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今回はこういうお題でいきます。さて、どんなこと書けるでしょうか。
まず、蛇というのは世界の神話に登場しますよね。
それだけ古くからいて、人間に怖れられた生き物なんでしょう。
脚がなく、のたくって進むところだけでも他の生物とは異質です。
あと、毒を持っているものも多い。

神話上に見られる蛇は、聖と邪の2つの概念をあわせ持っている
場合が多いんですね。これは日本神話でもそうです。
奈良にある三輪山の神は、蛇の姿をしているという伝承があります。
「倭迹迹日百襲姫命(やまとととひ ももそひめ)」は、
邪馬台国の卑弥呼ではないかという説もある古代の女性で、

倭迹迹日百襲姫命と弟の吉備津彦命(桃太郎)
タイトルなし

神の声を聞くシャーマンのような役目を果たしていたと『日本書紀』
に出てきます。百襲姫は三輪山の神である大物主神の妻となったが、
大物主神は夜にしかやってこず、昼に姿は見せなかった。
百襲姫が明朝に姿を見たいと願うと、翌朝、大物主神は櫛箱の中に
小蛇の姿で現れたが、百襲姫が驚き叫んだため、

大物主神は自分を恥じて三輪山に登ってしまった。百襲姫がこれを後悔して
座り込んだとき、箸が陰部を突いてしまい死ぬことになった・・・
百襲姫は大市に葬られ、人々はその巨大な墓を「箸墓」と呼んだ。
これが現在の「箸中山古墳」とされています。

箸中山古墳
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この話はまず、人間が蛇と結婚したという異類婚姻譚が入っています。
それもただの蛇ではなく、神の正体としてのものです。
ちなみに、百襲姫が3世紀以前に実在した人だとして、その当時、
日本には箸はなかったはずなので、どうして古墳が箸墓と
呼ばれているのかについて、いろいろな解釈があります。

そのうちの一つは、箸墓古墳には埴輪が立ち並んでいたため、
最初は、土師墓(はじはか)と呼ばれていたのが転嫁して、
「はしはか」になったとするものです。これはまあ、ありそうな解釈です。
それと、みなさんは「墓」と「陵」はどう違うかご存知でしょうか。

「陵」という言葉を使っていいのは、天皇および皇后の墳墓に対して

だけです。百襲姫はそのどちらでもないので、「箸墓」なわけですが、
この区別がつくられたのはかなり後代のことなんですね。
ですから、もともとはそう呼ばれていなかった可能性があります。
おっと、余談はこのくらいにしておきましょう。

上記の話は、蛇が神聖な場合の例ですが、日本神話には邪悪な蛇も
登場しますよね。「八岐大蛇(やまたのおろち)」です。『日本書紀』では、
各地を放浪して歩いていた「素戔嗚尊(すさのお)」が、八岐大蛇の生贄に
されそうになっていた少女「奇稲田姫(くしなだひめ)」をたすけます。

八岐大蛇 この絵だと頭が中国の龍のようです
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酒を飲んだところをずたずたに斬られた八岐大蛇の尾から、
三種の神器の一つである「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」が出てきて、
国の宝として、現在まで伝えらていることになっています。
八岐大蛇については、洪水の象徴とか、
鉄剣が体から出てきたことで、製鉄の象徴などとも言われますね。

ということで、蛇には神聖な属性と邪悪な属性の両方があるんです。
現代でも、「蛇を殺すと祟りがある」 「白い蛇は神様のお遣いで、
見ると幸運を呼ぶ」などと言われたりします。上記の百襲姫の逸話から、
蛇は大神(おおみわ)神社の眷属とされています。

ギリシア神話だと、メデューサの話が有名です。ゴルゴン3姉妹は、
みな髪の毛が無数の蛇でしたが、末娘のメデューサは不死身で、
その姿を直接見たものは石に変わってしまう力を持っていました。
これを退治することを命じられたペルセウスは、鏡にメデューサの
姿を映しながら、切られると血が止まらなくなる剣を使って倒します。

メデューサの首
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メデューサの首はペルセウスの盾につけられますが、帰路の途中、
海の岩の上に縛りつけられたアンドロメダという少女を見つけます。
この少女は、海竜のような怪物、ケートスの生贄にされるところでしたが、
怪物はペルセウスの持つメデューサの首で石に変えられ、海に沈みます。

おや、この話、上に書いた八岐大蛇とよく似ていますね。
神話がつくられた時代は、ギリシア神話のほうがずっと古いので、これも、
ユーラシア大陸を伝わって、日本まで伝播してきた可能性があります。
これ以外にも、前に何度か書いた、イザナギ・イザナミの
黄泉帰りの話もギリシア神話とそっくりです。

ペルセウスとアンドロメダ
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さて、もうここまででだいぶ長くなってしまいました。
キリスト教では、蛇は楽園にいたアダムとイブを誘惑して、
禁断の知恵の木の実を食べるようにそそのかします。この蛇は、
悪魔サマエルが姿を変えたものだったという説もあります。

このことから、キリスト教社会では蛇は忌み嫌われる生物となった、
と言われたりします。また、蛇が怖れられるのは、
人間がまだ猿で樹上にいたときの記憶が残っているからだ、
などという説もありますが、はっきりしたことはわかりません。

さてさて、蛇についてのオカルトはまだまだいくらでも思いつきます。
UMAの話もしようと思ってたんですが、そこまでいきませんでした。
まあ、またいつか取り上げる機会もあると思います。
では、今回はこのへんで。

アダムとイブを誘惑する蛇
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