発汗は、今や健康や美容のトレンドになっている。
遠赤外線サウナからホットヨガまで、タオルが汗でびっしょりになる
アクティビティはリラクゼーション効果があるだけでなく、
体の毒素を排出して健康を保つとも言われている。

だが、汗をかいて毒素を排出するという説は、汗をかいて弾丸を搾り出す
というのと同じくらいありえない話であることが、
最新の研究で明らかになった。科学者たちも長年密かに疑っていたことだが、
汗と一緒に毒素も排出されるというのは、都市伝説に過ぎなかった。

汗の成分の大部分は水とミネラルだが、
様々な種類の有毒物質も含まれている。ただし、学術誌
「Environment International」に掲載された研究報告によれば、
その量はごくわずかだという。(National Geographic)




今回は科学ニュースからの話題でいきます。みなさんは、
サウナはお好きでしょうか? 自分は年に数回、人に誘われたときに
行くくらいで、自分からすすんで行くということはないですね。
あの熱い中にずっといるのは、苦行という感じさえします。

さて、これは記事にあるとおりなんでしょうね。基本的に、人間が汗をかくのは、
気温が高いとき汗を出して、それが乾くときに、体から気化熱を奪って
体温を下げるためです。もちろん、汗にも、体に取り込んだ汚染物質や
老廃物は含まれていますが、その量はほんのわずかなんです。

特に、有害金属などは水に溶けにくく、脂肪に引き寄せられやすいので、
ほとんどが肝臓で処理されます。一説には、肝臓と腸によって
便として排泄されるのが75%、尿として出てくるのが20%。
汗によって排出されるのは1%程度で、
髪の毛になって排出?されるのとだいたい同じです。

サウナでの毒素排出は難しい
キャプチャ

上記の論文では、1日に45分間の激しい運動をしたとしても、
出てくる汗は2リットル程度。それだけの汗をかいても、
汚染物質は0、1ナノグラム以下しか含まれていないということです。
これは、普段の食生活で1日に体内に取り込む汚染物質のうち、
汗で出てくる量はたったの0、02%にしかならないんですね。

ですから、もしデトックスが目的なら、水をたくさん飲んで、
オシッコの回数を多くしたほうが、まだしも効果的なようなんです。
では、サウナには健康増進の効果はないのでしょうか?
検索してみると、サウナの最大の効用としては、

「身体が高温にさらされると、血管は拡張し心拍数が高くなる。
すると、体内をより多くの血が循環するので、筋肉に流れる血液も増える。
肩こりは、運動やストレスで筋肉が緊張し、血液が流れにくくなって生じるが、
サウナによってこれが改善できる。」こんなことが出てきています。

毒素排出には水分を多く摂るのがよい


まあ、たしかにそれはそうでしょうが、これを読んで、
自分はふと別のことに思いあたりました。「心拍数一定説」です。
心拍というのは、心臓のドキンという鼓動のことですが、
人間ではだいたい、1分間に60~80回程度になります。

で、この心拍が、合計20億回~25億回を超えると、
そこで寿命が来てしまうという説があるんです。これは昔からありましたが、
日本で知られるようになったのは、生物学者の本川達雄氏が書いた新書、
『ゾウの時間ネズミの時間』で紹介されてからのことなんですね。

この本、自分も読みましたが、科学的に正しいかどうかはともかくとして、
名著だと思います。とにかく面白く読めますし、
生物学の楽しさに目を開かせていただきました。また、
物理学ではなかなかうまくあつかえていない「時間」についても、
じつに興味深い内容が載っています。



上記した「心拍数一定説」は、あらゆる動物に適用されます。
例えば、ネズミは体が小さく、寿命は数年しかありません。
ですが、心拍数は多くて、1分間に400回もあるのだそうです。
そして、その心拍回数が20数億回を超えたときに生物としての寿命がくる。

人間はだいたい1秒に1回心拍がありますが、ネコで0、3秒、ウマで2秒、
ゾウだと3秒に1回です。象の平均寿命は100年近くあります。
つまり、体が大きい動物ほど心拍がゆっくりで、寿命が長い。
でも、どんな動物も、心拍20億回~25億回が寿命の限界。

で、その生物の心拍数によって流れている時間が違う、と本川氏は説きます。
これはもちろん、物理的な時間ではなくて、生物的な体感時間のことです。
ネズミの寿命は、象の寿命の50分の1ほどですが、
その分、ネズミの時間はゆっくりと流れている。



ネズミの意識を可視化できるわけではないので、
本当にそうなのかはわかりませんが、納得できる気はしますね。
ネズミの小さな脳の中を、血流がものすごい速さでかけめぐっているので、
情報の処理速度が速くなり、それに比例して、時間がゆっくりに感じられる。

われわれが、体が小さい子どものときには、
1年間というのは長い長い時間に感じられましたが、
年をとってくるとあっという間に過ぎていきますよね。
これと似た部分があるのかもしれません

さてさて、サウナの話に戻って、入っているときには確実に心拍数が上がります。
これは激しい運動をする場合でも同じですね。ということは、
20数億回の限りある心拍数を、浪費しているということにならないでしょうか。
まあでも、365日、毎日サウナに数時間入っている
なんて人もいないでしょうから、そんなに心配することもないんでしょう。

最後に、「心拍数一定説」について、生物学者では肯定的な意見の人が
多いようですが、心臓外科医など、医学界には否定的な意見もあります。
ですので、必ずしも確定された説というわけではないことを
お断りしておきます。では、今回はこのへんで。