さて、続きです。前回は、アメリカの霊媒師「the medium」の話をしましたが、
彼らが使う能力が「reading」。日本語では、霊視と訳されることが多いですね。
で、今回お話するのは、「本物の霊視」ではない場合のことです。
リーディングには大きく2つの種類があります。
コールドリーディングホットリーディングです。

まず、コールドリーディング(cold reading)のほうから説明しましょう。
ここで、コールドとは「事前の準備なしに」という意味です。
初対面の相手に対して、さまざまな手法を使って相手の素性や心情を読み取り、
自分の言うことを信じさせるための技術です。

これはもちろん、霊媒師だけが使うわけではなく、マジシャンや詐欺師、
宗教家、あるいはセールスマンやカウンセラーが用いる場合もあります。
この技術を紹介していくだけで1冊の本ができてしまいますので、
ほんの数例だけ取りあげてみましよう。



まず、相手が自分から話す形で情報を引き出すことが基本ですが、
そのとき相手に、「ああ、私は調べられている」と思わせてはいけません。
例えば、「あなたの身近な人で、ケガをなさった方がいますでしょう?」
よくあるのは、こういう聞き方です。

ここで相手が「そうですね、2年前息子がサッカーの試合で足を骨折しました」
これだけで、相手には息子がいるということがわかります。
「ははあ、それは大変でしたね。ご主人もさぞ心配されたでしょう」
このような形で、さりげない質問を積み重ねていって、
家庭の情報を依頼者から言わせる形で聞き出してしまう。

 



「あなたのお父さんは亡くなって・・いませんよね」こういう聞き方も

あります。これは2つの意味にとれますよね。

「亡くなってはいない」と「亡くなってしまって、もういない」です。
ですから、相手が「父は生きています」と答えたら、
「やっぱりそうでしたか」とでも言っておけばいいわけです。

ま、こんなのがコールドリーディングです。ここでご紹介したのは
ごく初歩のものですが、マジシャンなんかはもっとずっと巧妙な技術を

持っています。次に、ホットリーディング(hot reading)ですが、
こちらは相手について、できるだけの事前調査をしてから面談に臨むものです。



前回書きましたが、アメリカの霊媒師なんかは、
最初に霊視を予約したときに住所氏名を聞き、すぐに探偵社に連絡して
身元調査をしてもらう。で、いざ面談が始まって、
相手の情報をズバズバあてていくんですね。これをやられると、
霊媒師に依頼するようなタイプの人は、一発で信用してしまいます。

さすがに日本では、そこまでやってる人は多くはないんですが、
前にちょっと取りあげた昭和時代の有名な霊能者、A氏なんかは、
かなりこの方面に力を入れていたようです。A氏は、テレビ出演多数、
著書もほとんどがベストセラー状態でしたが、個人面談での霊視も

行っており、100万円クラスの相談料が必要だったようです。

 



A氏は個人事務所を持っており、家族と、信頼できるマネージャーで
構成されていました。個人面談は、事務所兼自宅で行われていたようです。
この事務所のスタッフが、テレビで心霊スポットを訪問する場合など、
その場所についての詳細な事前調査を行うわけです。

また、依頼者が面談のために訪ねていくと、待合室に通され、
そこにA氏の弟子というか、マネージャーの人がいて、気さくに、
「どちらから来ましたか」とか「お悩みが深そうですね」とか話しかけてくる。
打ち解けて話をしているうちに面談の時間がきます。
そうしてA氏のいる部屋に通されることになります。



で、あいさつが終わったころにマネージャーがお茶を持ってきますが、
その茶碗を置く位置によって、九州出身とか東北出身とかの情報が伝わるように
なっています。また、A氏の茶碗には、星などのESPカードのようなマークが

ついていて、そのどれかをA氏の正面に向けることで、恋の悩み、金銭問題、
病気のこととか、相談内容がわかるようになっていたと言われますね。

そうしておいて、「関西から来られましたね。○○県でしょうか。
今回来られたのは、人間関係でお悩みだからでしょう」こんな感じで

言われれば、術中にはまってしまうのも無理のないことですよね。
まあ、この手のことは、べつにA氏に限ってのものではなく、
霊視などを行う人物は、多かれ少なかれやっているものなんです。

 



さて、ホットリーディングとコールドリーディングについて、
ほんのさわりだけご紹介しました。あと、霊視などを受けにくる人は、
「こういうふうに言ってほしい」という答えを

最初から持っている場合が多いんです。で、霊能者のほうでは、

できるだけそれに沿うような形で霊視の結果を提示します。

さてさて、急いで書いたのでわかりにくい部分もあったかもしれません。
ここで「お前も占い師なんだから、リーディングを使ったりしてるんだろう」
と言われそうですが、それについては「職業上の秘密でお答えできません」(笑)
ということで、今回はこのへんで。