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石、木、水とオカルトシリーズを書いてきましたので、
勘のいい方なら、次は火か土だろうと思われていたんじゃないでしょうか。
正解です。今回は火のオカルトについて見ていきたいと考えてます。
さて、火は物質とは言いませんが、人類にとって根源的なものであるのは
間違いありません、ですから、世界各地に火にまつわる神話があります。

やはり有名なのは、ギリシア神話のプロメテウスの話でしょう。
主神ゼウスが、武器を作って戦争を起こすからと、人間に火の使用を禁じたのに
反抗し、神々の一人プロメテウスは人間に火をもたらし、その罰として、
3万年間、毎日肝臓を鷲に喰われることになります。

このような形で、神が人類に禁じられた何かを与える形の話を、
「プロメテウス型神話」と言います。また、プロメテウスのような人物を、
「文化英雄 culture hero」と呼ぶことがあります。
2012年公開の、エイリアンシリーズの一作であるSF映画『プロメテウス』は、
この神話を踏襲しているんですが、評判はよくなかったですね。

プロメテウス
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日本神話では、イザナギ神とイザナミ神が国産みをして、最後に生まれたのが、
「カグツチ神(火之迦具土神 ひのかぐつちのかみ)」です。
このため、イザナミは陰部を火傷して亡くなり、怒ったイザナギは
剣でカグツチを殺し、黄泉の国へ妻を取り返しに行くことになります。

とまあ、神話や古代祭祀の話を書いていくときりがないので、
ここは少し自重して、話をオカルト方面にふりたいと思います。
さて、火に関する最大のオカルトというと、やはり「人体自然発火現象」
なんじゃないかと思います。これ、最近の話題と思われる方もいるでしょうが、
オカルトとしてはかなり古くからあるものなんです。

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「人体自然発火現象」は英語で(Spontaneous Human Combustion)、
海外ではSHCと約されることが多いですね。Spontaneousは難しい単語ですが、
「自発的」という意味です。1745年、学術論文誌、
『フィロソフィカル・トランザクションズ』に、ポール・ロッリという記者が、

コーネリア・バンディ伯爵夫人が、ベッドの上で、
膝から下だけ残して炭化した状態の遺体で見つかったという内容の記事を
載せたのが最初です。これ以後、人体が自然に発火したと見られるケースは、
200例を超えて報告されています。起きた場所は世界各地なんですが、
初期の18世紀のものは、圧倒的にイギリスとアイルランドに多いんです。

1799年には、ピエール・ライアーという医師が、自然発火の事例を研究し、
その特徴を12にまとめています。まあ、これは古い話ですので、
もっと新しい研究はないかというと、1995年、ラリー・E・アーノルドが
自著の中で、犠牲者たちに共通する特徴を6つにまとめました。

・犠牲者はアルコール中毒。 ・高齢の女性が多い。
・体自体が発火したというより、火のついたなんらかの物質が接触した。
・手と足の先は残る。・体に触れている可燃性のものはほとんど損傷なし。
・燃えた後にはものすごい悪臭を放つ脂ぎった灰が残されている。

「ビーフィーター」ジン
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では、謎解きをしていきたいと思います。まず、人体は自然に発火するのか?
これはしないですよねえ。人間の体重の約60%が水分です。
人体の中には、リンや腸内のメタンガスなどの可燃性の物質がありますが、
それに簡単に火がつくとは考えられません。

たしかに、人間の体には、静電気を含めた電気的な生理現象はあるんですが、
それで火がつくのなら、人体自然発火現象はもっともっと多いはずです。
あと、オカルト雑誌では「部屋の中にはまったく火の気がないのに」という
一節がつけ加えられたりするんですが、
これはだいたいが、話を面白くするためのギミックです。

ありていに言えば、犠牲者がアルコール度数の高い酒を飲んでいて体にこぼし、
それにタバコの火、あるいは暖炉から飛んだ火がついて燃え上がったケースが
ほとんどだと思うんですね。そして、18世紀という時代背景を考えれば、
イギリスでこの現象が多いことには、理由があります。

まず、当時は酒に関する法律が未整備で、ジンなどのアルコール度数の高い
酒が無制限に売られていたこと。次に、着ているものが絹や木綿などの
液体がしみ込みやすい自然素材だったこと。それと、電気のない時代のため、
照明はランプ、暖房は暖炉や石炭ストーブ。タバコの火をつけるにも
火種が必要で、身近に火があったことがあげられるでしょう。

産業革命でブルジョワに搾取される労働者
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さらに、18世紀はイギリスが産業革命に突入する時代です。
このころは労働基準を定めた法律はなく、労働者の1日の労働時間は、
14~16時間という過酷な状況でした。これだと疲れ切ってしまいますよね。
そこで労働者は、家に帰ったわずかな自由時間に強い酒を飲んで、
泥のように眠ろうとします。そうして体に火がつく事故が起きる。
あと、上流階級の貴族などでもアルコール中毒が多かったんですね。

とまあ、こんなふうに書いてしまうと身もフタもないんですが、
人体自然発火現象とされるものの中には、実際にまったく火の気がない状況で
起きているものも、ごくわずかあります。そこで疑われるのが「球電現象」。
これは自然に発生するプラズマのことですね。ちなみに自分は、
中学生のとき、球電が開いた窓から教室に入ってくるのを見たことがあります。

球電現象
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さてさて、火のオカルトでは「人体自然発火現象」を取り上げてみました。
いかがだったでしょうか。イギリス産業革命では蒸気機関が使われましたが、
やがてそれは時代とともに電力にとって代わられ、火事などの事故件数が、
大きく減っていったんですね。では、今回はこのへんで。