bigbossmanです。この間、大阪のホテルの温水プールでKさんと
お会いしました。Kさんは現在、沖縄の石垣島に在住。本職は実業家で、
たくさんのビルや飲食店を経営されています。年商は10億近い
という噂ですね。Kさんはまた霊能者でもあり、各地の霊障事件を
解決するために、ヒマな時間をボランティアで飛び回っています。
プールサイドのテーブルでカクテルを片手にお話をうかがいました。
「Kさん、石垣島の生活はどうですか?」 「いつもどおりだよ。
四季がほとんどないから、あんまり変化がない」 「いや、うらやましい

ですよ。ところで、最近なにか変わった事件はありましたか?」
「うーん、変わったねえ。ああ、そうだ。あれがあるか。bigbossman、お前、
世界で一番大きい生き物は何か知ってるか? 「そんなの子どもだって

わかるでしょう。シロナガスクジラですよね」 「いや、必ずしも
そうとも言えないんだ。シロナガスクジラは哺乳類最大だがな」
「じゃあ、答えは?」 「キノコの一種オニナラタケと言われてる。
その大きさはなんと東京ドーム約700個分」 「うわ、それはスゴイ」
「まあキノコの場合は、個体という考え方が他の生物とは少し違うんだ
けどね」 「それが怖い話と関係があるんですか」 「まあ、なくもない」
「ぜひ、お聞かせください」 「・・・まあ、もう解決したからいいだろう。
Bさんという女性がいた。34歳でモダンダンスの教師をしてる」 「はい」
「で、30歳を越えて、最近肌のたるみや小じわが気になってきた」
「はい」 「毎月エステには通ってるんだが、行った直後は若返ったような
感じでも、あんまり長続きしない」 「はい」 「そこで、体の内部から

美容効果を発揮するものはないかと思って、いろいろネットで調べたんだ」
「はい」 「そしたら、キノコ美肌法というのを見つけたんだ。なんでも

キノコに含まれる成分が皮膚の代謝をよくするらしい。代謝が活発に
なると、皮膚の再生・成長も活発になり、肌の健康維持に効果的という
ことだった」 「ははあ」 「でな、それを販売してる健康食品の店を
チェックして、次の休みの日に行ってみたんだよ」 「はい」 「そしたら
意外にも普通の店じゃなくて、キリスト教の教会みたいな感じの建物
だったんだよ。ただし、屋根の突端についてる十字架は白ではなく黒色
だった」 「へえ、変わってますね」 「ああ。それでな、ドアの呼び鈴を
押して出てきたのが、30歳くらいの男の修道士、黒の僧衣を着てて、
金髪を短く刈り上げてたんだ。明らかに西洋人の顔立ち。で、Bさんの顔を

見るなり、礼拝の方ですか?って聴いてきたんだそうだ」 「で」 「Bさん

がキノコの美肌法の広告を見てやってきたというと、パッと顔が明るくなり、
ああ、そちらのお客様ですか、あれは当修道院のハンガリーの本部で考案した
もので、とても著しい効果があるんです。あなたはよいところに目を
つけられた。こう話したそうだよ。さらにBさんに向かって、私が何歳に
見えますかと聞いてきたんだ。Bさんが30歳くらいですかと答えると、
修道士は含み笑いをして、いやいや、私は今年で68歳です。と言ったんだ
そうだ」 「えー、倍以上ですね。でもそれ、本当だったんですか?」
「そこまではわからん。けど、Bさんは信じた。キリスト教の聖職者が
嘘をつくとは思わなかったんだな」 「本当にキリスト教関係?」 「それは
あとで話すよ」 「あ、はい」 「で、Bさんはそのキノコ製品を見せて
 
もらったんだが、ガラス瓶の下のほうにベージュ色の土みたいなのがあって、
その上からエノキタケみたいな細いキノコが数十本生えてた。さらに瓶の
口のとこまで液体が入ってて、それが薄いピンク色になってたって言うんだ。
Bさんの第一印象は気持ち悪いだったが、それがかえって効果がありそうな
気もしたんだ」 「買ったんですか?」 「それが値段を聞いたらすごく
安かった。ひと瓶200円」 「えー、安いですね」 「だろ、だから

詐欺でもないだろうと思ってその場で一つ買ってしまった」 「で、それ、
使用法は?」 「一日にスプーン一匙、液体をすくって飲む。それから
脱脂綿に液体をつけて美肌にしたい部分に塗る。それだけだ」
「簡単にできそうですね」 「ああ。で、Bさんはその日からさっそく
そのキノコ美肌法を始めたんだ」 「それでどうなりましたか」

「それがな、2,3日後からすぐに効果が出たんだ。その液体を塗った
部分の肌はつるつるになり、しかもそれ飲んでるだろ。体全体もなんだか
内側から発光するような感じで、鏡で見てはっきりわかるほどの効果が
あったんだよ」 「へえ」 「で、Bさんは1ヶ月ほどでその瓶を使い切り、
新たなキノコ液を買いに行った」 「それで」 「教会ではまた前の
修道士が出てきたんだが、売るのはかまわないが、前ほどの効果は期待
できないって言ったんだ」 「ははあ。今度は高く売るつもなんですね」
「それが違うんだ。効果が薄くなった分、値段は下げて100円にすると言う。
良心的だろ。だがそれからが少し変だった」 「というと」 「前と同じ
効果を発揮することもできるが、そのためにはこのキノコ液を他の人にも
薦めなければばらない、って言ったんだそうだ」

「ああ、そうやって購買者を増やすんですね」 「いや、やるもやらないも
Bさんの自由、ただしもし他の人に薦めるなら、自分よりも若い人じゃないと
効き目がないって話だったんだよ」 「変ですね。齢を取った人ほど効果が

実感できそうなものなのに」 「そうだよな。だが修道士は他の人の
分も100円でいいと言う。Bさんは、それなら簡単だと思った。自分が経営
してるダンススクールの仲間や生徒に薦めればいい。若い人はたくさん来ている。
まあ、自分より年上の人には売らないなんてできないんで、同じように
売ったそうだがね」 「で、どうなりました」 「2ヶ月目に入って、Bさんが
風呂で髪を洗ってると、額のあたりに妙な感覚がある。Bさんは普段は髪を
おろして額を隠してるので気がつかなかったんだろうが、鏡を見ると額の

真ん中、髪の生え際からエノキタケみたいなあのキノコが、一本だけ生えてた」

「へえ、不死議な話ですね」 「Bさんがそれを引っ張ってみると痛い。なんか
体の一部みたいだったんだ。で、皮膚病の一種かもしれないと思って医者に

行った。そしたら、医者も見たことがない症状ということで、とりあえず

塗り薬を処方してくれた。でも、まったく治る気配はなかったんだ」 「で」
「でもまあ、できものは細いし、髪をおろせばその中にまぎれて人にはわからない。
痛くもないし、実害はないも同然だったんだ」 「ははあ」 「で、そろそろ
2瓶目のキノコ液がなくなる頃、Bさんの生徒もみな髪をおろして額を
おおうようになってたんだ」 「で」 「いよいよキノコ液がなくなって、
明日にでももらいに行こうと思った日の夜。その額から生えたものがピンと
立ち上がった。それと同時に、行かなくちゃいけないところがある、とBさんは
思ったんだよ」 「どこへ?」 「それが自分でもわからない。フラフラと

 

外に出て、足が向かったのはダンススクールの裏手にある児童公園。
で、そこはサッカーができるくらいの広さがあるんだが、その芝生の中に
Bさんがキノコ液を売った面々の中で、Bさんより若い人が数人いて、しかも
まだどんどん集まってくる。全員が集まったところで、その人たちの中央の
芝生の中から、ずうんと巨大なキノコが一瞬で生えてきたんだ」 「ええっ!」
「するとBさんや他の人たちはその場に平伏して、しかも自分でも意識しない
言葉が口をついて出てきた」 「なんと?」 「私たちは家族、私たちは
みな一つ。一部が全体、全体が一部・・・と」 「で」 「そこにあの修道士が
姿を現し、Bさんたちは港に近い倉庫に連れてかれたんだよ。その修道士は収穫
という言葉を使っていたそうだ」 「で」 「Bさんたちはそこであのキノコ液
だけを与えられて1週間ほど暮らしたんだが、空腹にもならず、不安でもなく

すごく満ち足りた気分だったそうだ」 「うーん」 「でな、そのダンススクールの
生徒の一人が、俺がお世話になった人の娘さんでな、俺に捜索の依頼が来てた。
で、この倉庫のことを突き止め、警察といっしょに踏み込んでBさんらを救出
したんだよ。あと少しでハンガリー行きの船に乗せられるところだった」
「それ、どういうことなんですか」 「わからん。わからんが、後で聞いたところ、
Bさんは全員が家族というか、一つのものだという気持ちが強くて、まったく
怖さは感じてなかったんだそうだ」 「で、額にできたキノコは?」 
「キノコ液の使用をやめたら自然に消えてった。あと、その修道士には逃げられて
しまった。ヨーロッパに問い合わせたら、その修道会は異端ということで向こう

では解散になってたんだよ。なんでもある種のキノコを魔王と言って崇める邪教集団
だったらしい」 「はー、すごい話ですね。これブログに書いてもいいですか?」