もし本当にいるとすれば、英国スコットランドで最も有名な動物は、
ネス湖にいるというネッシーだ。今回、科学者チームが、
ネス湖の水に含まれているDNA断片の配列を片っ端から決定することで、
この湖にネッシーがすんでいる(あるいはすんでいた)か
をめぐる論争に決着をつけようとしている。

ニュージーランド、オタゴ大学の遺伝学者ニール・ジェメル氏が率いる
国際研究チームは、2018年4月からネス湖の水のサンプルを採取していて、
6月からはサンプル中に含まれるDNAの抽出に着手する。
彼らの目的の1つは、ネッシーの遺伝子探しだ。(Natonalgeographic)


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今回は、科学ニュースからこの話題でいきます。
やや地味めな内容で、カテゴリとしてはUMA談義に入るでしょうか。
まず、環境DNAとは何か?ということですが、生物はそれぞれ、
固有の遺伝子を持っていて、その塩基配列はDNA(デオキシリボ核酸)
の中に組み込まれています。ここまではご存知だと思います。

さて、生物が生活するにあたって、多数のDNAが周囲にまき

散らされます。皮膚のかけらや体毛、糞、精子などです。人間では、
1日で約1兆個の細胞が入れ替わると言われていますし、
掃除をすれば、ゴミの中にたくさんの髪の毛が含まれていて
驚くこともあります。1日、100本は抜けているそうです。

これらの、生物の個体から直接採取されたのではない、
環境の中に自然に含まれるDNAを、環境DNAと言います。
川や湖の場合、水の中には、環境DNAが多数とけ込んでいます。
(海の場合は水量が桁違いに多いため、難しい面があります)

これまで、ある水域にすむ生物相を調べるには、あちこちで網を入れて
実際に魚を捕ったりしなくてはならず、膨大な時間と費用がかかっていました。
ところが、最近になって、次世代シーケンサーという機械が開発され、
短期間で効率よく生物調査ができるようになったんですね。
単に、採取した水のサンプルを機械にかけるだけです。

次世代シーケンサー
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日本でも、琵琶湖周辺の河川において実施され、たった一人の研究者が、
わずか10日間で、琵琶湖周辺水域の85%の調査を行っています。
これが従来型の調査であれば、大勢の研究者で何年もかかっていたはずです。
しかも、調査の精度も十分満足できるものでした。

琵琶湖には、文献などから、44種類の魚が生息すると推定されて

いましたが、この調査では、そのうち38種類の環境DNAを採取し、
さらに、琵琶湖では報告がなかった2種の魚のものまでが

見つかったんです。また、やろうと思えば、魚だけでなく、
水生昆虫や植物のDNAも見つけることができるはずです。

上記引用のニュースは、この調査をネッシーがすむとされる

ネス湖において実施しようということなんですね。

では、ネッシーは本当にいるのか?これまで、ネッシーの正体は

恐竜の一種である首長竜ではないかという
説が多かったんですが、首長竜の絶滅は6600万年前、
それに対し、ネス湖が氷河によって形成されたのが約1万年前です。

首長竜
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根本的に時代が合わないんですね。ですから、ネッシー研究者の中には、
ネス湖は地下のトンネルで海とつながっていると主張する人もいました。
しかし、これまでに行われた水質・地質の調査では、
地下トンネル説には否定的な結果が出ています。

また、首長竜は、小さなものでも体重1トンはありますし、
長い年月にわたって種を維持するためには、
最低でも数百頭の個体数が必要だと考えるのが妥当でしょう。
ところが、ネス湖は寒冷地にあり、それだけの巨大生物の数を維持できる
餌となる魚がいないんですね。

ということで、ネッシー=首長竜 説は八方塞がりです。

これを打開するため、いろんな奇抜な説が考え出されています。
例えば、サイエンスエンタティナーを自称する飛鳥昭雄氏は、
ネッシー=タリモンストラム 説を唱えていますが、これは恐竜よりはるかに

古い、古生代に生息していた、せいぜい10cm程度の生物です。

タリモンストラム


それらの説の中でも穏当なものとしては、チョウザメや

ヨーロッパオオナマズの誤認ではないかとするものです。チョウザメは、
大きな種類では10mほどになりますし、冷水を好みます。
また、ヨーロッパオオナマズも3m近くなります。
しかし、ネス湖において、この2種が捕獲されたという記録はないんです。

さて、ここまで読まれて、なんだ、どうせネッシーなんていないんだろう、
そんな調査やるだけムダだと思われたかもしれません。しかし、もし、

いないと思われていたチョウザメのDNAが見つかったら、それはそれで

大発見ですし、キャビアをとるための養殖ができるかもしれません。

オオチョウザメ


また、ネス湖全体の生物相がわかることで、環境保護にも役立ちます。
あと、首長竜のDNA配列はわかってはいません。
化石はいくつも見つかっていますが、長い年月の間に,
DNAは壊れてしまってるんです。ですから、もし正体不明の

DNAが発見されれば、ネッシー実在の夢は残ることになります。

さてさて、これ以外にも、環境DNAを用いた調査は、たくさんの

可能性を秘めています。例えば、このニュースを掲載した

ナショナルジオグラフィックの研究チームは、1930年代に、

飛行中に行方不明になった米国の女性飛行士、アメリア・イアハート
が不時着したとされる南太平洋のニクマロロ島で、土を採取して、
彼女がいた痕跡を探しているということです。

アメリア・イアハート
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これが成功すれば、すごい話だなあと思います。

ただし、アメリア・イアハートは近代の人で、あらかじめ髪の毛などから

彼女のDNAがわかっているので、同定が可能なんでしょう。

日本で、例えば、坂本龍馬の環境DNAを見つけたいと

思ったとしても、元がわからないんですよね。では、今回はこのへんで。