぼいと思うかもしれませんが、
研究会はメンバーが男ばっか7人しかいないんです。
しかも俺らの大学は、教養学部と専攻学部でキャンパスの場所が違ってて、
両方で同時に同じビデオを上映したんで、二手に分かれなきゃ

なんなかったんですよ。でもね、日頃の活動の成果をいちおう報告する場でも

あるわけですから、ビデオはもちろん借りてきたやつとかじゃなくて、
ナレーションも入れて自分らで編集したんです。
内容は3部に分かれてて、最初は世界の心霊写真の歴史というテーマで、


古今の有名な心霊写真をスライドショーにしたもんです。
ほら、心霊主義時代のイギリスの霊媒が霊を呼び出してるやつから始まって、
昭和の中岡俊哉さんの本からとった有名なやつ、
最近のネットから拾ったやつとかの解説。
第2部は心霊動画ですね。これはテレビのいろんな番組でやったやつが中心です。
最後が、俺らが実際に心霊スポットに行って撮ってきたもんで、
これがホントはメインだったんですが、やっぱりね、
素人が撮ったもんだから間のびしてるし、変な音声とかは入ってましたけど、
はっきりした霊の姿とかが映ってるわけではないんで、
お客さんにはあんまりうけませんでした、
でもね、俺もお客さんといっしょに見てましたが、


1部、2部はそこそこ盛り上がったんですよ。
2日間で、俺らの専攻学部キャンパスは、お客さん130人くらい入りました。
教養学部は交通の便の悪いとこにあるんで、40人くらいって言ってましたね。
で、2日目の午後、学祭が終わった後に、
メンバー全員集まって打ち上げをやることになってました。
場所はこっちの学部近くのカラオケボックスです。
で、教養学部のやつら3人が車で来るまでの間、
お客さんに書いてもらったアンケートを集計してたんです。
全体の感想と、心霊写真、動画、心霊スポットの紹介のそれぞれで、
どれが一番怖かったか、なんて内容のやつです。
そしたらちょっと妙なことになりました。


「おい、このアンケート、感想で4人に1人くらい、面白かったが

途中で入ってたグロ動画はちよっといただけないみたいに書いてるんだが、
グロ動画ってどれのことだ?霊体がモロに映ってるのがほとんどだけど、

さすがにグロは入ってなかったと思うけどな」 「こっちもだ。感想もそうだし、

動画の投票でも最後の首がちぎれるやつが怖かったです、って書いてる

やつが何人かいる。変だよな。後で誰かそんなの入れたか?」
「いや、俺は1回目の上映のときずっとついて見てたけど、なかったと思うけどな」
「今、ビデオあるんだから見てみようぜ。第2部の動画のとこだけでいいから」
ということで、プロジェクターは使わないで、パソコン上で再生してみたんです。
ところが、動画は13本入っててそれから心霊スポット編に移るんだけど、
13番目のが終わったところで、画面がフリーズしてしまったんですよ。


けっこう最新の機種でメモリも増量してあるから、今までそんなことは

なかったのに。「おっかしいなー」 「ちょうどここで止まるなんて何か

気味悪いな」 「おっ、ついにモノホンの心霊現象が俺たちにも起きたのか」
こんなことを言い合ってましたが、パソコンは完全に固まっちゃいました。
「これじゃあラチがあかねえな。・・・そうだ、俺らの知り合いで

見に来てたやつ何人かいたよな。あいつらの誰か、連絡つきそうなやつに

電話して、どんなの映ってたか聞いてみないか」
「たしか資源学部の髙橋が来てたよな。番号わかるからちょっと連絡してみる」
高崎はすぐに出たようでしたが、電話したやつは5分くらいも話し込んでました。
電話が終わって、「変な話なんだよ。2部と3部の間にお前らが作った

動画入れてたろ、って言うんだ。いや、心霊スポットのじゃなくて、


場所は向こうのキャンパスの近くの道路、ほら清涼飲料の工場を過ぎたあたり。
あそこで、車の中から外を映してる映像が入ってたって言うんだよ。
で、1分ほど走った後、急に画面が回転して、倉庫の壁に激突したらしき

映像になって、フロントグラスにヒビが入ったって」 「で、その後、

画面がしばらく止まってたが、西宮が突然画面に入ってきたんだと。西宮の頭が

半分つぶれてて、しかも首筋から大量に血を噴き出してたって言うんだ。
すごいリアルで、よく作ったなって感心してた。でも、そんなの作ってねえよな」
「少なくとも俺らは作ってねえよ。やったとしたら向こうの班だろ。
俺らの知らないうちに編集に混ぜたとしか考えられんな」こう俺が言ったとき、

突然教室の照明が消えたんです。スイッチは3つに分かれてて、
全部消えるなんて考えられないんです。


同時に、パソコンから音量一杯で音声が聞こえ出しました。
雑音・・・「何かいる。何だよこれ!」 「おい危ねえ、ハンドル

ちゃんと持て」 「うわわ、さわるな、うわああああ~」絶叫。
画面も動き出してて、ほとんど高崎が言ったとおり。
後部座席から前を撮った映像で、鮮明だったんで携帯で撮ったんじゃないと

思います。ヒビどころかフロントガラスは半分割れ落ちてて、

バッグとかが席の間にはさまってました。
ぬっと運転席から顔が横に出てきて・・・車の持ち主の西宮でした。
人相がわからないくらい血だらけで、頭の形が変でした。
首が切れて、血がビュッビュッ噴き出してました。西宮が真っ赤な顔で

倒れ込んで・・・そこでブツンと切れ、教室の照明がついたんです。

「なんだよ今の!」 「ありえねえよ、こんなの作れるはずない」
みな立ち上がって口々にわめき散らしました。
「向こうのやつらに連絡してみる」一人がそう言って携帯を捜査し始めました。
俺もかけてみたんですが通じない。ずっと呼び出しになってたんです。
「あ、出た」仲間の一人が言いました。すぐに通話の口調が変わったんです。
「こちらは大学の同じサークルのメンバーです。ご苦労さんです。
わかりました。~病院ですね」こんな感じで切り、俺らに向かって、
「警察が出た。やつら事故ったらしい。2人は○○病院に救急車で

運ばれたって。あと1人、車内から救出しようとしてるとこだって」
大変な騒ぎになりました。2人は即死状態でした。残った一人もいまだに

意識が回復していません。車は完全に壊れて廃車、

 

3人の両親がこっちに出てきて2人の遺体は引き取られました。
郷里で葬式をやって、俺らももちろん行きましたよ。
車の中にビデオカメラや上映用のパソコンが

あったかどうかはわかりません。
何もかもメチャクチャで、それどころじゃなかったんです。
あと、こっちのパソコンですが、完全に壊れちゃったんですよ。まったく

動かなくなって、修理もききませんでした。初期化しても直るかどうかって。
学祭の上映作品は、コピーしたものが何本かあったんですが、
それには事故の映像は入ってなかったんです。俺らが編集した

とおりのもんでした。わけわかんないでしょう。

残ったメンバーはみんな頭おかしくなりそうなんですよ。