XCZ

今回はこういうお題でいきます。ベストとありますが、
もちろん自分が、古今東西のすべての児童文学を読んでる
なんてことはありませんので、きわめて個人的なものです。
その点はご承知おきください。

あと、どこまでが児童文学かというのは難しく、一般的に、
よい児童文学というのは、大人が読んでも面白いですよね。
ただ、ここでは、なるべく幼児の童話はのぞきたいと思います。
そうですね、小学生から中学生ぐらいが対象となるような作品。

ベスト1、『飛ぶ教室』エーリッヒ・ケストナー ドイツ
自分はこの話、すごく好きなんですよね。ドイツの
キルヒベルクのクリスマスシーズンを舞台に、高等中学の
書き取り学科のの評価を書いたノートが実業学校生に
よって奪われ、それを取り返すまでが話の筋の中心です。

Cさ

たくさんの少年たちが出てきますが、それぞれの性格が
よく描き分けられ、また、早い段階で将来が決まる
ドイツの学制についても理解が深まります。あと、
キリスト教がドイツでどのくらい浸透しているとかも。

あとそうですね、これを読むと、日本の旧制中学を
舞台とした昔の青春小説にすごくよく似てるんです。
同時代の作品は気風に共通するものがあるんですね。
この当時、作者のケストナーはナチスドイツによって
児童向け作品だけしか書くことが許可されていませんでした。

CD

ベスト2、『宝島』ロバート・ルイス・スティーヴンソン、
イギリス。これこそ、血湧き肉躍る冒険小説ですよね。
冒頭に、「片足の男」をひじょうに恐れる老海賊が
登場し、その男は死にますが、予言のとおりに片足の男が
現れる。しかし魅力ある人物で、敵か味方かもわからない。

その後は冒険につぐ冒険です。海賊の宝の地図をもとに
航海を始めた船の中で、主人公の少年はリンゴ樽の中で
片足の男、ジョン・シルバーたちの悪巧みを聞く。最後は
正義が勝ち、お約束どおり宝も発見されます。『15少年漂流記』
もよかったんですが、こちらを入れたので割愛しました。

かS

ベスト3、『百姓の足、坊さんの足』新美南吉、日本。
次はこれにしました。仏教説話的な内容ですが、子どもの
頃にこれを読んだ自分は怖かったです。立派な和尚について
米を喜捨してもらうために各家を回っていた主人公の百姓は、

夜の山道で、貧しい年寄りからいただいた米をこぼしてしまい、
和尚とともに足で踏み散らします。この罰が当たったのか
わかりませんが、百姓は米を踏んだほうの足が萎えてしまう。
それに対し和尚はなんともない。百姓は自分の行為を悔い改め、

和尚とほぼ同時期に死にます。その冥土への旅の道中、
2人は出会い、分かれ道で、和尚が行けと言われた先には
暗雲がたちこめ、百姓の道の行く手は光り輝いている・・・
こんなお話でした。今 読み返してみると、
じつによくできた構成で、改めて感心しました。

XZC

ベスト4、『ハリー・ポッター』シリーズ。J・K・ローリング、
イギリス。1~4巻くらいまでは、子ども向けと言っていい
内容で、主人公もハリーたち少年少女なんですが、その後は、
スネイプ先生の報われなかった愛の物語みたいになります。
これは読者の成長を考えてるんでしょうね。作品世界も
破綻がなく、作者はひじょうに頭のいい人だと思います。

ベスト5、『ハックルベリー・フィンの冒険』マーク・トゥエイン、
アメリカ。『トム・ソーヤーの冒険』の後日譚です。
自分は、アメリカの文豪と言えばマーク・トゥエインの名が
出てきますね。児童文学で文豪というのも変な感もありますが、
まずミシシッピ川沿いの情景描写が素晴らしい。



主人公のハックはプアホワイトの孤児で、大金を得たために、
名のり出た父親に連れ去られてしまいます。黒人奴隷の問題、
同じ白人間での差別、詐欺師がリンチされる場面なども
出てきます。前作ではインディアン問題もありましたが、
作者はヒューマニズムに立って痛烈に批判を加えています。

ベスト7、『モモ』ミヒャエル・エンデ、ドイツ。
「時間貯蓄銀行」と称する、人々から盗んだ時間によって生きる
灰色の男たちによって、人々から時間が盗まれてしまいます。
人々は時間を節約するためにあくせくと働き、笑顔が消え、
いつもコマネズミのように動き回っている。



それを助けようとしたのが、貧しいみなし子ですが、不思議な
力を持った少女モモ。で、これ、大人になって見返すと、
キリスト教的な物語にも読めるんですね。キリスト教の教義では、
物品から利子を取ってはならないとされました。利子を取ることは
神から与えられた時間を盗むことになるからです。

そうは言っても、貨幣経済が導入され、商業が発達して
利子を取るのは当たり前になってしまいました。オペラの
『ベニスの商人』は、ユダヤ人の強欲な金貸しを皮肉った
内容になっています。ああ、ここで字数がつきてしまいました。

では、今回はこのへんで。