今回は怪談論のカテゴリに入る内容です。当ブログは「怪談」「怖い話」を
書くことをメインにしてるんですが、日本だと「怪談」と「怖い話」は、
ほとんど同じ意味で使われてますよね。「怪談≒怖い話」 
という図式があると言ってもいいと思うんですが、海外だとちょっと違うんです。

「怪談」は、英語にすると「ghost story」と訳される場合が多いんですが、
「scary story」あるいは「ghost experiences」
「paranormal experiences (超常体験)」とされることもあります。
ただこれ、自分は日本の「怪談」にぴったりあてはまる
英語の言葉はないんじゃないかと考えてます。

下のリンクは、自分がよく見ている海外の怪談投稿サイトで、
Your Ghost Stories と言います。怪談は、その中の「Real Ghost Stories」
という小テーマの中に収められているんですが、
なんと投稿された話の数が、現在18143話にもなります。
世界最大の怪談投稿サイトなんじゃないかな。

「Your Ghost Stories」

また、投稿者が住んでいる国も約150ヶ国。アメリカのサイトなので、
アメリカ国内のものが圧倒的に多いんですが、
中には、ココス諸島とかオランダ領アンティル諸島とか、
どこにあるのかよくわからない場所からのものもあります。
あと、イスラム圏からの投稿もありますね。

 



日本からの投稿も33話 載ってるんですが、
読んでみると、日本人が投稿したものは少なく、
旅行や出張、移住で日本に来ている外国人が書いたのが多いです。
まあそうですよね。日本人が海外サイトに英語で怪談話を書くのは
やはりハードルが高いでしょう。

で、自分がヒマなとき、ちらほらこのサイトの話を読んでると、
「日本の怪談とはずいぶん違うなあ」といつも思います。
主な相違点は2つあるのかな。具体的にどこが違うかというと、
海外の怪談ってこんな感じなんです。

「2014年7月28日、私は仕事の関係で、ヴァージニア州リッチモンドにある
ビジネスホテルに宿泊していた。そろそろ寝ようかと時計を見ると11:28。
そのとき私は、部屋にある間接照明のほうに何か違和感を感じた。
よく見ると、床から60cmほど上の空中に、人の頭が浮かんでいたのだ・・・」

おわかりでしょうか。日本の怪談は、いつどこで起きたことかが明らかでない
場合が多いんですが、このサイトの話は、体験した場所と日時がはっきり
書かれたものがほとんどです。また、どんなものを見たかについても
くわしく描写されています。つまり、客観的な「体験の報告」なんです。



まずそこが一番違います。2つ目は、投稿者には、基本的に、
読む人を怖がらせようとする意図はないことです。
そもそも、投稿者本人が、まったく怖がってない場合も多々あります。
ことさら文章に凝ったりもしてはいません。
自分が体験したことを、たんたんと記述してく形のものが多いんです。
じゃあ、英語圏には「怖い話」はないのか。

これはもちろんあります。ただ、そういうのは怪談とは別なんですね。
ホラー(horror story)あるいは都市伝説ということになるんでしょう。
最初から人を怖がらせる意図で作られ、読む側が、
エンターテイメントとしての恐怖を楽しむための話。

ですから、日本では「怪談≒怖い話」という図式が成り立ちますが、
海外では「怪談≠怖い話」になるんです。
じゃあ、どうしてこんなことが起きてるのかというと、海外では、
幽霊が必ずしも怖いものとは思われていないこともありますが、
最大の要因は、日本の怪談の歴史的な立ち位置にあるんだと思います。



現代の日本人はあまり意識していないでしょうが、
江戸時代には怪談が隆盛し、歌舞伎、浄瑠璃、落語など、当時の大衆文化で
「怖がるためのエンタメ怪談」が盛んに作られました。
その歴史が、しらずしらず、連綿と現在にまで受け継がれてきている。

日本での怪談の評価は「怖いか、怖くないか」によって決まることが

多いですよね。「うわー怖い」というのが最高のほめ言葉になるのは、
上記のような歴史的経緯からでしょう。これが海外の場合、
よい評価は、「詳細な報告で興味深かった」みたいな感じになります。

 



さらに日本の場合、怪談には「創作臭い」という、よくない評価も

ありますよね。「こんなことあるわけないだろ」などと言われたりもします。
日本の怪談では、実際にありそうな話で、なおかつ怖いという、
かなり難しい要件が求められているんです。

さてさて、当ブログの話は、最初から創作であることを明示しています。
それは、一つには、日本の怪談が内包する上記のような図式から逃れようとする
意図があるんですね。だって、実際にありそうで、なおかつ怖い話なんて、
数話も書けば行き詰まってしまいますから。リアルな犯罪の話なら書けますが、
それは「怪談」とは言えないですし。では、今回はこのへんで。