えー今回のネタはこれです。機械の怪談、これって難しいんですよね。
なんでかというと、SFになってしまいやすいからです。
例えば、機械人間という語があって、これを「ロボット」と訳してしまうと、
それはSFの世界です。ホラーだったら、

ここはどうしても「オート・マタ(自動人形)」としたいところです。
オート・マタはヨーロッパでは12世紀ころから長い歴史があり、
都市の広場の時計台で鐘を鳴らしたりする人形もオート・マタの一種です。
これは日本ではからくり人形といって、
お茶くみする子どもの人形などが有名ですよね。

ロボットとオート・マタの違い。自分の独断と偏見でいえば、
それは動力にあるのではないかと思います。ロボットは電力や原子力で
動きますが、オート・マタはぜひともゼンマイで動いてほしい。
ゼンマイ動力は長時間持ちませんので、切れたらまたキリキリと巻く。

hbひゅ

そのあたりが古きよきオカルト世界を感じさせるのです。
あと、ロボットは作られた目的を果たすことができれば、
人間に似てなくてもいいわけですが、オート・マタは人間を
模したものでなくてはなりません。そういう意味で、
アンドロイドの概念のほうが近いかもです。

さて、自動人形が出てくる作品といえば、E・T・ホフマンの『砂男』です。
ちなみに砂男というのは西欧の伝説で、子どもを眠らせるために、
夜、目の中に砂を入れにやってくる妖精のようなものです。
そして砂を入れられた目はゴリゴリして目玉が取れてしまう場合もある。

ホフマンの砂男には、目玉が取れるモチーフがくり返し出てきますね。
で、その登場人物の一人が自動人形オリンピア。
主人公のナタナエルはオリンピアの姿を望遠鏡で見て恋に落ちるものの・・・
でもこれ、怪奇小説なんでしょうかねえ。たしかに怪奇小説集に
入ってたりしますが、幻想文学に近いものだと思います。

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あと、オート・マタについては、ポーが『メルツェルの将棋差し』
という短編を書いていて、これも怪奇小説ではなく、
18世紀に実在したチェスを指す自動機械人形「トルコ人」を見て、
ポー自身がそのしくみを推理して論評を加えたものです。

ポーは、チェスの指し手は機械が選ぶのではなく中に人が
入ってるのだと見抜き、人がどこに隠れているかを考えます。
チェスの場合、現在、人間はAIにまったく勝てなくなってしまいましたが、
そんな未来をポーは予想できていたのでしょうか。

メルツェルの将棋差し
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日本の作品にもオート・マタは出てきて、荒俣宏氏の『帝都物語』には、
「学天則」というのが登場します。地下で怪物相手に大活躍しますね。
これは、昭和3年、昭和天皇即位を記念した
大礼記念京都博覧会に大阪毎日新聞が出品したものです。

「東洋初のロボット」という評価がありますが、腕を動かしたり、
表情を変えたり、字を書いたりするなどの仕組みは、
オート・マタに近いものです。機械の怪談というと、

あとはそうですね、映画のほうにいきましょう。
スティーブン・キングの原作で映画になった『マングラー』。

B級なんでしょうが、自分は面白く見ました。
マングラーとは何かというと、クリーニング工場にある巨大プレス機です。
これが、ふとしたことで人間の血や胃薬の成分のベラドンナを吸い込んで

しまい、悪魔がとり憑いて人を食い始めるという破天荒な内容でした。
最後のほうで、マングラーは自分で動き出し暴れ狂います。

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『マニトウ』という映画もありましたね。『エクソシスト』の大ヒットで、
それ系の映画がたくさん作られたのですが、その中では一味違ってました。
ある女性の首の腫瘍が動き出し、中にはネイテイブ・アメリカンの悪霊、
ミスカマカスが入っている。この復活を阻止するため、

主人公らは善の精霊マニトウを集めて戦うのですが、
その中には、当時出はじめたばかりのコンピュータの精霊も入っていて、
B級はB級ですが、かなり斬新な内容になってました。
なんか作品を羅列して紹介するだけになってましまいました。

日本のホラーだと、小林泰三氏がこのあたりのテーマにこだわりを

持っており、機械と人間、物と心の違いを考えさせるような作品が

多いです。短編で『少女、あるいは自動人形』というのを書かれて

いますが、これは、人間とまったく変わらないほどの精巧な

オート・マタを、試験で見抜くことができるか、というお話でした。