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今回はこういうお題でいきます。また、わけのわからない話に
なりそうなので、スルーされたほうがいいかもしれません。
みなさんは小学生のときに、「時間」X「速度」=「距離」
というのを勉強されたと思います。あの応用問題って、
けっこう難しいんですよね。大人でも間違える人がいます。

例えばこういうやつです。「弟が分速80mの速さで駅に向かって
家を出発しました。それから10分後に、兄が分速100mの速さで
駅に向かって家を出発しました。兄は出発して何分後に弟に
追いつくことができますか?」これは、下図の公式を使って求める
ことができますよね。暗記されたという方もおられると思います。

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この問題は、出発点から駅までの距離が決められてないので
まだ簡単なほうです。中学校になれば方程式を勉強しますので、
距離が決まっていて、兄が逆方向からやってくるような問題も
出てきます。これで数学嫌いになったという人も
多いんじゃないかという気がしますね。

さて、今回の話も基本的にはこのことが関係しています。
「時間」=「距離」÷「速度」で、時間は速度の逆数になっています。
みなさんは、「ハッブル=ルメートルの法則」をご存知だと思います。
少し前までは、「ハッブルの法則」と言われていたんですが、

最近、宇宙の膨張について、ルメートルがハッブルの2年前に
論文を提出していたことが判明し、上記のように改められました。
ルメートルの業績が再評価されたわけですが、ここにはじつに
興味深いエピソードがあります。そのことは過去記事で
書いてますので、よろしければ参照されてください。

ジョルジュ・ルメートル
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エドウィン・ハッブルは、当時世界最大の2.5m望遠鏡のある
フッカー天文台に勤務していましたが、1929年、銀河の中にある
変光星を観測し、銀河の赤方偏移と距離の間の経験則を
定式化しました。宇宙膨張の発見です。これがもとになって、
その後ビッグバン理論が構築されていったんですね。

その意味はおわかりだと思います。宇宙が膨張しているのだとすれば、
時間を前に遡っていけば、どんどん宇宙は小さくなっていき、
やがて始まりにいきつくことになります。それは、
無から宇宙が生じた特異点です。宇宙膨張の速度がわかれば、
この宇宙ができてどのくらいかという年齢もわかるはずですよね。

「v=Ho d」の式で、v を天体がわれわれから遠ざかる速さ(後退速度)、
d をわれわれからその天体までの距離とすると、比例定数Hoが
「ハッブル定数」となります。後退速度については、
銀河からの光のスペクトルの赤方偏移を調べることによって
ほぼ正確に決めることができますが、

ハッブルの法則
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その銀河までの距離を正確に測定することは難しいんですね。
現在のところ、様々な算出方法を総合して割り出すしかないので
かなりの誤差があると考えられます。そのため、
現在のハッブル定数はだいたい、Ho=70.0km/s/Mpc、
宇宙の年齢は138億年程度とみられています。

さて、2011年度のノーベル物理学賞は、アメリカの宇宙物理学者
3名が受賞しました。その業績は「宇宙膨張の加速」の発見です。
彼らは当初、膨張速度は減速しているだろうという仮説を立てました。
宇宙にはたくさんの物質があり、その重力によって宇宙の中心に向かって
引っぱられ、衰えるだろうと考えるのは自然です。ところが結果は真逆。

ノーベル物理学賞の3氏
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これは衝撃的でした。宇宙論は再考を迫られ、頭をしぼって
考え出されたのが「ダークエネルギー」です。この宇宙には
物体同士を遠ざけ、空間を広げる斥力(引力とは逆の力)が存在し、
宇宙の全エネルギーの約4分の3をしめているとする説が
主流になってきています。ダークエネルギーの候補としては、

「真空のエネルギー」があげられていますが、今回はふれません。
さて、ここで最初の話に戻って、「宇宙の加速膨張」は
観測事実ですが、その原因として、ダークエネルギーではなく、
「時間の減速」を主張する科学者たちがいるんですね。

これまで、時間の速さは変数としては考えられてきませんでした。
つねに同じに流れているのは自明であるとされたんです。
ですが、宇宙の始まりのときの時間の流れる速さを t として、
現在はそれが、例えば 0.8t とかになっているとしたら・・・

ペイン・バスク大学のホセ・セノヴィーリャ教授とサラマンカ大学の
マルク・マルス教授は、超弦理論を用いて、時間が減速している
という計算結果を発表しました。うーん、現在は精密な原子時計なども
ありますが、宇宙全体の時間がそうなるのであれば、
比較するものがないので、時間の遅れを計測するのは不可能ですね。

宇宙の未来は?


また、人間の意識が時間の減速を感知することもできない気が
しますが、そのあたりのことは、自分の頭では理解を超えています。
みなさんは、どう思われますでしょうか???
彼らの論によれば、時間が減速し続けて停止した場合、
写真や止まった映画のように、すべてが凍りつくとされます。

うーん、時間が、あるとき突然に空間と同時に始まったの確かです。
とすれば、だんだん停止に向かう、あるいは急にストップする、
そういうことも考えられないわけではないですよね。
SF小説では、加速する時間や逆行する時間も出てきますし。

さてさて、自分は以前から書いてるんですが、計算が成り立つことは
起こりえる可能性があるんです。ブラックホールも、当初は計算上の
解と考えられていたのが、実在の証拠がいくつも見つかりました。
結論としては、宇宙というのは人間の常識では測りえないという
ことになりますでしょうかね。では、今回はこのへんで。

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