俺が小学校の中学年の頃。学級にガネってあだ名のやつがいた。
家が屑金(クズガネ)屋をやってるんでそんな名前になったんだと思う。
ひどく無口で不潔なんで友だちもいなかった。
あるとき学校の帰りに近道をして堰の土手を歩いていると、
その日学校を休んでたガネが、下の水辺で何かをやってた。
ガネは通りかかった俺に気づいて、「おい!」

といって大きなものを投げつけてきた。石だと思ってとっさによけたが、
足下に落ちたそれは石ではなく、その堰にすむ亀だった。
しかも手や首がもがれていたようで、甲羅の穴から土手の草むらに

泥と血がこぼれた。しばらくそれに目が釘付けになったが、
ふとガネのほうを見ると、口元をくちゃくちゃと動かしながら笑っていた。