今回は、自分のところに日々集まってくる怪異体験談の中から、
「霊が見える」ことについての話をご紹介したいと思います。
ところで、霊などが見えることを「霊能力」と言ったりしますが、
これは生まれつきのものなんでしょうか。人間の肉体に「霊を見る」
ための感覚器のようなものがあるとしたら、それは遺伝子解析で
わかるはずです。現在、目や髪の色を決める遺伝子、知能や
運動神経に関係した遺伝子などが、どんどん見つかってますよね。
それとも、霊が見えるかどうかは遺伝子とは関係なく、「魂」に
よることなんでしょうか。あと、修業によって見えるようになるとも
言いますし、逆に齢を重ねると見えなくなるという話もあります。
また、頭を打ったのがきっかけで見えるようになったケースも・・・

市立病院勤務 看護師Gさんの話
この方は、今は珍しくなくなった男性看護師をされています。
知人の紹介で、東京都内の喫茶店でお話をうかがいました。
「そうですね、自分が「見える」と気がついたのは、看護大学に
入学してからです、高校卒業後ってことですね」
「それまではまったく見えなかった?」 「いえ、たぶんそうじゃないと
思うんです。見る機会がなかった、あるいは見てもそれが
霊だとは気がつかなかったんだと思います」 「どういうこと?」
「高校まではチャリ通だったのが、看護大学に通うには電車通学を
しなきゃいけないので、駅を利用しますよね」 「それが?」
「駅のホームって、飛び込み自殺がありますよね」 「ああ」
「その人たちが見えるんです」 「うーん、自殺者だから見えるって

ことですか」 「そうだと思います。自然死やふつうの事故死で
亡くなった人を見たことは1度もありません。ほら、僕は大きな病院の
入院病棟に勤務してますから、ひと月に何人もの患者さんが亡くなって、
中には臨終に立ち会う場合もあります。そういった患者さんの中には、
小さいお子さんを遺してたり、やり残した仕事があって、
最後まで死になくない、生きたいって言われる方もおられるんですが、
霊になって現れたことはありません」 「この世への未練は関係ないと?」
「そうじゃないかと思います」 「どんなふうに見えるんです?」
「山手線の○○駅ってありますでしょ。自殺者が多いって話題になる」
「ああ、自分もたまたま現場に遭遇したことがあります」
「あそこの○番ホームだと、今は50体くらいの霊がいますね」

「どこに見えるんですか?」 「それがね、ホームの突端のところ、
線路の上3mくらいの空中に、みなさん整然と並んでおられて」
「うーん、鉄道自殺だと、大きく跳ね飛ばされたり、あるいは車輪の
下に巻き込まれたりと、亡くなる場所というか、位置が違うと思うんですが」
「そういうこととは関係なく、同じ場所に浮かんでるんです。
最初は怖かったんですが、毎日見てればだんだん慣れてきますよね。
それで、よく観察してみたんです。そしたら、みなさん、
同じ方角を向いてるんですよ」 「ほう」 「西ですね」
「それは興味深い話ですね。仏教では西方浄土って言いますけど、関係が
あるんでしょうか?」 「わからないですが、東京だとお寺とほとんど
関係のない生活をしてる人が多いですよね」 「その霊たちはどんな

様子なんです? 飛び込み自殺だと、体が細切れになるって話もありますが」
「いや、みなさんケガ一つしてないです。ちゃんと服も着てます。
たぶん、その自殺当日の服装なんだと思います。男性のサラリーマンに
見える方が多いですね。40代後半から50代前半くらいの。
リストラとか、そうじゃなくても人生に疲れてくる年代なんでしょうか。
女の人もいますけど、少ないです」 「その人たちは動かないんですか?」
「まったく動かないです。宙空に貼りついたようになってますね。
これははっきりはわからないんですが、移動できないんだろうと思います。
あと、霊どうしで話をしたりもしません」 「不思議ですね、何のために
そこにいるんでしょう?」 「わからないですが、ネットでいろいろ調べた
ところでは、一種の罰と書いてあるホームページがありましたね」

「罰?」 「はい、何でも自殺は霊の世界の法則で禁じられているため、
浄化されるっていうのか、別の世界へ旅立つのか、そのあたりは僕には
わかりませんが、その時期が極端に遅くなるんだって出てました」
「ああ、そういうことを書いてるスピリチュアル系のサイトはありますね。
霊の顔の表情とかはどうです」 「徹底した無表情です。苦しんでるとか、
涙を流してるとか、そういうことはありません」
「なるほどねえ、ただ自殺の罪が赦されるのを待ってるってことなのかな。
先ほど、50体くらいの霊が見えるって言われましたが、
いなくなってることもあるんですか」 「僕がその駅を利用するように
なってから6年くらいたつんですが、その場所から消えた霊が
4体あると思います。まあでも、新たな自殺者のほうが多いので、

増えるいっぽうなんですけど」 「ははあ、その消えた霊は古いからって
ことなんでしょうか?」 「わかりません。そのあたりは調べれば
わかるのかもしれませんが、やってないです」 「いや、貴重なお話ですねえ。
あ、そうだ、Gさん以外にそれらの霊が見えるって人に会われたことは?」
「そういう人はいると思います。朝、僕と同じ時間の電車に乗る年配の女性が、
霊たちがいるほうを見てることが多いんです。
たぶん見えてるんじゃないかと」 「話をしたことはないんですね」
「はい。ことがことですから、違ってたら大変だし。あとね、一度だけ、
袈裟を着たお坊さんが、霊の集団に向かって拝んでるのを見たこともあります」
「ははあ」 「それとね、電車の運転士にも見える人がいるのかもしれません。
ほら、山手線の電車って前面の窓が大きいのが多いでしょう。

たまに、顔をしかめながら霊の集団に突っ込んでいく運転士さんが見える
こともあるんです」 「うわ、それは嫌でしょうね。いや、どうも、
本日はありがとうございました。鉄道以外で自殺者の霊を見たことは
ないんですよね」 「それが・・・じつは、僕が勤務してる病院にも
一体だけいるんです」 「それも自殺者?」 「おそらくそうだと思いますが、
はっきりはしません、昔は病院での自殺は多かったって聞きます。末期癌を
告知された人が、高階の窓から飛び降りるなどのことがあったみたいですが、
今は病院内でというのはまず聞かないです。告知や余命宣告には気を遣いますし、
心療内科や精神科の先生が医療チームに加わってます。警備員も常駐してるし、
何よりも、病院の窓は一定範囲にしか開かなくなりました」
「じゃあ、だいぶ古い自殺者ってことですね」 「ええ」

「どこに見えるんです?」 「診療棟の2階の窓の外です」 「かなりの高さの
とこにいるんですね。どうしてそこなんでしょう?」
「これは推測ですが、その霊がいる窓の内側は呼吸器内科の診察室に
なってるんです。改築前も同じだったそうですが、たぶんそこで
病名の宣告か、余命の告知を受けた人なんじゃないかと」
「ははあ」 「その霊、駅で見てる霊たちとは違って動けるんです。
ときどき、窓に近寄ってぴったりガラスに顔をくっつけてることがあります」
「うーん」 「その霊が窓に近づいてるのは、決まって、今は内科部長になってる
Y先生の診察のときなんです。僕ね、1回だけ、建物の中からその霊の顔を
見たことがあるんですけど、ものすごい形相でY先生の背中を睨んでました。
事情はわかりませんが、怨霊とかになっているのかもしれません」 

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