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ダイダラボッチ

今回はこういうお題でいきます。オカルト論です。
さて、みなさんは、貝にオカルトなんてあるのかと思われるかも
しれません。自分もあまり自信はないです。ただ、古代においては
人間と貝の関わりは、たいへんに深かったんです。

みなさんは「貝塚」という言葉をご存知でしょう。貝類を常食できる
海辺近くに住む古代の人が、日々ごみとして大量に出る貝殻を、
他の様々な生活廃棄物とともに 長年にわたって捨て続けた場所のことで、
まあゴミ捨て場なんですが、近年、その一部は貝の加工工場であった
とする説も出されています。

エドワード・S・モース博士
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日本だと、東京の大森貝塚が有名で、歴史教科書にも載ってますね。
縄文後期から末期の遺跡と考えられ、明治維新の後、政府のお雇い
外国人として来日したアメリカの動物学者エドワード・S・モースが
横浜ー新橋間の鉄道の車窓から発見したものです。ということは、
地表に露出してたんでしょうね。

でも、一般の人には遺跡とは認識されていなかった。というか、
当時の日本には、その手の遺跡が文化財であること、また文化財は
保護しなければならないという概念がなかったんです。
古代の天皇陵などは整備されていましたが、これはあくまで、
墳墓として崇敬の対象になっていたからです。

明治時代の大森貝塚 日本考古学の始まり
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この時代、廃仏毀釈の流行が起き、各地で寺院や仏像の破壊などが
ありました。やはりアメリカ人の東洋美術史家アーネスト・フェノロサが、
僧らの制止を聞かず法隆寺夢殿の秘仏・救世観音像を開扉した
エピソードが知られていますが、彼は日本に国宝という概念をもたらし、
たくさんの仏教美術品が彼の手によって救われています。

ここでちょっと余談、日本は朝鮮を併合し、朝鮮の文化財を発掘、
保存しました。併合以前の朝鮮には、日本と同様、文化財保護という
考えはありませんでした。日本が朝鮮でその制度を整備したんですが、
今の韓国ではそういうことは教えられていません。ですから、
韓国人で、日本が朝鮮時代の歴史的な遺物を多数盗み取って

中国出土の初期の貝貨
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日本に持ち帰ったと考えている人が多いんです。で、対馬の仏像の
返還拒否事件などが起きているんですね。現在、日本と韓国の関係は
ぎくしゃくしていますが、その大部分は、韓国で正しい歴史が教えられて
いないことによるものです。また、正しい歴史を語ろうとする韓国人が
いても、「親日」というレッテルを貼られ孤立してしまいます。

さて、貝塚は日本全国で2500ヶ所以上発見されていますが、
もちろん世界各地にあります。先史時代の人にとっては、貝類は重要な
タンパク源であり、煮て干せば、ある程度の保存がきくからです。
下図は、アフリカ、モーリタニアの自然公園内にある貝塚ですが、
まるで山のようになっています。

モーリタニアの貝塚!
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さて、貝塚は妖怪とも関係があります。これはご存知の方も多いでしょう。
ダイダラボッチですね。日本各地に話が伝わる巨人で、大入道の
レベルではなく、山をつかんで運ぶことができるほど巨大。
で、貝塚は海から離れた場所で見つかることが多いんです。これは
海退のためですが、その貝塚を見つけた昔の人は、ダイダラボッチが

そこに座っていて、長い腕を伸ばして海から貝を取って食べた、
という伝説を作り出したんです。奈良時代に成立した『常陸国風土記』には、
大昔の「大櫛之岡(おおくしのおか)」に長大な人がいた、と書かれており、
後年、その地に大串貝塚が発見されています。縄文時代の貝塚遺跡が
文献に記されている最古の例かもしれません。

『竹取物語』
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あ、もうここまで来てしまった。古代には貝殻が貨幣として通用していて
「貝貨 ばいか」と言います。中国では、今から3500年前の商(殷)の
時代からあり、子安貝(タカラガイ)が用いられましたが、
南方地域でしか採れない貴重品でした。で、この貝貨がだんだんに
青銅製になり、現在の貨幣へとつながるんです。

ちなみに、これも余談ですが、平安時代の『竹取物語』では、
かぐや姫が貴公子たちに出した5つの難題(クエスト)の一つに、
「燕の産んだ子安貝」というのがあり、これを探した中納言石上麻呂は
高所から落ち、腰の骨を折って亡くなります。貴重なものであるという
記憶がその時代でも残っていたんでしょう。

貝輪
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「貝輪」というのもありますね。縄文・弥生時代から古墳時代にかけて
用いられた貝製の腕輪で、アカガイ、イモガイ、ゴウホラなどが使われました。
これらは身につけた人物の身分を表すとともに、呪術的な意味があったと
考えられ、両腕に外せない多数の貝輪をつけた人物の骨が発掘されています。
その状態では日常生活がまともに営めず、シャーマン系だったんでしょう。

貝輪も貝貨同様、時代とともに青銅製、石製に変化していきます。
ところで、貝輪にも使われたイモガイ類は大変な危険生物で、
捕食性で、歯舌が特化した神経毒の銛で他の動物を刺し、麻痺させて
餌としています。ちょうど人間がロープがついた銛を使って漁をする
ような感じで、世界で多数の死亡例が報告されています。

危険なイモガイ類
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さてさて、最後にオカルトホラーな話題を。小説家の伊島りすと氏が
書いた『ジュリエット』という本が角川から出されていて、沖縄が舞台と
なっており、「水字貝の魂抜け(貝の中身が殻から落ちること)」を
目にするのはタブーとなっていて、もし見てしまうと不吉なことが起きる。
ところが旅行者の親子3人が目撃してしまい・・・こんな筋です。

奇想ですよね。もちろんそんな風習はありませんが、わざと非現実感を
ねらったタイプの話で、第8回日本ホラー小説大賞受賞作です。
ということで、最初は心配していましたが、けっこう書くことがありました。
貝輪などは、それで記事が一つできそうです。では、今回はこのへんで。

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