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今回はこういうお題でいきます。これはけっこういろんなことが
書けそうですが、話題があちこちに飛んで まとまりがなくなるかも
しれません。さて、まずは生物学的なお話から。カラスはもちろん
鳥類で、世界には数十種類がいるようです。

ですが、日本に定着しているのは2種類だけ。ハシブトガラス
ハシボソガラスです。名前のとおりクチバシの太さで見分けますが、
おそらくカラスに興味のない一般の人には区別できないと思います。
この他に、渡り鳥として北海道にワタリガラス、九州に
ミヤマガラスとコクマルガラスが飛来してきます。

さて、みなさんのカラスに対するイメージはどのようなものでしょうか。
まず、「不吉」という言葉が出てくるかもしれません。カラスには死の
イメージがついて回りますよね。これはその黒い色からきている
ところが大きいでしょう。喪服、鯨幕、霊柩車など、
死や葬儀が連想されてしまうんです。

ポーの『大鴉』挿絵
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このイメージは欧米にもあります。英語でカラスを表す単語には
crow(クロウ)と raven(レイヴェン)ですが、特定の種類を指す
ものではなく、ravenのほうがやや大型というイメージのようです。
エドガー・アラン・ポーの代表的な詩、『大鴉』では、
ravenが「Nevermore  これでおしまい」と主人公に告げます。

それから、カラスが地面に降りてきて動物の死骸をあさったり
していることも、不吉なイメージを増幅させるんでしょう。
昔はカラスも自然の中で生活していましたが、今は都会のほうが
より食料が容易に手に入るため、ゴミを散らかしているのを
見かけることが多いですね。

『イソップ物語』カラスと壺
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あとは、「カラスが夜に鳴くと翌日には死人の知らせが来る」なんて
話もあります。カラスは昼行性で、夜はねぐらに帰っていて、
その鳴き声を耳にすることが珍しいため、こういう話が出てきたのかも
しれません。共同体で死者が出るのも めったにあることではないですし。

次に、「カラスは頭がいい」という話があります。これは実際にそう
みたいで、群れ全体に通じる言語を持っているとみられています。
『ハリーポッター』シリーズのホグワーツの寮の一つに、
「レイブンクロー(カラスの爪)」がありますが、「機知と叡智に優れた
者が集う寮」と作者のローリング女史は説明しています。

『ハリーポッター』レイブンクローの紋章
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それと、『イソップ物語』だったと思いますが、壺の中に餌が
浮いていてクチバシが届かないため、石を何個も落として水面を高め、
餌を取るカラスの話が出てきます。現代でも、自分で砕くことが出来ない
固い食べ物を道路に落として、車などに轢かせてから食べるという
話があり、動画も出ています。

カラスは比較的大型の鳥類ですが、脳の容量はそれほどでもありません。
ただ、群れで生活しているため、他のカラスの行動をまねることができます。
イルカなんかも群れで生活していますが、そういう動物は人間から見れば
頭がいいように感じられるんですよね。ちなみに、カラスは、
最低でも41の意味のある言葉を持っているとする研究結果があります。

高杉晋作 この頃は結核のためにかなり痩せています
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次に、「カラスはうるさい」というイメージ。「三千世界の鴉を殺し、 
ぬしと朝寝がしてみたい」という都々逸?で、作者は幕末の志士、
高杉晋作とされます。「ぬし」という言葉が出てくるので、これは女性、
おそらく遊女が主人公でしょう。カラスが鳴くのは朝になったためで、
そうすると客はもう帰らなくてはなりません。

先ほどから書いているように、カラスは昼行性で群れで生活して
いるので、鳴き声が一声で終わることは少なく、次々に伝わることも
多いです。あと、昔は闇金のことを「烏金 からすがね」とも言い、
日利で、夜が明けてカラスがカアと鳴くと返済しなくてはなりません。
江戸時代の行商人などが仕入れ金として利用していました。

さて、以前「もちのオカルト」でも書きましたが、中国では太陽のことを
「金鳥 きんう」と言いました。しかもこのカラスは三本足です。中国だけ
でなく、東アジア全域に見られる神話伝承で、10羽の太陽カラスが
いましたが、一斉に出てくると地上が灼熱地獄になってしまいます。
そこで、伝説の皇帝 尭が、弓の名人に命じて9つを射落とさせます。

サッカー日本代表のシンボルマーク
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この話が日本に伝わり、神武天皇の東征の際、熊野国から大和国への
道案内をした三本足の八咫烏(やたがらす)の伝承になりました。
八咫は大きいという意味でしょう。サッカー日本代表の
シンボルマークがこの八咫烏なのは有名です。

また、上記の神武伝説がもとになり、熊野三山では、カラスが神の使い
として尊ばれています。熊野には、八咫烏を祀る熊野速玉大社があり、
平安時代には、蹴鞠の名人であった藤原成道が技術の向上のため、
会があるたびに熊野詣をしています。ですから、カラスとサッカーは
まったく関係がないわけではないんですね。

熊野の「牛王神符」 起請文(誓約書)として使われた
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京都の八坂神社の祭神である牛頭天王は、仏教的には祇園精舎の
守護神で、日本神話の素戔嗚命にあたります。上記した
熊野三山でも牛頭天王は祀られており、その姿を烏文字で記します。
上図の「熊野牛王神符」は起請文として使用され、立てた誓いを破ると、
神の使いのカラスが一羽死に、本人も地獄に堕ちるとされました。

さてさて、おそらく高杉晋作の都々逸も、「三千世界」という仏教用語が
出てくるあたり、このへんのことを踏まえてつくられたものでしょう。
ということで、カラスのオカルトを見てきましたが、カラスは昔から人間の
身近にいる動物であり、そのためにいろんな話が出てきているのだと
思われます。では、今回はこのへんで。
 

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