今回はこういうお題でいきます。みなさんは普段の生活の中で、
石について意識されることってありますでしょうか?
ふつうはないんじゃないかと思います。で、自分はというと、
おそらくみなさんよりも、石に関わりのある生活をしてるんじゃないかな。

水槽の石組レイアウト
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というのは、一つには、自分がアクアリストだからです。
自分の家には大型の海水水槽がありますが、その他に、45cmや60cmの
淡水の水草水槽もあるんです。中には流木や石を入れますが、
そういうレイアウト素材を、たまにヤフオクとかで見てるんですね。
気に入ったのがあれば注文したりもします。

それと、自分は大学時代に考古学を専攻しまして、旧石器時代の打製石器から、
古墳時代の石製品まで、いろんな遺物を手にとって調べてきました。
ちなみに、歴史区分に、なんで木器時代ってないかわかりますよね。
石は、石同士をぶつければ加工できますが、
木を加工するには、石器や金属器が必要だからです。

さて、石の中には神聖なものがあり、この考え方は世界各地で見られますが、
日本では、「磐座 いわくら」という形の祭祀遺跡が多いですね。
磐座をWikiで見ると、「古神道における岩に対する信仰のこと。
あるいは、信仰の対象となる岩そのもののこと」というふうに出てきます。

古代の磐座
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これは大きく2つに分けて考えることができます。
一つは、岩そのものが神である場合。日本では、動植物だけでなく、
無生物である石なども神性を持っていると考えられてきました。
山の中などで奇岩に出会って、そこに神を感じとります。

もう一つは、石を神の「依代 よりしろ」、つまり神が降臨するものと
考える場合です。ここで少し古神道の基礎知識を述べると、
石に神が降りる場合を「磐座」、高い常緑樹に神が降りるものを
「神籬 ひもろぎ」と言うんです。どちらも、注連縄によって結界が張られます。

さて、日本神話では、石は、変わらないもの、長命なものの象徴でした。
石長姫(イワナガヒメ)は、国津神である大山祇神(オオヤマツミ)の娘で、
天から降り立った瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)に、大山祇神は、姉の石長姫、
妹の木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)の2人を、妃として差し出しました。

石長姫と木花開耶姫
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ですが瓊瓊杵尊は、木花開耶姫だけを受け取り、
石長姫は醜かったので返してしまったんですね。大山祇神は嘆息して、
石長姫は岩のように長い寿命の象徴、
木花開耶姫は花が咲き誇る繁栄の象徴だったのに、
石長姫を返されたので、天孫の寿命は短くなるでしょうと告げます。

ここまでは『古事記』からの話ですが、『日本書紀』では、
返された石長姫が、妊娠した妹の木花開耶姫を呪ったため、
瓊瓊杵尊との子どもである人間の寿命が短くなったとされています。
ただ、現在では、どちらも縁結びの神とされることが多いですね。

さて、ここまででだいぶ長くなってしまいましたが、石にまつわるオカルトを
ご紹介していきます。「石・オカルト」で検索すれば、
まずひっかかってくるのが「パワーストーン」です。このブーム、
けっこう長く続いてますよね。自分が知ってるオカルトショップでは、
売り上げのかなりの部分を支えています。

パワーストーン
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パワーストーンは、宝石(貴石・半貴石)の中でも、
ある種の特殊な力が宿っていると考えられている石のことで、
その石を身につけているとよい結果がもたらされると言われます。
その効果は、石の種類によって違いますし、
ペンダントや数珠に加工されて販売されることが多いです。

これ、由来はアメリカです。「ニューエイジ・ムーブメント」はご存知でしょう。
ビートルズがヒゲを生やしてインドに行ったりした、1970年代初頭の
ヒッピー文化ですが、その頃、石には特別な癒やしの効果(ヒーリング・パワー)
があるとして注目され、それが日本にも伝わってきました。

いっぽう日本でも、古代から滑石や蝋石、翡翠などを加工して玉にする技術があり、
勾玉なんかは、あの形に特別な呪力が込められていると考えられました。
まあ、パワーストーンには科学的な根拠はなく、怪しいオカルトと言われれば
そうなんですが、本格的な宝石に比べれば安価なものが多く、
持っていて悪いということもないような気がします。

あとはそうですね、「蛇石」なんてのをご存知でしょうか。
下図のようなもので、観賞用の石です。自然に蛇の模様が浮き出たと
言われるものの、加工されている場合もあるようです。縁起物として、
座敷の床の間に飾られたりしますが、効果のほどはわかりません。

蛇石
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最後は墓石。墓石の伝統は古く、遺体の埋葬地の上に石を立てたものを、
「支石墓」と言います。日本では縄文時代晩期ころから見られるようになり、
朝鮮半島経由で伝わったようです。墓石にも「墓相 ぼそう」というのがあり、
これは中国の風水からきた考え方です。
それによって、子孫の生活に影響が出たりするなどとも言われますね。

縄文時代の支石墓
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さてさて、ということで、石について見てきました。
「亡くなった子どもの顔が浮かぶ石」とか、そういうのも取り上げようかと
思ったんですが、かなり書く内容があったので、
また次の機会とします。では、今回はこのへんで。