これ最近あったことです。みなさん6月24日は何の日かご存知ですか?
ああ、さすがですね。UFOの日です。いちおう説明すると、1947年のこの日、
まあアメリカの話なんで時差はあるんですけど、実業家ケネス・アーノルドが、
自家用飛行機で移動中にワシントン州レーニヤ山上空で、
機の横に強い光を目撃します。一直線に並んだ9機の飛行物体が、
ものすごい速度で飛び去っていったんです。自分の機より何倍も速かったので、
ジェット機かと思ったものの、相手は平べったい円盤状で、
主翼も尾翼もなくジェットエンジンの音も聞こえなかったんです。
アーノルドはこの物体を「空飛ぶ円盤(Flying Saucer) 」と名づけました。
ソーサーというのはカップの受け皿のことですよね。
アーノルドが新聞記者にこの話をしたため、マスコミはこの事件を大きく報道し、

直後の6月30日には、アメリカFBIの長官が調査プロジェクトを立ち上げます。
この当時、宇宙人の乗り物説はメインではありませんでした。
ナチスドイツが大戦中に円盤型飛行機を開発していたという話もあり、
他の国の新型実験機じゃないかという懸念が大きかったんです。
・・・ああ、すみません。大筋と関係のない話をしてしまいましたが、
僕は大学でUFO研究サークルを主催してるんです。うーん、これね、
聞いた人はみんな笑うんです。なに浮世離れした活動をしてるんだって。
でもね、僕はUFOってあると思ってます。日本じゃ信じる人は少ないけど、
アメリカは全然違うんですよ。ある調査では、全国民の6割が信じてるってあるし、
目撃者もすごく多いんです。・・・ああ、すみませんね。
それで昨日、UFOの日を記念して、観測会を実施したんです。

もちろん昼からです。あのね、夜って誤認が多いんです。
雲や霧がスクリーンになって、車のライトや街の明かりを反射しますし、
星も見えます。金星の誤認ってとても多いんです。
あとは飛行機のライトや人工衛星。でね、UFO研究サークルのメンバー、
僕を入れて4人だけなんですが、もちろん全員男です。いや、モテないですよ。
まるで女っ気のないやつばっかりで。午後の2時ころから、
大学の裏手にある山に集合しました。そこはちょっとした散歩コースになってて、
100mほどの頂上の草を刈ってあるんです。そこにカメラ、ビデオ、
望遠鏡を持ち込みました。一人が東西南北の一面を担当して、
観察すること2時間。はい、4例目撃しました。画像もあります。
ただねこれ、文字どおりの未確認飛行物体で、今お見せしますけど、

人工物かどうかもわからない黒っぽい点です。
でも、鳥じゃないってのはわかるでしょ。こういうのってけっこう多いんです。
ある程度時間をとれば、誰でも見つけることができます。
ただ、現代人はのんびり空を見てることってまずないから。
この画像は全部パソコンで拡大してみましたよ。うーん、やっぱわからないです。
もしかしたらビニールとか、洋凧の切れたのかもしれません。
昨日は風が強かったんで上空の気流に乗ってたのかもしれないです。
それでね、その場で、望遠鏡を覗いてたやつがこんなことを言い出したんです。
「ほら、あっちの山あるだろ。あの上から2番目の鉄塔の下に
コンクリ製の小屋があって、壁に字が書いてあるみたいだ」暇でしたからね、
もう一度望遠鏡セットさせて、みなでのぞいてみたんです。

そしたら確かに、草に埋もれた壁に黒っぽい字で何か書いてあったんですが、
それがUFOって読める気がしたんです。「UFO・・・だよな」
「行って確認してみないか。あれ、そんなに距離ないぞ。車ならすぐだ」
ちょうどみな長袖長ズボンの虫よけになる格好してたんで、
行ってみることにしました。いったん山を降りて車で15分くらいで
向こうのふもとに着きましたが、登り口がわからなかったんです。
「でもよ、鉄塔があるんだから必ず整備用の道があるはずだ」山自体は、
僕らが登ったのよりちょっと高いくらい。それで近くに「氷」ってのれんが出てる、
昔風の雑貨屋があったんで入って聞いてみました。そしたら、
何度か呼ぶと、かなりの歳に見えるしわくちゃの婆さんが出てきまして、
「ああ、この突きあたりの道を右に行くと車で入れる道があるんじゃないかの。

通るのは工事の人くらいだし、もしかしたら通行止めかもしらんが。
山の名前? そんものはねえな。山というほど高くもないし」
お礼にみなで一本ずつ飲み物を買い、言われたとおり行ってみると、
砂利でしたが確かに車が入れる道があったんです。高圧電線の下になってました。
「ああ、これを目印にすればよかったんだな」15分ほどで上から2ま番目の
鉄塔に通じる横道らしいところに出たんです。
胸くらいの雑草をかきわけて進んでいくと、鉄塔の真下に出ました。
そこに、そうですね。車一台入るかどうかくらいのコンクリ製の小屋が

あったんです。「こりゃ、たぶん工具とか部品を入れてあるんじゃないか」
「字があったのは向こう側だろ」斜面を落ちないように回りこんでみると、
そっちの壁に濃い緑の字で「U.F.O.ランドラ」ってありました。

「ランドラ? 何のことだ? 子どものイタズラみたいな字だな」
近寄っていったメンバーの一人が大声を上げました。「この字、点描になってる!」
どういうことかというと、一字が人の頭の倍くらいでしたが、
それがちょうどテントウ虫ほどの点の集まりでできていたんです。
「うわ、気味悪いな」 「これ剥がれてくるぜ」一人が木の枝でこすると、
確かにポロポロ下に落ちてきました。「うーむ、イタズラにしては凝ってる」
「これ、柔らかいな。ゴムみたいだ」 「素手で触って大丈夫か」
「ああああっ!」また別の一人が叫び声を上げ、「どうした?」
「お前ら腕時計してるか?」 「してねえよ。どしたんだよ?」
「これ見ろ?」そいつの時計はアナログの安いやつだったんですが、針が全部
グルングルン回ってたんです。ものすごい速さで。

「ありえねえ」 「磁力か?」 「それにしたって・・・」
そいつが鉄塔から離れて車まで戻ると、針の回転は止まりましたが、
時計自体が動かなくなってしまいました。
「スゲエ、これUFOの目撃情報にある展開だぞ。時計が壊れるってのは」
「もしかして基地なのかもしれんな」 「小屋の中、見てみようぜ」
ですが、小屋は正面に超頑丈な鉄扉があるのみで窓はなし。
鉄扉も鍵がかかっててビクともしませんでした。「だよな」
「でもよ、こんなのプレハブのほうが安上がりじゃないか」こんなことを言い合い、
一人が平たい山笹の葉を下のわずかな隙間から差し込んでみたんです。
「おあ、ちぎれた」しゃがんで差し込んでたので後ろにひっくり返り、
手に残ったちぎれた葉は、草の色とは違うベトベトした緑の液体がついてました。

「うえー、気味悪い」 「薬みたいな臭いがするな」それで小屋はあきらめ、
近くの草やヤブの斜面をみなで調べました。ほら、UFOに関係ある場所って、
着陸した跡が丸く残ってたりするでしょ。けど、不自然なものはありませんでした。
「変は変だけどやっぱりイタズラかなあ」 「もう戻ろう」
車をUターンさせるのが大変でしたが、そろそろと降りていくと、
一本道を婆さんが歩いて登ってきたんです。ええ、さっきの雑貨屋のです。
助手席に乗ってた僕が窓を開け、「どうも」ってあいさつしたんですが、
婆さんはこっちに目を向けることなく通り過ぎていきました。
「愛想わるいな」 「よくこんな道、あの歳で登れるよな」
「なんだよ、下にはいてるのは銀ラメのズボンか」
「もしかしてさっきの小屋の様子を見に行ったんじゃねw」

「まさか」 「いやいや、あの婆さん、実は姿を変えた宇宙人だったとか」
「そういうパターンだと、さっき俺らが飲んだジュースもあぶないw」
「そういえば変な味がしたなw」まあ、このあたりは冗談だったんですけど。
この後は特に何事もなく、夜にも少しUFOの観察をやり、それぞれ家に戻った

んですよ。僕は歩きだったので、帰り道にもあの山のほうを見たんですが、
ただ真っ暗なだけで上空にも何も見えませんでした。ええ、これだけなら
なんてことない話ですが、この腕見てもらえますか。今朝になったら
内側に浮きだしてたんです。緑のブツブツでFって読めるでしょう。こんな皮膚病って
ありますか、医者に行ったら最初、「イレズミですか?」って言われました。いや、

医者も見たことのない症状だって。他のやつらも同じです。UとOのやつ、あと変な

記号のやつ。僕は来週入院することになりました。今のところ痛くはないですが。