dddfg (2)

今回はこういうお題でいきます。オカルト論です。
さて、履き物のオカルトというと、みなさんは何を連想される
でしょうか。シンデレラのガラスの靴でしょうか。それとも
ギリシア神話のペルセウスが得た空を飛ぶことができるサンダル?

自分は、童話ですが、アンデルセンが書いた『赤い靴』が
たいへん怖かった記憶があります。ご存じの方も多いでしょうが、
粗筋を書くと、貧しい少女カーレンは病気の母親と2人で
暮らしていました。ある日、靴をはいてない彼女が足にケガをし、
親切な靴屋のおかみさんに助けられ、赤い靴を作ってもらいます。

翼のついたサンダルをはくペルセウス
dddfg (4)

その直後、カーレンの母親は死んでしまい、孤児となったカーレンは
母親の葬儀に赤い靴を履いて出ます。それをある老婦人にとがめられ、
カーレンはその老婦人の養子となります。カーレンは、町一番の
美しい娘に成長し、ある日、靴屋で美しい赤い靴を見つけた
カーレンは、老婦人の目を盗んで買ってしまいます。

さらに教会にもその赤い靴をはいて行き、老婦人にたしなめられますが、
カーレンは無視、それだけでなく、老婦人が病気になって死の床に
ついていても、その靴で舞踏会に行ってしまうんですね。
看病されなかった恩人の老婦人は亡くなり、舞踏会ではカーレンの踊り
が止まらなくなり、靴を脱ごうとしても脱げません。

dddfg (8)

カーレンは休むことも眠ることもできず踊りい続け、老婦人の葬儀にも
出席できませんでした。呪いが発生したんですね。どうすることもできず、
カーレンは首斬り役人に頼んで両足首を切断してもらいます。すると、
両足と赤い靴は、踊りながら森の中へと去っていった・・・

赤い靴は虚栄と高慢、忘恩の象徴ということなんでしょう。この後、
カーレンは懺悔をするために、不自由な足で協会に行こうとすると、
どこからともなく赤い靴が現れてカーレンの前で踊り、中に入れません。
最終的に呪いはとけますが、ハッピーエンドとは言いがたい結末です。
アンデルセンの童話は怖くて残酷なものも多いですよね。

dddfg (5)

さて、ここでガラリと話が変わり、日本のことを書いていきます。
日本の古代、貴族など木製の沓(くつ)をはいていましたが、
庶民は裸足のことが多かったんです。万葉集にこんな歌があります。
「信濃路は 今の墾道(はりみち) 刈株に 足踏ましむな 
 沓はけ わが背」これは東歌、東国地方の庶民の歌です。

信濃路は新たに拓かれた道で、草の切り株が多いから、足を
ケガしないよう沓をはいてください、わが夫よ。 だいたい
こんな意味ですか。これを見るかぎり、特別な場合は沓を
はいていたようです。また、平安時代の絵巻では、京都の
大路をゆく庶民の半数以上が、草鞋のようなのをはいてます。

dddfg (6)

『日本書紀』の後半のトピックとして、中大兄皇子と中臣鎌足が
蘇我入鹿を誅殺した乙巳の変、そして天智天皇の子、
大友皇子と大海人皇子が争った壬申の乱。大海人皇子は
後の天武天皇ですが、この物語には沓が深く関わっています。

まず、中大兄皇子と中臣鎌足の出会い。蹴鞠をしていた
中大兄皇子は、鞠を強く蹴ったときに自分がはいていた沓を
飛ばしてしまい、それを拾ったのが鎌足です。
2人は親密になり、多武峰(とうのみね)に登り、
山中で蘇我氏排除のための密談を行います。

木沓
dddfg (3)

また、平安時代の歴史書『扶桑略記』には、 天智天皇は671年、
病気となって譲位の意志を示した。天皇は馬に乗って山科へ向かい、
林の中に入って姿を消し、その行方はわからず、ただ沓だけが
落ちていたのを、陵におさめることになった、と書かれています。

この記述を根拠として、小説家の井沢元彦氏は『逆説の日本史』
の中で、天智天皇と天武天皇は同母兄弟ではなく、
天智天皇は天武天皇に暗殺されたという説を展開しています。
ただ、『扶桑略記』は飛鳥時代からは、はるか後代に書かれた
書であり、どこまで信用できるかは疑わしいです。

空から落ちる久米仙人
dddfg (7)

また、高名な人物が沓だけを地上に残して姿を消すというのは、
中国に古くからある「羽化登仙」伝説ですよね。
その人物を死んだことにしたくないので、仙人となって天に
登っていったというわけです。そのことは井沢氏も十分
知ってるはずなのに、書いていません。

さてさて、あと靴と言えば、最初に出した「シンデレラ」の話は
やはり外すわけにはいきません。この原型は、古代エジプト
からある、きわめて古いものなんです。ただし、シャルル・ペローが
採取した民話は、機械時計が発明されて以後のものなので、お城の
時計が午前0時となり魔法がとけるエピソードが加わっています。

dddfg (1)

時計のエピソードを後づけしたため、カボチャの馬車やネズミの馬、
シンデレラのドレスは元に戻ってしまうのに、ガラスの靴だけは
そのままという、かなり無理のある展開となっていて、
映画化したディズニーが、しかたなく苦しい説明をしていますね。

あと、シンデレラの意地悪な姉たちはガラスの靴に足を合わせようと
かかとやつま先を切り落とします。また「白雪姫」でも、
魔法使いの継母は、最後に炭火で真っ赤に焼いた鉄靴をはかされる
刑を受け、踊り狂い、やがて息が絶えて倒れます。西洋民話では、
靴は呪力を持った怖い存在だったようです。では、今回はこのへんで。