今回はこういうお題でいきます。まあ、地味な話なんですが、
神智学が現代のオカルトに与えている影響って、きわめて大きいんです。
特にスピリチュアルとニュー・エイジ思想ですが、
その他にもいろいろあります。ですから、オカルト研究家としては、
これについて触れないわけにはいかないんですね。

あと、神智学という言葉はかなり古い時代からありますが、
ここで述べるのは、ブラヴァツキー夫人が創始したもののことです。
ブラヴァツキー夫人の著作は大著で、自分はなんとか読んだものの、
他の神智学関係の文献は膨大で、すべてにあたるのは無理なので、
間違いがあるかもしれません。それをまずお断りしておきます。

ブラヴァツキー夫人
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さて、通称ブラヴァツキー夫人の本名は、ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー。
現ウクライナの生まれとされますが、前半生のことはよくわかっていません。
現在伝えられている内容は、はっきり言って荒唐無稽で、
とても信じようがないというのが実情です。世界各国を放浪していたのは
たしかと考えられ、そのときにさまざまな秘術を学んだとされます。

ブラヴァツキー夫人の名前が世に出たのは、アメリカにおいてです。
1874年、アメリカは心霊主義の真っ最中で、各地で降霊会が行われていて、
そこで霊媒師としてデビューしたんですね。ブラヴァツキー夫人は、
1831年生まれとされますので、このとき43歳ということになります。

アメリカの降霊会
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ただ、ブラヴァツキー夫人は霊媒としての生活には満足してはいませんでした。
むしろ、その当時の心霊主義をくだらない、つまらないものと見ていた
ふしがあります。まあ、ぶっちゃけた話をすれば、多くの降霊会は
手品のショーのようなものでしたので、その考えは理解できます。

さて、ブラヴァツキー夫人の目は、心霊主義よりも、むしろ四大霊などの
古代エジプトの叡智に向いていました。そして、それらの研究のため、
1875年、「神智学協会 The Theosophical Society」を正式に創設。
1877年には、主著である『ヴェールを剥がれたイシス』を完成させます。

これは1000ページをこす膨大な内容で、読んだ方はわかると思いますが、
きわめて高い知性と教養が感じられ、夫人がただのインチキ霊媒ではないことは
すぐにわかります。ここで、ブラヴァツキー夫人は3つのものを強く批判します。
キリスト教近代科学、それと心霊主義です。自分が世に出た
きっかけである心霊主義に対しても遠慮がないんですね。

まずキリスト教については、形骸化し硬直していると一蹴します。
教会は権威や権力ばかりを追い求め、もはや意味のないものになり下がった。
近代科学に対しては、物質のみを研究の対象とし、形のないもの
(霊)への探求がないがしろにされている、というわけです。
また、心霊主義の唱える霊魂と霊界の概念は、あまりに単純すぎる。

神智学協会のシンボルとモットー
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さて、では、神智学とは何か、ここから簡単な説明をしていきます。
まず、神智学の「神」は、キリスト教の神のような人格神ではありません。
万物を司る根源的な原理であり、絶対的本質と説明されることが多いですね。
普遍的な宇宙の法則と言っていいかもしれません。

それから「智」の部分ですが、ここに神智学の最大の特徴があります。
神智学協会は「真理にまさる宗教はない」をスローガンに掲げており、
神智学運動とは、太古から伝承されてきた宇宙と人間の秘密を
明らかにするのが目的であり、宗教ではない文化運動であるとします。

このあたりは、キリスト教が、すべての中心を神に置いて動きが取れなくなって
しまったのを反面教師にしているのかもしれません。自分は、神智学運動には
大きな「智」の3本の柱があると見ています。一つはプラトン主義
2つ目は進化論、3つ目がインド宗教に見られる輪廻思想です。

霊性進化論
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プラトン主義の解釈は難しいですが、ここでは、知覚の対象でない、
物質ではないものでも実在するという考え方です。進化論については
当ブログで何度も書いていますが、この発表によってキリスト教の
権威が崩れ、心霊主義が登場してきたんですね。

神智学協会では、ダーウインの進化論を認めていました。
ここでブラヴァツキー夫人がすごかったのが、魂には別の形の進化が
あると主張したことです。かの有名な「霊性進化論」です。
ですが、人間の一生は長くてもせいぜい80年。
霊的に魂が進化すると言っても限界がありますよね。

そこで必然的に出てくるのが、輪廻の概念です。
輪廻はキリスト教では否定されていましたが、ブラヴァツキー夫人は、
アメリカからインドへ活動の中心を移した頃から、
インド宗教の輪廻思想への傾倒を深めていきます。

人間は宇宙の法則にしたがって何度も転生、輪廻する。
その過程で魂が磨かれ、霊的に進化していくという理解を得ました。
輪廻がくり返されるうちに魂が高次の段階へと進み、
やがては宇宙の本質である「神」に近い存在になれるとしたんです。

インドのブラヴァツキー夫人
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さてさて、この後、ブラヴァツキー夫人は、その神秘性がトリックである
とする騒動にまき込まれ、インド国内では詐欺師であるという認識が広まり、
インドを脱出してロンドンに住み、やはり主著の一つである
『シークレット・ドクトリン』を完成させて、1891年、60歳で亡くなります。

まあ、ブラヴァツキー夫人がちょくちょくインチキ手品をやっていたのは
確かなんですが、それは心霊主義の霊媒時代に身につけたものでしょう。
ともかく、彼女が創設した神智学は、シュタイナー教育や現代占星術、
アメリカのニューエイジ思想に多大な影響を与え、
現在でもオカルトの本流にあるんですね。では、今回はこのへんで。

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