『ハリー・ポッター』シリーズのアラゴク


今回はこのお題でいきます。みなさん、クモはお好きでしょうか?
たぶん、あまり好きだという方はいないんじゃないかと思います。
クモは節足動物に属していて、足8本のものが多く、
エビやカニなどと近い仲間なんです。

クモは益虫と言われていますよね。狩りをして、人間にとって有害な
ハエやカを食べてくれる。でも、嫌う人が多い。
これはやっぱり、外見が奇怪な姿をしているという点が大きいんでしょう。
小さな胴体に長い足。色も、黒と黄色のまだらや、
赤い色が入っているものもいて、たしかに気持ち悪いです。

クモを嫌う人が多いのは、人間の遺伝子にそれが刷り込まれているから
という説があります。人間から見て、変わった姿や派手な色をしている生物は
毒を持っていることが多く、長い人間の進化の歴史の中で、
そのことが遺伝情報として受け継がれるようになった・・・

 



でもこれ、クモを嫌う遺伝子が特定されているかというと、
そういうわけでもないんです。よくわからないというのが本当のところ。
ただ、人間から見て、体のつくりがあまりに違う生物には、
本能的な恐怖感を持ってしまうということはありえる気がします。
ゲジゲジやムカデなど、足の数が多い生物は嫌う人が多いですし、
逆に、足を持たないヘビも嫌われる。

さて、このような点から、クモは数多くのホラー映画や小説に登場してきました。
「クモ恐怖症 アラクノフォビア Arachnophobia」という言葉がありますが、
この元になったのはギリシア神話です。あるところにアラクネという女性がいて、
機織り、特にタペストリーの名手でした。アラクネはそのことを自慢し、
機織りを司る女神、アテナよりも自分のほうが上だとつねづね公言していました。

アテナとアラクネの争い


これを聞きつけたアテナは怒り、姿を現してアラクネと織物勝負を
することになります。アテナは自分が海神ポセイドンと戦って勝ったシーンを
タペストリーに織り込みましたが、アテナは好色な神々の醜態をわざと主題にして
織ったので、アテナはさらに激怒し、アラクネの頭を杖で打ちすえました。

それで自分の慢心を悟ったアラクネは、恥じて首をつって死んでしまいます。
アテナはそのことを聞き、アラクネの機織りの腕を惜しんで、
トリカブトの汁をふりかけて彼女を蜘蛛に転生させた・・・こんな話です。
古代ギリシアでは、もともとアラクネはクモを表す言葉でした。

さて、クモが出てくるホラーの最高傑作は、自分は、スティーブン・キングの
『IT』じゃないかと思います。ある町で、ときおり子どもをねらった

殺人事件が起き、そのときには、下水道を通って出てくる、

ピエロの姿をした怪人物が目撃される。
子どもの頃、そのピエロにおびえさせられたことのある主人公らが、
大人になって集まり、町に巣食う怪物との対決を迫られることになる。

『 I T 』


この正体が映画では巨大なクモの姿になってました。
日本だと、遠藤周作氏の『怪奇小説集』の中の短編、「蜘蛛」が印象深いです。
これには「くすね蜘蛛」という、人間の体に卵を産みつけるクモに
体を乗っ取られた?女が出てきます。まだこの他、クモをあつかった
作品はたくさんあるんですが、キリがないのでここらへんで。

さて、なんで今回、クモの話題にしたかというと、最近、科学ニュースを

見ていて、クモに関する話題が2つ取り上げられていたからです。
一つは、クモが空を飛ぶのは電場効果を利用しているという話で、
クモが糸を出して空を飛ぶ「バルーニング」は昔から知られていました。

空に散ってゆくクモの子


それが、微風すらない状況でも起きることが確認されたということで、
電場の力を利用しているのではないかという仮説が述べられていました。
これはつまり静電気力ということですね。下じきをこすって髪の毛の

上にかざせば、髪の毛がまい上がってひっつきますが、あの力です。

もう一つは、ハエトリグモの研究です。ハエトリグモは自分の体長の6倍の
高さまでジャンプすることができるんですが、その仕組みを調べている過程で、
ハエトリグモを合図に応じてジャンプするように調教することができた
というものです。これもなかなか面白いニュースですね。

あと、下の画像をごらんください。これはミズグモという種類で、
水面から空気を持ってきて、水中に泡のかたまりを作っています。
なぜこんなことをするのかというと、水中で長時間にわたって

狩りをするための空気呼吸する拠点となるものなんですね。

水中に泡の巣をつくるミズグモ


この他にも、クモの糸は太さに比してひじょうに強靭です。
天然のクモの糸は、重さあたりの強靭性が鋼鉄の340倍、
炭素繊維の15倍もあり、これを人工的に作り出すことができたら、
「夢の素材」になると言われています。
また、糸は粘り気があるのに、クモ自身はくっつかないですよね。

さてさて、ということで、このクモの不思議な力の数々を、
基礎研究で解明しようとしている企業は多いんです。
ですが、なかなか人工的には再現できない。それほど、自然の仕組みは
精巧かつ巧妙にできてるってことなんですね。では、今回はこのへんで。