いわゆる超能力には大きく分けて2種類あります。これについては前にも

書きましたが、サイコキネシス(念動力)とテレパシー(精神感応)です。
この違いは、物に働きかけるのがサイコキネシス、精神に働きかけるのが

テレパシー。本当は少し違うのですが、そう考えるのがわかりやすいでしょう。
例えば、手を触れないで本のページをめくったりするのがテレキネシス。
後ろを向いている人を、「ふり向け」と念じることで振り返らせるのがテレパシー。
今回は、後者のテレパシーについてのお話です。ただ、最近はテレパシーではなく、
同じような現象が「生霊」と呼ばれることが多くなってきました。
これはスピリチュアルの隆盛と関係があるんでしょう。

アパートのドアの話
これはある大都市の郊外にあったアパートに、
10年ほど前に住んでいたAさんからうかがいました。Aさんは当時20代後半で

独身、カラオケ店で働いていました。住んでいるアパートは古く、
そのぶん賃貸料は安かったそうですが、Aさんは、早く結婚して引っ越したい

とばかり考えていたそうです。アパートは2階建てで、Aさんは2階の端部屋に

いて、手すりのあるコンクリの廊下を通り、階段を降りて外に出ていました。

ある午後、出勤するために廊下を通っていると、中程から階段寄りにある

ドアの前で、ズンと頭に衝撃を受けたように感じました。それと同時に、

目の前にたくさん書かれた字のようなものが広がって見えたそうです。
「え、え?」それはすぐに治まったものの、今のは何だったろうと不思議に

思いました。目の前に見えたと思った字は、ミミズののたっくったような横書きで、

それまでAさんが1度も目にしたことがなかったものだったからです。
でも、その場所から数歩離れると、もうおかしな感じはなくなりました。
その日の深夜(というか翌日の朝方)Aさんは店から彼氏をともなってアパートに
戻りました。時間が時間だし、彼氏を連れ込むのもあまり人目のよいこと

でもないので、2人とも、そうっと静かに廊下を通っていましたが、
出勤のときと同じドアの前で、やはり変な現象が起きたんです。
そのドアの前を通るとパッとフラッシュが焚かれたように目がくらみ、目の前に

不思議な文字が広がる。それがAさんだけではなく、彼氏もそうだったんです。
「え、今の何だ? 目の前に変なものが見えた」 「え、あんたも?」
「光ったようにも感じたが、ここの照明ってあれだけだよな」
彼氏が指差したのは、廊下の天井にある薄黄色い電灯でした。

「うん。変なものって字みたいなもの?」 「ああ、字だと思う。んーアラブ

のほうの字。ほらイスラム教なんかで出てくるやつ」 「じゃあ同じもの見たかも」
「この部屋は?」 「そういえば外国人の夫婦と子どもが住んでる。
国の名前はわからないけど、アラブの人だよ。でもここ最近見てないな」
彼氏だけが鉄のドアに近づいて手を触れてみました。「う、また光った。

さっきよりは弱かったけど」 「私には、光ったのは見えなかった」その後、

2人でドアをペタペタ触ってみましたが、もうその現象は起きませんでした。
彼氏が「これ、明日にでも管理人に話して中の様子を見てもらったほうが

いいんじゃないか」こう言い、Aさんは翌朝早く大家さんに電話したそうです。
で、大家さんが半信半疑ながら合鍵でドアを開けてみたところ、
中のドアに近いところでアラブ人の奥さんだけが倒れていて、まだ息がありました。

後頭部に大きな打撲の跡があり、脳内出血を起こしていたんですが、
緊急手術で一命をとりとめました。旦那さんと子どもの姿はなく、今もって行方が

知れないということです。おそらく奥さんは旦那さんに殴られたんでしょうが、
刑事事件にはなりませんでした。Aさんは、「あの奥さんが意識がない状態でも、
神様に祈ってて、何だっけ? コーラン? あの文字みたいなのが
私たちに伝わってきたんじゃないかしら。でも、神様に祈ったのなら、旦那さんは

どこかで神様の罰を受けてるのかしらねえ。それも子どもがかわいそうだけど」
こんな話をしてましたね。この話が実際にあったのか、自分には何とも

言えませんが、もし事実だとしたら、Aさんと彼氏に不思議な光景を見せたのは、
アラブ人の奥さんの生霊? テレパシー?
それともアラブの神様のお力なんでしょうか。自分にはよくわかりません。

病院での話
これはある総合病院に勤めるBさんからうかがった話です。
その総合病院は救急指定になっていて、かなり重篤な患者も運び込まれ、
亡くなる人の多いところでした。そんな中でも特に激務である集中治療室に、
Bさんは配属されていました。ある夜勤の日のことです。
心臓疾患の老齢の男性が救急車で運ばれてきました。
いったんは心臓停止状態にあったのが、救命士の処置で心拍は再開していました。
急なことだったようで、救急車に同乗してきたのは、
娘さんと思われる50代の女性だけ。患者の容態を見て、
担当の医師団は顔を曇らせました。というのは、かなり心停止の時間が長く、
このまま治療しても、よくて寝たきり、植物状態になる可能性が高かったからです。
これは、命は助かっても家族にとっては大きな負担になるんです。

医師団のキャップが娘さんに「かなり呼吸機能が弱いです。どうしますか、
人工呼吸器をつけますか?」このように聞き、
娘さんはとまどっていましたが、「ええ、取りあえず・・・」と言いかけたとき、
ベッドに寝かされていた老人が、ぎゅんと体を起こしたんです。
機械じかけのように見える不自然で異様な動作でした。そして、
両手を顔の前で開いて激しく振ったんです。「え、え?」
でも、もう一度見直すと、老人は固く目をつむってベッドに寝たきりで、
容態からいって起き上がることなんてありえません。
Bさんが「私は幻覚を見たのか?」と思っていると、
娘さんが、「父が嫌がっています。すみません、父はずっと昔から、
コロリと逝きたいと言っていて、延命治療はいらないって言ってたんです」

このように話をし、人工呼吸器は装着しないことになりました。
それでも昇圧剤の投与などはしました。2時間ほどして、他のご家族も

病院に駆けつけ、老人の患者は朝方になって静かに息を引き取りました。
遺体の処置をし、葬儀屋さんが呼ばれて搬送されていきましたが、娘さんは私たちに

礼を述べると、「人工呼吸してもらおうと思ったんですが、父が急に起き上がって、

いらないって手を振って訴えた・・・ように思えたものですから、お断りさせて

いただきました。でも、これで本当によかったのかはよくわかりません」
このようなことを述べて帰られたんです。それを聞いてBさんは、
「ああ、私と同じものが見えたんだな」と思ったそうです。というか、老人が
娘さんに対して訴えかけたのが、Bさんにも伝わってきたんだろうと思います。
これなんかはどうでしょう。生霊なんでしょうか、テレパシーなんでしょうか。

愛犬の知らせの話
Cさんは丸の内にある大企業に勤めていて、毎日忙しく立ち働いていました。
結婚しており、郊外の一軒家に住んでいたんですが、なかなか子どもが

できず、そのかわりというか、小型の室内犬を飼っていたんですね。
ある日、その犬が夜中に吐き戻しをして、翌朝になっても調子が悪かったんです。
Cさんは大変心配したものの、重要な仕事があって会社を休むことはできず、
犬をタオルケットでくるんで出勤しました。昼には、家の近くが仕事場の

旦那さんが、戻って様子を見ることにしていたそうです。で、11時頃のことです。
コピー機を使うためにフタを開けたところ、そのガラスの中に愛犬の姿が

あったんです。「え、え?」でも、見えたのは一瞬だけで、その姿は

すぐに消えました。Cさんは胸騒ぎがしたんですが、どうすることもできず、
昼休みに旦那さんからの連絡が来るのを待ちました。

そして電話があり、旦那さんが見にいくと、愛犬は亡くなっていた

ということです。このケースも、難しいですよね。愛犬の姿が見えたのは、
犬が生霊になって自分が死ぬことを知らせにきたのか?
犬のテレパシーが遠くまで届いたのか? それとも、犬は死亡した後に、
幽霊になってCさんに姿を見せたのか? もちろん犬の正確な

死亡時刻はわかりませんので、どうとでも解釈できてしまうんですね。
さらに、朝から愛犬のことを心配し、気にかけていたCさんが幻覚を見ただけ、
という可能性もあります。霊などは信じない、という方なら、この最後の

解釈をされるんだろうと思います。ということで、虫の知らせ系と呼ばれる話は、
どう考えればいいのかよくわからないケースがとても多いんです。
みなさんはどのように考えられますでしょうか?