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今回はこういうお題でいきます。仏教のお話ですね。

では、本題に入る前に、これまでのおさらいを少ししてみましょう。

仏教はお釈迦様が2600年ほど前に始めましたが、最初のうちは、
仏はお釈迦様だけでした。この時代を原始仏教と言います。

ところがだんだんに、お釈迦様の他にも悟りを開いて仏になった
人物がいるのではないかと考えられるようになっていきます。
大日如来、阿弥陀如来、薬師如来などです。これらの仏は、

それぞれ異なった方法で仏教を修行し、悟りに達して仏となりました。

 

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つまり、仏となる道は一つではなく、さまざまにあるというわけです。
これらの仏は、それを信じて修行する大衆を救ってくれるとされます。
こうして仏教は大乗の時代に入ります。ちなみに、仏のことは如来とも
言いますね。その仏になるために修行中の、一つ下の段階のものは
菩薩と言います。観音菩薩、地蔵菩薩、弥勒菩薩などが有名です。

さて、印相(いんそう)ですが、サンスクリットのムドラーの漢訳で、
本来は封印という意味で使われる言葉です。
それが仏教に取り入れられて、その仏様の心の内を表すものとされました。
具体的には、両手のジェスチャーで示されます。

ですから、印相の知識を持っていれば、仏像を見たときに、
それが何という仏様かわかるわけですね。ただ、印相はたくさんあるので、
ここですべてを紹介するのは無理があります。代表的なものだけを

見ていくことにしたいと思います。

 

定印

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最もよく知られているのは「施無畏与願印(せむい よがんいん)」かな。

これは両手を使います。普通は右手を施無畏(せむい)印にし、
左手を与願(よがん)印にします。仏像では、釈迦如来像がこのポーズを

とっていることが多いですね。施無畏印は、手を上げて手の平を前に向け、
「怖がらなくてもよい」と相手を励ます意味があります。

また、与願印は、手のひらを上にして前に差し出しているポーズで、
「人々の願いを受け入れよう」とする意味があります。
この2つの印はセットになっていることが多いです。
奈良の大仏(東大寺盧舎那仏)もこのポーズをしています。

次によく見られるのが「定印(じょういん)」でしょうか。
これは仏像だと座った形のものに多いんですが、お釈迦様が座禅を組んで
瞑想し、悟りを開いたときのポーズなので当然といえば当然です。
両手の手のひらを上にして腹前で上下に重ね合わせた形です。

この定印の中でも、阿弥陀如来が組んだ手の形を、特別に
「阿弥陀定印」と言います。両手のひらを上に向けて腹前で重ね、
両人差し指を立てて合わせ、その上に親指を重ねる・・・と

言葉で説明してもわかりにくいですが、下図を見てもらえば一目ですね。


阿弥陀定印

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次は、「智拳印 ちけんいん」です。これは密教の中心仏である

大日如来だけが結ぶことのできる印で、胸の前で左の人差し指を立て、
中指、薬指、小指は親指を握る。右手は左手人指し指を握り、
右親指の先と左人指し指の先を合わせます。

大宇宙の真理を表していると言われます。

 

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あとはそうですね。「説法印(せっぽういん)」もよく知られています。
説法印は転法輪印とも言い、言葉で説明するのは難しいんですが、
両手の人差し指と親指で丸をつくるのが特徴です。このポーズは、

お釈迦さまがお弟子さんたちに説法するときの姿を表しています。

 

説法印

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さて、ここで少し話を変えて、清少納言の『枕草子』第九十七段に
「九品蓮台(くほんれんだい)のあひだには、下品(げぼん)といふとも」
と出てきますが、これはどういうことかというと、極楽には
9つの段階があり、自分はその一番下の下品でもいいから
行きたいと言ってるんですね。

ちなみに、地獄のほうは8つに分かれているとも言われます。
この極楽の9つの段階を九品往生(くほんおうじょう)と言います。

人の往生には上品・中品・下品があり、さらにそれぞれの下位に

上生・中生・下生とがあり、合計9ランクの往生があるという考え方です。

 

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で、この九品往生は、印相と密接に結びついてるんですね。
これも説明が難しいものなので、上図を見ていただければいいかと思います。
東京都世田谷区の九品仏浄真寺(通称九品仏)には9体の

阿弥陀如来像が安置され、それぞれ9つの印相を示しています。

 

密教の九字

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さてさて、ここまでの話を怪談に取り入れることはできるでしょうか。
例えば幽霊に出会ったとき、施無畏与願印を見せるというのは
どうでしょう。お経を唱えるより簡単かもしれませんが、
はたして幽霊が理解してくれるかどうか・・・

あと、印には密教の九字切りなどもありますが、これはまた
別の意味のものです。日本の密教諸派では、伝承や儀礼に、
それぞれの流儀があり、用いる印相も多種多様ですね。
では、今回はこのへんで。