これは、これまで自分が見聞きした不思議な能力の話です。
ただまあ、すべては偶然による出来事なのかもしれません。
そこのところはお含みおきください。

その1
自分の本業は占星術師ですので、大阪で活動する占い師の仲間の会に
入っています。これは別にギルド的なものではなく、
ときどき集まって情報交換もかねた飲み会をするためのものです。
そこで、タロット占いをしているGさんという女性の方と、こんな話をしました。
「Gさんは、最近、占いをしてて何か不思議な体験ってありますか?」
「bigbossmanさん、ブログに書くネタを探しているんでしょ」
「まあそうです」 「ええ、ありますよ。それもつい最近」
「どんな?」 「ほら、私の場合、お客さんに若い女の子が多いでしょ」
「ええ」 「それで、1ヶ月ほど前に、中学生の女の子が4人で来たのを、
一人ずつ占うことになったの」 「ははあ、恋占いですか?」
「まあそんな感じ。だけど、そのときちょっと変だったのよね」

「何が?」 「4人のうち、一番地味めの子がすごく気になったっていうか」
「どんなとこがです?」 「それが自分でもよくわからないんだけど、
なんかその子のことを早く見なくちゃいけない気がして、
最初にカードの前に座ってもらったの」 「はい」
「それで、カードを並べて、さてめくろうってときに、自分で考えてないことを
言っちゃった」 「どういうことですか?」
「その子に向かって、あなた携帯持ってる?って」 「・・・」
「そしたらその子、持ってますってスマホを出したから、
家に電話かけなさいって言ったのよね」 「どうして?」
「それが自分でもわからないの」 「で、どうなりました?」
「その子はとまどってたけど、家に電話かけて、でも誰も出なかったの。

で、家に誰がいるのって聞いたら、お母さんだけですって」 「それで?」

「でね、その子に、お父さんに連絡して家に向かうように話しなさい
って言ったの。それから、気がついたら私、席を立って車のキーを持ってたのね」
「・・・」 「で、その子ら4人を乗せて、その子の家に向かってたのよ」
「で?」 「その子は車の中でお父さんに連絡したけど、お父さんは、
何で家に戻るのかってその子に聞いて」 「まあそうですよねえ」
「でも、その子はもちろん、私も理由がわからない」 「はい」
「そのうちに、30分くらいでその子の家に着いて、郊外の一軒家だったけど、
玄関のドアには鍵がかかってなくて、開けるとすぐのとこで母さんが倒れてたのよ」
「う」 「それで救急車を呼んで・・・お母さんは命は助かったけど、まだ入院中」
「・・・」 「若いのに、心臓の発作だったのよね」

「うーん、それは不思議ですねえ」 「でしょ。私、そんな行動力、
ふだんは持ってないから。そのときだけ、何か力に動かされる感じで、
子どもたちを車に乗せてたのよね」 「うーん、そのお母さんの苦しんでる念が
Gさんに届いたってことなんですかね」 「そう・・・かもしれないけど、
その子自身は何も感じてなかったみたいでねえ」
「あ、そうだ。そのときのタロットの卦はどうだったんですか?」
「それが、後になって見たけど、お母さんとも病気とも関係ない
ことしか出てなかったのよね」 「ははあ」 「で、その子の一家からは

感謝されて、大魔法使いみたいなあつかいをされてる」 「それはそうでしょう、

命の恩人なんですから」 「でもね、あんなこと2度とできない
と思うし、その子から、先生占ってって言われるとプレッシャーがあるのよね」

その2 
武道係の雑誌の編集者をしているKさんと、モツ煮込みの店で飲んでました。
自分は学生時代にずっと柔道をやってたので、その関係です。
「Kさん、何か最近、不思議な話とかありますか?」
「ああ、bigbossman、あのブログに書くネタを探してるんだろ」
「まあそうです」 「うーん、そうだなあ。ああ、こないだ80歳を過ぎた
古流剣術の先生の取材をしたんだ」 「はい」
「その先生は、そんな歳なのにものすごく元気で、今でも山の中に入って
立木撃ちとかしてるんだよ」 「ははあ、それで」
「だから、取材の最後のほうで、健康の秘訣を聞いたんだ」
「ああ、読者が興味を持ちそうなことですもんね」
「そう。そしたらその先生、変わったことを言い出してね」

「どんな?」 「体の不調が出てきたら、他人にうつすって言うんだ」
「他人にうつす?」 「うん。例えば、ヒザの痛みが出てきたとするだろ。
それを、おまじないみたいなことをやって他人にうつすんだ。
具体的なやり方も聞いたよ。自分のヒザの痛みのある部分を何回かなでて、
痛みの元をくるくると丸める」 「・・・」
「で、それを誰か、自分とは関係ない人間に向かって、後ろ向きで投げつける。
すると、痛みがその人にうつるんだって」 「うーん、それ、信じたわけですか」
「いやまあ、そのときは信じなかった。だいたい、無関係の人に痛みをうつすって、
もしできるんだとしても、ちょっとねえ」 「そうですね」
「だから、その先生のイメージが壊れると思って雑誌にも書かなかったんだ」
「うーん、おまじないに近いものですよねえ。

ほら、小さい子がどっかをぶつけたりしたとき、痛いの痛いの飛んでけ~
ってやるじゃないですか。あんな感じなんでしょう。ただ、
その飛んでったものが人にうつるというとこが、新しいかもしれませんが。
その先生は、どうやってそれ、発見したんですか?」
「ああ、そこまでは聞かなかった。ただ、痛みをうつすのは選挙演説のときに
やるみたいだよ」 「??」 「その先生は、政治家はみんな悪いやつだと
思ってて、地元の選挙なんかがあると立ち会い演説会なんかに行って、
マイクでしゃべってる候補者に悪いところを投げつけるって」
「うーん。いろいろ信じられない話ですねえ」 「でも、実際に

効果があるかもしれない」 「え、もしかしてやってみたんですか?」
Kさんはニヤッと笑って、「やってないけど、今、試してみようぜ。

bigbossman、どっか体の調子悪いとこある?」 「いや、病気のほうは

よくなりました。ただ・・・最近、肩がこる感じがありますね。
たぶんパソコンの打ちすぎだと思うけど」ここでKさんは声をひそめて、
「ほら、テーブル席にサラリーマンの2人組がいるだろ」 「はい」
「あの青い背広のほうに向かって、肩越しに投げつけてみろよ」
「肩こりをですか? いや、そんなのありえないですから」
「ありえないんだったら試してみてもいいじゃないか。こうやって、何度も
痛いところをさすって丸めて、後ろ向きのまま、あいつのほうに投げてやる」
「・・・じゃあ、やってみますよ」ということで、Kさんに言われたとおり、
自分の体の悪いところを引っぱり出し、手でこねて丸める動作をし、肩越しに

投げてみたんです。もちろん、そんなこと効果があるとは思ってませんでした。

案の定、青いスーツのサラリーマンには何の変化もなかったんです。
Kさんとは、それから1時間近く飲んでいろんな話をし、その場をおごって

いただいて席を立ったんですが、ちょうど、さっきのサラリーマン2人も、
やや遅れて会計を始めたんです。で、自分はタクシーを呼んでもらって、
Kさんと別れて店の前で待ってました。そしたら、
自分が肩こりをうつしたサラリーマンが暖簾をくぐって出てきて、
首をコキコキと回し、連れに向かって、「さっきから何だか、ひどく首筋が
痛いんだよなあ」って言ったんです。・・・まあ、これだけの話で、
偶然だとは思いますけど、寝て起きた翌日から、自分の肩こりが
ほとんどなくなってたんですよ。でもこれ、肩こりとかじゃなく、もし、
もっと深刻な病気でもうつすことができるんだとしたら、怖い気もしますねえ。