アメリカのモーターホテル


今回はこのお題でいきます。自分は大学を出てすぐの頃に、
アメリカに2年半ほど住んでいたことがありまして、大きな声では
言えないんですが、このうちの大半の期間が不法滞在でした。
いた場所は都会ではなく、中西部の片田舎の人口7千人くらいの町。

そこは食事や就寝の際に神様に祈りを捧げたりする人の多い、
実に保守的な社会で、日本人だからということで差別された
経験はそれほど多くはなかったですが、プロテスタント系のキリスト教徒
ではないため(地域の教会とかかわりがないため)、
不都合だったことはいろいろとありました。

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アメリカというと、日本にはニューヨークやロサンゼルスなどの大都会の
話題が伝わってくることが多いですが、国土のほとんどが、
ハイウエイ沿いに小さな町が点々と連なる田舎の集合体、というのが
自分の印象です。そして車で長距離移動することが普通にあり、

州を越えると警察の管轄が違ってくる。(複数の州をまたぐ犯罪はFBIの管轄)
それと、家1軒1軒の敷地が広いんですね。つまり隣との距離が
かなりあって、何か事件が起きてもちょっくらとは助けが呼べない。
このあたりが、アメリカ的な都市伝説を生む母体になっていると感じました。

キーになっている点は「犯罪社会であること」  「車社会であること」
あともう一つつけ加えるなら「訴訟社会であること」じゃないかと思います。
アメリカの都市伝説で、幽霊の話は少ないです。
現実の殺人鬼のものが多いですよね。例えば、「後部座席の殺人鬼」
という有名な話があって、ご存知の方も多いでしょう。



「女性が暗い道を車で走っていると、後ろから一台の車がついてきた。
最初は気にも留めなかったが、しばらくすると後ろの車がパッシングを
しだした。女性は怖くなり家に着くなりあわてて逃げ込んだ。
だが後ろの車は彼女の家まで着くと男性が降りてきて
家の中にいる彼女に「鍵を閉めて警察に連絡しろ!!」と叫んだ。

警察が到着し彼女は事情を知ることになった。彼女の車の
後部座席には「肉切り包丁を持った殺人鬼が潜んでいた」のだった。
後ろの車の男性は後部座席にいるこの殺人鬼の存在に気づき、
パッシングで合図して危険を知らせようとしたのだ。」


この変形として、ガソリンスタンド(gas station)バージョンもあります。
女性が給油にガソリンスタンドに入ると、店員が手を引っぱって
無理やり建物の中に連れ込み、さらにドアの鍵をかけてしまう。
女性はその店員に襲われると思ったが、店員は、
「あなたの車の後部座席にナイフを持った男がいた。今すぐ通報する!」

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アメリカの人口10万人あたりの殺人件数は4.88件。
日本は0.31件ですから、犯罪が他人事ではないものとして切実に
感じられるのも無理はないと思います。(ちなみに件数世界1位は、
エルサルバドルの108.63・・・どういう数字だこれ!)

あと、訴訟社会というのは「猫を電子レンジに入れて爆発」のような話で、
おばあさんが濡れてしまった猫を乾かそうと、
電子レンジに入れたら爆発して死んだ。ばあさんは
弁護士に勧められ、家電会社を裁判に訴え巨額の賠償金をもらった。

それ以後、電子レンジの注意書きに「生きた猫を入れないでください」
という項目が加わった・・・これ、でも、どうやら嘘みたいですね。
ただ、マクドナルドで自分でコーヒーをこぼして火傷し、
高額の賠償金を受けとった話などは事実です。

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さて、幽霊の都市伝説がほとんどない(宇宙人や怪物的なものはある)

アメリカで、これは異質だなと思うのは「消えるヒッチハイカー」という話。
「ある男が車で走っている途中、若い女性のヒッチハイカーを拾った。
男は女性を後部座席に乗せ、目的地に連れていってやることにした。
目的地である一軒の家の前に着くと男は後部座席を振り返る。

するとそこにいるはずの女性の姿は消えていた。
気になって家の呼び鈴を押し、中から現れた男性に事情を説明すると、
男性は悲しそうな顔で、それは◯年前に亡くなったうちの娘だ。と言った。」

この後に「家に娘を乗せてきたのは君で◯人目だ」というのが
つけ加えられる場合もあります。

自分は、この話はアメリカ的ではないとずっと感じていたんですが、
話の出所に関して二つの説があるようです。一つは、
「インディアンの花嫁」というネイティブ・アメリカンの伝承が
元になっているという説。行方不明になった花嫁が、
幽霊になって馬に乗せてもらい家族の元へ帰るという話です。



二つめは、なんと日本由来であるとする説。『諸国百物語』という、
江戸時代の怪談本にある、主人に殺された下女の幽霊が
馬に乗ってきて消え、さらに主人に祟りをなすという話が、
明治時代に翻訳されてアメリカに伝わり、

「幽霊が人に祟る」という話はキリスト教国であるアメリカに新鮮な驚きを与え、
「消えるヒッチハイカー」に変形してアメリカ全土に広まったという説です。
実際、『リング』や『呪怨』などのジャパニーズ・ホラーで、死者が生者を呪う、
祟るという考え方を初めて知ったアメリカ人は多いんです。

さてさて、これはどちらが元ネタと特定するのは無理そうですが、
ネイティブ・アメリカンも江戸時代の日本人もキリスト教ではなく、
死者の魂が神様に管理されているという概念を持たなかったので、
どちらでもありえそうに思いますね。

ブラッディ・メアリー