今晩は、都内に住む主婦です。よろしくお願いします。
私と、2人の子どもたちに起きた出来事なんです。はい、子どもたちは、
上が息子で小学校4年生、下は娘で2歳になったばかりです。
ことの始まりは、今から考えれば、今年の1月のなかば頃ですね。
息子に「学校の工作で使うんだけど、家に紙袋ある?」って聞かれたことです。
でも、コンビニ袋はとっておいてあるけど、紙袋って今、あんまりないですよね。
私が化粧品を買ったときのデパートのがあったので、
「これでいい?」って息子に聞いたら、息子はそれを頭からかぶろうとして、
入りきらずに「これじゃ小さい」って言ったんです。
「え、何に使うの?」聞き返したら、「節分のときの鬼の面」
こういう答えでした。そういえば鬼の面は、私が子どものときも

作ったことがあるけど、それは輪ゴムで耳につける平面的なものでした。
「うーん、あんたの頭が入る大きさか、ちょっと待ってね」
あちこちの押し入れを探してみると、主人の母親が使ってた部屋に、
たくさん、大きめの紙袋を集めてヒモで束ねたのがあったんです。
はい、同居してた主人の母親は、下の子が生まれる前の年だから、
3年前に急な病気で亡くなってるんです。その部屋は整理しないままでした。
紙袋は、観光地のお土産のものが多かったですね。義母は旅行が趣味で、

国内ですけど、生前はあちこちの神社仏閣にちょくちょく出かけてました。

その袋を一枚、自分でかぶってみたら頭が入ったので、
やや小さめのを息子に渡したんです。え、どこの紙袋だったかって?
それが、何か絵が書いてあった気がしましたが、よく覚えてないんです。

それで、そのことはすっかり忘れてたんですけど、1月の終わり頃になって、
「学校で鬼の面作ってるよ」と言ったので、「ああ、もうすぐ節分なんだ」
と思い出したんです。うちでも節分は、まねごとですが、
毎年やってたんです。福豆を使う本格的なものではなく、
殻つきの落花生を各部屋を回って一つずつ、主人と息子が投げ入れるだけ。
それから齢の数だけ豆を食べます。まあ、どこのお宅でもそんなもの

ですよね。それから2日後です、夜、変な夢を見たんです。
暗い部屋の真ん中に籐椅子が置いてあり、そこに人が座ってる。
男か女かもわかりませんでした。というのは、その人、
体には青いガウン・・・ガウンと言うか、病院で手術のときとかに着るものに
似てました。そして顔には袋をかぶっていたからです。

袋には何か模様があるようにも思えましたが、あたりが暗くてはっきり

しませんでした。その人は、ただ籐椅子をゆらゆら揺らし続けている。
そんな夢だったんです。それで、夢ってふつう時間の経過ってわからないですよね。
ところが、その夢の中では、起きてるときと同じ感じで時間がたっていきました。
最初は怖かったんだけど、だんだん退屈になってきました。
「いつまでこんなの見てなくちゃならないのか」じりじりしながら

そう思ってたとき、唐突に目が覚めて、朝になっていたんです。そうですね、
私の感覚だと、2時間近くその場面を見ていた気がします。
最初に話したように、私は専業主婦で、朝に主人と息子を送り出すと
ほっと一息つけるんです。娘はまだ幼稚園前でいっしょにいますが、
おとなしい、手がかからない子で、少しずつ言葉を話し始めたところでした。

午前中に掃除と洗濯をして、午後は娘を連れて買い物に行くことが多かったん

ですが、出ようとした矢先、スマホに連絡が入ったんです。学校からでした。
「○○さん(息子のことです)が急に倒れたため、△△病院に搬送します。
保険証を持ってすぐ来てください」こういう内容でした。
驚いて、娘を連れてすぐに車で向かいました。
病院の救急に着くと、小学校の担任と養護の先生がいてくださり、
息子は検査中でした。先生方の話では、学級で鬼の面づくりをしてる最中、
息子が急に、頭に袋をかぶったまま立ち上がり、
踊るように手足をばたつかせてから倒れ、頭を床に強く打った。
意識はあったが、頭部のことなのでこうやって病院に運んだ・・・
こんな話だったんです。事情はよくわからなかったんですが、

とりあえず先生方にお礼を申し上げました。30分ほどで息子の検査は終わり、
本人はケロッとした様子でした。頭部CTを撮ったんですが、特に異常はなし。
床に打った頬の部分が少し青くなってましたが、病院の先生からは、
「まあ顔だし、かぶれるといけないから、湿布などは貼らないほうがいいでしょう。
1週間ほどでアザはとれますよ」こういうお話でした。息子に「痛い?」と聞くと、
「少し」とだけ答えました。そのまま息子を家に連れて戻ったんですが、
話を聞いても要領を得ず、ただ「自分で作ってる面の目鼻に穴を開けるところを
合わせようとかぶってみたら、急に踊りたくなって、
立って踊ってるうちに倒れちゃった」こんな内容だったんです。
まあ私としては、いじめやけんかがからんだことではなかったので、
それはよかったんですが・・・翌日ですね。

大事を取って息子を休ませようかとも思ったんですが、息子が、

「もう治ったから学校に行く」と言って聞かず、そのまま送り出しました。
それで息子はいつもの時間に帰ってきまして、「お母さん、これ」
そう言って、ランドセルから折りたたんだ紙袋を出して広げました。
「僕が作った鬼だよ」・・・紙袋は全体が真っ赤に塗られていて、
目や鼻、口の穴が空いた部分のまわりが紫色に縁どられてました。
そして赤の地の上に、ぐるぐると黒の渦巻き模様・・・
とても子どもが作ったようには見えませんでした。息子は得意そうに、
「先生にほめられたんだよ。ものすごく怖くできてるって」そう言いました。
たしかに、怖いし、見てるだけで背筋がぞくぞくするような気がしたんです。
「これ鬼なんでしょ。ツノはないの?」やっとそう聞くと、

息子は考え込んで、「みんなツノをつけてたけど、僕はないほうがいいように
思ったんだよ。そのほうが本物らしいし」 「本物らしいって?」
「・・・わかんないけど」息子がどうしてもと言うので、気味が悪かったんですが、

そのお面はリビングのテレビ台の横に立てておきました。
夕方になって、主人が帰ってくると、息子が「これ、僕が作ったんだよ」
その面を見せ、主人も「へええ、迫力があるなあ。先生が手伝ってくれたんだろ」
そう言うと、息子は「違うよ」とふくれました。主人は続けて、
「あした節分だから、お父さんがこれかぶって鬼をやってやるよ。
でも入るかなあ」こんなことを言ってました。その日の夜のことなんですが・・・
ここからの内容は、ただの夢なのかもしれません。怖いことなんか何もなくて、
私が全部心の中でつくりあげたことなのかもしれないんです。

そのことをお断りしてきます。夜中に目を覚ましました。時計を見ると
3時過ぎでした。うちは寝室に私と主人が寝て、下の子のベビーベッドも
置いてあります。息子は一人で2階の部屋に寝てるんです。
そのときは夢は見なかったんですが、すごくのどが乾いてました。それで、
何か飲み物を飲もうと、そっと起き出してキッチンに行ったんです。
冷蔵庫から麦茶のペットボトルを出してコップについだとき、リビングのほうで
カサッという音がしました。ふり返ってそっちを見ると、
テレビ台の前に人が立ってたんです。前に夢で見た、袋をかぶった人です。
「え!?」声が出ませんでした。体も動かない。人って・・・
本当に怖い思いをしたとき、固まって何もできなくなってしまうんですね。
その人はゆっくり前かがみになり、自分が頭にかぶっていた袋をぬいだんです。

真っ黒い頭がありました。いえ、頭と言っていいのかどうか。黒い雲の

うずまきみたいなものだったんです。「見ぃつけた・・・」そう言ったと思います。
それから両手で、息子の作った鬼の面をかかげて自分の頭にかぶせたんです。
ここでどうにか声が出ました。立ったまま大きな悲鳴をあげて叫び続け、ややあって

「何だ、どうした?!」主人が出てきて部屋の照明をつけてくれたんです。
リビングには誰もおらず、面の袋がカーペットの上に落ちてました。
私は主人に何をどう説明していいかわからず、すごく困ってしまいました。
翌朝です。落ちていた面は主人がテレビ台に戻してたんですが、色や模様は

同じなのに、前日に見た鬼気迫るような感じはまったくなくなってました。子どもが

塗りたくったヘタクソなお面。その夜、豆まきをしました。主人が鬼になり、
面の袋に頭が入らないのでセロテープで貼りつけて。何事も起きませんでした。