自分の書く怖い話には、ストレートな幽霊ってあまり出てこないんですよね。
なんか「口から血をしたたらせた生首が・・・」とか書いてると、
自分で笑いそうになってしまってダメなんです。
掲示板に書き散らしていたものをこうやってまとめてみると、
呪いをテーマにしたものが多い。やはり興味があるんでしょう。
 

ところで、もうすぐ初詣の時期となりますが、みなさんは

どんな願いごとをするんでしょうか?世界平和?家族の健康?・・・

祈りというものは、自分の力ではどうにもならないことを、
神や自然の摂理などの上位概念の力によって
かなえさせていただくというものだと思います。

そして呪いもまたよく似た面があると思うのです。
人類学者のジェームズ・フレイザーは、呪術について、
「類感呪術(模倣呪術)」と「感染呪術」に大別しました。また、道教系では
このような呪術を「厭魅、厭勝 えんみ、えんしょう」と言います。

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類感呪術とは、類似したものはお互いに影響しあうという発想に
のっとった呪術で、日本でいえば「丑の刻参り」がこれにあたると
言われます。呪う相手を模した人形(ひとがた)に五寸釘を打つなどの
危害を加えることで、実際に相手に苦痛を与えることができるとします。

日本では古くから行われていたようで、平安京祉から、
呪術に用いられたと考えられる木製人形が発掘されています。
(ただし釘を打ったりするような使われ方はしていないようです)
実際にはもっと古くからあったものと思われます。

次に感染呪術は、対象と一度接触したもの、もともと対象の一部で
あったもの(髪の毛、爪、衣服等)は遠く離れても、
お互いに影響を及ぼし合うという発想です。今から考えると
トンデモなんですが、当時は真面目に信じられていました。

ジェームズ・フレイザー
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ヨーロッパの一部では「武器軟膏」という治療法がありました。
これは、誰かが傷を受けたときに、その傷を負わせた武器や、
傷にまいた包帯に薬を塗れば傷が治るとする典型的な感染呪術です。
これが大真面目に議論されていたのは、

16・17世紀ごろとそんなに古い話ではありません。
この応用として、航海中の人に時間を知らせるため、
わざと犬を傷つけて船に乗せる。陸の人間は、
ある決まった時間に、その犬がまいていた包帯に共感の粉をふりかける。

すると犬が痛みで飛び上がるので、
船の上にいる人は、正確な時間がわかり経度を求めることができる・・・
ヴードゥの人形のように、相手の髪の毛を入れて針で刺すのは
類感・感染の二つが入り混じった形です。



さて、このような呪いはしょせんはブラセボ効果とみる人もいます。
つまり誰かに呪われていると知ることによって、
呪われた人は嫌な気持ちに陥り、自己暗示によって自滅していく
可能性があるだけ、というのです。こんな判例があります。

1955年(昭和30年)秋田県秋田市金足で夜間、
夫の不倫相手の名前を書いた紙を五寸釘で神木に打ちつけ、

呪い殺そうと願を掛けていた農家の主婦が近隣住民から通報を受けた

駐在により逮捕された。被害者側は殺人未遂罪で起訴しようとしたものの、


裁判所は呪いと殺人の間に因果関係を立証することが出来ず、
「たとえ迷信であっても生命身体に害を与える目的の行為」
としてやむなく脅迫罪を適用し書類送検となった。



 

この場合は、相手が呪われていることを知ったために脅迫罪が

成立したようです。ですが、本来の丑の刻参りでは、

実行していることを絶対に人に知られてはいけないのですが・・・

では本当に呪いはないのでしょうか。前に紹介した西丸震哉氏の本によると、

氏は自分で呪いの実験をしたが、相手が死ぬ寸前でやめた。
また呪いを最後まで実行した人に会ったが、その人は、
相手が死ぬ瞬間に誰が呪ったかわかるため、
結局は自分も復讐を受けて共倒れになってしまうと言っていたそうです。

さてさて、「人を呪わば穴二つ」・・・ウエブには多くの呪い代行業者が
あるようですが、呪いのあるなしはともかく、
やはり実行すべきではないもののようです。
少なくとも自分の心を醜くする効果は確実にあると思われますから。

最後に、初詣のお祈りとしては「自分は精一杯頑張りますので、
お力添えをお願いします」こんなお祈りのしかたがよいのではないでしょうか。
やはり、「天は自ら助くる者を助く」なのだと思います。
キリスト教であれば「何事も神の御心のままに」かな。

『人形(ひとがた)』平安京祉出土
無題

追伸:
呪い系の小説や映画って、欧米では意外に少ないんですよね。
やはりキリスト教と相容れない部分があるからなんだと思います。映画の
『スペル』にしても、キング原作の『痩せゆく男』にしても、ジプシーの

呪いなんです。で、ジプシーの呪いとは

何かというと、作中でもほとんど説明はないし、

よくわからない。この手のものはジプシー、アメリカだと、
ネイティブ・アメリカン由来にしないと難しいんでしょう。
『グリム童話』なんかで、ヒキガエルにされた王子の話とか出てきますけど、
ルーツはああいうとこなんでしょうか?『痩せゆく男』でも

判事がトカゲにされてました。
映画はどっちもなかなか面白いです。あまり怖くはないですが。
ただ、『スペル』のほうは、ゲロ系のグロが苦手な人にはおすすめできません。
監督がサム・ライミですし。では、今回はこのへんで。