今回はこういうお題について考えてみたいと思います。
『恐怖新聞』というのは、オカルトフアンの方ならご存知でしょうが、
つのだじろう氏により「週刊少年チャンピオン」誌上に連載された
ホラー漫画です。連載期間が1973年~75年ということで、

今年からすれば40年以上も昔ということになります。
さすがに自分もリアルタイムで知っているわけではありませんが、
オカルトフアンの間では今でもときおり話題に上ることがあります。
いちおう説明すると、「ある晩、主人公である中学生

鬼形 礼の元に、午前零時、突然「恐怖新聞」と書かれた新聞が
届けられる。その新聞には、霊魂の存在を実証する記事、または未来の
出来事などが書かれていた。翌日、その記事は現実となってしまう。
そして、級友から「恐怖新聞」にまつわる恐ろしい噂を耳にする。



それは、「恐怖新聞」は1日読むごとに百日ずつ寿命が縮まるというもの。
その日から鬼形礼の恐怖の日々が始まった・・・」というような内容です。
とここまで書くと、今回は『恐怖新聞』の評論めいた話かと思われるでしょうが、
そうではなく「未来の新聞が読めるか」というのがテーマです。

以前の記事でちらっと「現在から過去へ遡ることはできない」ということを
書きましたが、これは未来から現在へ情報を送るというのも同様です。
例えば、未来の新聞があって、そこに競馬の結果などが出ている。それを
手に入れて勝ち馬に賭けて大儲けする、などということはできないんですね。

未来の新聞


これは光速度が一定で、それよりも速いものはない、というところから
きています。何を使って説明すればわかりやすいか、あれこれ
考えたんですが、太陽の爆発、というのがいいようですね。もし太陽が
何らかの原因で爆発すれば、どう考えても地球も無事ではないでしょう。

で、感覚的には、太陽が爆発したと同時に地球も吹っ飛ぶような気が
しますが、じつはそうではありません。太陽からの光は、約8分かけて
地球に届きます。そして光よりも速いものはありません。つまり、
太陽の爆発によって生じた衝撃波や熱波、磁気嵐のようなものも

8分以上たたないと地球には到達することはできないんです。ですから、
太陽の爆発の影響によって地球が吹っ飛ぶのは、その8分後です。
そして、太陽が爆発して8分以内にそれを知ることは、現在の科学では
不可能というわけです。(話を単純化して考えています)

太陽の爆発
キャプチャqqqq

ところがもし、光より速い粒子があったとしたらどうでしょう。
太陽から地球まで1分で届く粒子があって、それによって爆発を
知ることができれば、7分間の猶予を得ることができ、その間に何らかの
対策を講じる(まあ無理でしょうが)ことができるかもしれません。

地球から見れば太陽は通常どおり輝いているのに、7分後には
爆発するという情報(あるいは1分前に爆発しているという情報)がくる。
相対性理論の言う、「同時が同時ではない」ということの好例ですし、
これが「未来から情報を得る」ということなんです。

すべての未来を知ることができるようにしたブッチ神父


このように光速よりも速い粒子をタキオンと言います。
タキオン自体は、特殊相対性理論から導き出されたもので、その存在は
式には反しません。しかしどうやら、現実には存在しないようです。
「タキオンの原理を利用した車の燃費が良くなる添加剤」的なものが、

これが提唱されたときにたくさん出てきましたが、
どれも眉唾の疑似科学的なものであると思われます。
タキオンがあれば未来からの情報を得ることができるのですが、
それは現状では残念ながら無理のようですね。

さて、相対性理論によれば未来に行くことは可能です。というよりも
みなさんは実際に未来への時間旅行を何度も体験しているはずです。
未来に行くためには、いろいろな方法がありますが、
さしあたっては「スピードの速い乗り物に乗る」というのが簡単でしょう。
もしみなさんが飛行機に乗れば、高速で移動しているため、

タキオン


飛行機内での時間の進み方は、ほんのわずかですが遅くなります。
逆に言えば、地上で静止して飛行機を見上げている人の時間は、
飛行機内から見ると速く流れています。そして飛行機から地上に降りると、
そこは飛行機に乗る前よりも少しだけ未来ということになるんです。
といっても、原子時計でごくごくわずかの時間ですので、

一生飛行機に乗り続けても、目に見えるような変化はありません。
タイムマシン、特に過去に遡るものの理論的な研究としては、
リチャード・ゴッドの宇宙ひも(超ひも理論とは関係なし)を利用した
ものや、キップ・ソーンのワームホールを使用するものが有名ですが、
どちらも現状では、非現実的な理論上のものです。



そもそも、宇宙ひもやワームホールが存在する根拠さえないんですから。
かのホーキング博士は、「時間順序保護仮説」というものを主張しました。
これは、過去への時間旅行が起こりそうになった場合、何らかの
量子的な効果が起こって、それが防がれてしまうだろうという仮説で、
きちんと数式化された理論というわけではないようです。

しかし、この世界は過去への時間旅行ができないような構造になっていて、
パラドックスを防いでいるというのは、直観的にありそうな感じがしますね。
ということで、科学的には未来から情報を得る、未来の新聞を読むのは
現状では不可能です。しかしながら、オカルトは科学ではありません。



さてさて、おそらく科学とはまた別の力が働いていると思われる、
「未来予知」というものがあります。どうなんでしょうねえ。
未来のことがわかってしまうのは、怖い気がします。もし数日後に
自分が不慮の事故で死んでしまうなんてことが判明してしまえば、
はたしてそれに耐えることができるかどうか。

それとも、知ることによって未来は変えることができるのか。
先のことがわからないからこそ、現在を幸せに生きることができる、
という面もあるのではないかという気がしますね。
では、今回はこのへんで。