今回はこういうお題でいきます。世界史のお話ですね。
さて、どっからいきましょうか。まずは古代都市 楼蘭のことからかな。
楼蘭は、中央アジア、タリム盆地のタクラマカン砂漠北東部
（現新疆ウイグル自治区チャルクリク）に、かつて存在した都市国家です。
存在した時期は紀元前のかなり古くからで、消え去ったのは
４世紀ころのこととされます。それまで栄えていた古代都市が、
どうして消滅したのか。それは、楼蘭が琵琶湖の２０倍ともされる湖、
ロプノールのほとりにあり、その湖がなくなってしまったためと
されます。でも、そんな巨大な湖がなくなってしまうものでしょうか。
では、次にロプノールの話。中央アジア、タリム盆地のタクラマカン
砂漠北東部に、かつて存在した塩湖で、タリム盆地のほぼ全域が
極めて広大な湖となったものの、その後、気候が温暖化するに
つれて次第に水が失われ、大部分が砂漠になったと考えられています。
つまり、温暖化により水が砂漠に飲み込まれていったためで、
ロプノールはその最後の名残だったわけです。
干上がった時期は４世紀。で、古代都市楼蘭は砂にうもれ、それが
どこにあったかまったくわからない、伝説上の存在になってしまいました。
ですが、もしロプノールを見つけることができれば、それにともなって
湖畔にあった楼蘭も見つけることができます。
そのため、１９世紀後半、ロシアやヨーロッパ人の探検家が砂漠に入り、
ロプノールおよび楼蘭の遺構を発見しようとしました。
で、最初の発見者の栄誉を得たのが、スウェーデンの地理学者、
中央アジア探検家であったスヴェン・ヘディンです。
彼はまず初めに楼蘭の遺構を見つけ、その北側のクルク・ダリヤ
（乾いた川）と呼ばれる東西方向に伸びる干上がった川床が
ロプノールの元ではないかと考えました。
スヴェン・ヘディン
かつてタリム川はこの川床を東に向かって流れ、楼蘭の東から南にかけて
広がっている低地に注いでおり、それこそがロプノールであった。
この仮説はすぐに証明されます。抽水植物の残滓や巻き貝などが
発見され、地質学的にもそこが湖であったことがわかったんです。
ここまでは素晴らしい成果ですが、誤解も生じています。
ヘディンは、タリム川は周期的に流れを変え、それによって湖ロプノールの
位置も南北に移動を繰り返すだろうと推定しました。
そしてロプノールを「さまよえる湖」と呼びます。
ヘディンは、その周期について、ひじょうな長期間とだけ述べており、
具体的な期間には言及しませんでしたが、どういうわけか１６００年周期
という言葉が一人歩きを始めてしまったんですね。これ、なんでなのか。
自分もよくはわからないんですが、楼蘭が歴史から消えたのが４世紀、
それから１６００年後の２０世紀にまた湖が姿を現すとなれば、
ロマンがあるからかもしれません。
さて、ここで話を変えて、「世界で最も美しい」とも言われるミイラが
１９８０年、タクラマカン砂漠の東にある楼蘭鉄板河遺跡で発掘され
ています。炭素14年代測定の結果、紀元前１９世紀（約３８００年前）
に埋葬されたもので、死亡時の年齢は約４０歳、身長１５５ｃｍと
推測されています。それが最初の画像です。
復元図がこれ。復元にあたった中国の専門家は「今回復元した
容貌は生前のものに９０パーセント以上似ているだろう」と語り、
自信を述べています。このミイラは、見事な小舟の柩に収められており、
作家の椎名誠氏も参加した１９８８年の「日中共同楼蘭探検隊」でも
撮影されています。
どうして砂漠の真ん中で小舟の柩なのかははっきりしません。
その頃はまだ実際に存在していたロプヌールに流すつもりだったのか、
それとも舟はあの世へ渡るための宗教的な乗り物だったのか、
もはや よくわからないんですね。
さて、ここからは嫌な話になります。ロプノール周辺地域は１９６４年から
中国の核実験場として使われており。このため、軍事上の立ち入り禁止区域と
なっていましたが、ロプノールの河床自体が実験場とされたことは
ないようです。高田純札幌医科大学教授による２００２年以降の調査で、
中国がウイグル地区で実施した核実験により、同自治区のウイグル人を中心に
１万人が急死し、急性放射線障害など健康被害者は１２９万人にのぼり、
そのうち、死産や奇形などの胎児への影響が３万５０００人以上、
白血病が３７００人以上、甲状腺がんは１万３０００人以上に達すると
発表されたんです。
さてさて、同地区は１９８年代に立ち入り禁止が解除され、
観光地化されましたが、被害は、その後シルクロード周辺を訪れた
日本人観光客２７万人にも及んでいる恐れがあるとされました。怖いですね。
ちなみに、１９７８年から放映された日本のTVドラマ『西遊記』で、
三蔵法師を演じた夏目雅子さんが白血病で死去したのは、
シルクロードロケによる被爆の影響と言われたりもしたんですが、
じつは夏目さんはスケジュールの都合でシルクロードには行ってないんです。
ですから、これはデマなんですね。では、今回はこのへんで。
