yjsyjr (2)

今回はこういうお題になります。これもかなり地味な内容の
話なんですが、最後は現代中国批判になるかもしれません。
さて、みなさんはキリンビールはお好きでしょうか。自分は
大好きです。特にビンのキリンは味が濃く、苦味が強くていい
ですね。ドライな味よりも、ビールらしいビールという感じがします。

さて、このキリンビールの商標になっている麒麟ですが、
中国では古代から霊獣とされてきました。その起源はかなり古く、
戦国時代までは確実にさかのぼれるようです。一般的に、
中国では「四霊」と言いまして、「麒麟、鳳凰、霊亀、応竜」が
これにあたります。そのトップにくるのが麒麟。

鳳凰
yjsyjr (4)

簡単に説明すると、鳳凰はすべての鳥を産んだ空の王、
霊亀はかなり大きく、背中に蓬莱山という仙人が住む山を
背負っています。応竜は竜の一種ですが、最初はマムシで、
それが蛟(みずち)になり、角竜になりというふうに
長い年月をかけてどんどん出世していきます。

麒麟は、「形は鹿に似て大きく背丈は5mあり、顔は龍に似て、
牛の尾と馬の蹄をもち、一角があって、背毛は五色に彩られ、
毛は黄色く、身体には鱗がある」とWikiに出てきます。
麒麟もすべての陸上の獣の祖とされていて、鳳凰(あるいはその
子どもの鸞鳥)と対の形で描かれることも多いですね。

霊亀
yjsyjr (8)

また、麒麟はひじょうに高い徳を持った動物で、他の動物を
けっして殺さず、その肉も食べない。さらに植物にさえ気を使って、
歩くときは草の生えていない場所を歩くと言われます。
麒麟は一本角があると考えられていますが、その角も、
他の獣を傷つけないように肉で覆われているとされます。

つまり、人間の帝王以上の徳を持った生き物なわけです。
それと、「麒麟児」という言葉がありますよね。幼い頃から才能
あふれる人物のことを言いますが、これは麒麟が人間に優れた
子どもを送り届けてくれるところからきているということです。

応竜
yjsyjr (5)

あと、アフリカのサバンナにいる実在の動物、キリン(ジラフ)
との関係ですが、さすがに古代の中国人がキリンの噂を聞いて、
麒麟を考え出したということではありません。首の長さがだいぶ
違いますよね。逆に、明代、中国にアフリカのキリンが
紹介されたとき、古の霊獣の名がとられたと考えるべきでしょう。

麒麟にはまた、「瑞獣」としての性格があります。瑞獣とは、
ときの帝王が善政を敷いていると、天がそれを褒めて地上に
姿を現すとされる動物で、中国の天命思想が関係してるんですね。
中国には元号制度がありましたが、麒麟が捕獲されると改元して、
新しい元号には「狩」の字をつけるという習慣でした。

キリン


さて、次に孔子の話に移ります。みなさんご存知のとおり、
孔子は儒家の祖であり、儒教は漢の時代ころから中国では国教化
されて尊ばれました。ただ、孔子の生きていた時代には、
不遇の人という評価ができると思います。

魯の国の貧しい家庭に生まれ、下級役人から出発して52歳で
大司寇(司法長官)になりますが、朝廷内での対立に巻き込まれて
官を辞し、以後、10数年に渡る旅に出て各国を遊説して回ります。
しかし、どこにも受け入れられず、失意のまま魯に戻り、
以後は著作に専念することになります。

孔子 身長216cmだったという話があります
yjsyjr (6)

このとき、魯の歴史をまとめた『春秋』(現存しない)を書いて
いたんですが、ある事件をきかっけにして一切の著述をやめて
しまいます。で、その事件に麒麟が関係してるんですね。
「獲麟 かくりん」あるいは四字熟語で「西狩獲麟 せいしゅかくりん」
という故事成語があります。日本ではあまりなじみがないですが、

「著述を中断すること、物事の終わり」といった意味で使われます。
魯の国の西方にある野で狩りが行われた際、魯の重臣の家来が、
見たことのない一本角の気味の悪い生物を捕えたが、人々はそれを
狩場の管理人に押しつけて帰ってしまいます。孔子は後にその
動物を見て、伝説の麒麟であることに気がつきます。

「獲麟」の故事
yjsyjr (1)

麒麟が獲えられるのは、世の中が太平になり、帝王の徳が高い
しるしで、本来なら国をあげて喜ぶべきことなのに、人々はそれが
麒麟であることにも気づかず、気味が悪いと言って捨てて
しまったんです。孔子は完全にこの世に失望し、『春秋』を
書くのを中断。何をする気力もなくなって死を迎えます。

さて、ここでまた少し話を変えて、現代の中国では孔子は批判の
対象でした。(最近はまた再評価されてきています)文化大革命時
には、孔子および儒教は、党幹部の林彪と重ねるようにして批判され、
孔子の像も破壊されました。この理由はおわかりだと思います。

文化大革命で燃やされる神仏像
yjsyjr (3)

儒教は、天命を受けた帝王が仁を持って国を治める徳治主義を
唱えましたが、共産主義中国にあって、建前上は労働者である人民が
国の主役のはずです。孔子が説く徳治主義は階級制度を肯定し、
封建主義がはびこる原因となったとされ、また上記の林彪は
現代に孔子の教えを復活させようとした人間、と批判されたんです。

 

しかし、最近になって中国でも、国家にバックボーンとなるような

思想や宗教がなく、人民が拝金主義に陥っていることに気がついたようで、

儒教は再評価されるようになってきました。

さてさて、中国のことを書くとやはり辛口になってしまいます。
現代の中国こそ、ガチガチの序列主義のピラミッドじゃないですかね。
そしてその頂点に立つ習近平氏は、まさに現代の皇帝のようなもの
ですが、はたして仁徳が備わっているんでしょうか。まだ儒教時代の
ほうがマシだったような気もします。では、今回はこのへんで。

権力闘争に打ち勝ち、現代の皇帝となった習近平氏
yjsyjr (7)