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大淫婦バビロン

今回はこういうお題でいきます。ここで言う悪魔とは
基本的にはキリスト教(その前身のユダヤ教)における
悪魔のことになります。さて、悪魔はたくさんの種類が
いますが、女性の悪魔って少ないですよね。
これはどうしてなのか、明確な理由があります。

まず、悪魔のでき方には2通りあって、一つ目は、
神のお使いである天使が、悪に染まって天国から堕ち、
悪魔化したもの。ご存知のように、天使には性別がありません。
永井豪氏の漫画『デビルマン』でも、大魔神サタンは
両性具有として描かれてますよね。

大魔神サタン


もう一つの悪魔のでき方は、異教の神がキリスト教側からみて
悪魔化されたもので、多くの宗教では、中心神は男性と
されます。こういった理由から、女性の悪魔は数少ないんです。
ですが、まったくいないわけではなく、ここではおもに
2体の女悪魔をご紹介していきましょう。

まずは、「悪魔リリス」。メソポタミア地方で古くから
知られた女精霊です。ここを詳しく書いていくと長くなるので
割愛しますが、キリスト教の俗説として、じつは最初の
人間であるアダムの妻、イヴのさらに前に、リリスという
女がいたという話があります。

ただこれ、もちろん正式なキリスト教聖典に書かれている
わけではありません。『旧約聖書』の創世記には、
「神はご自身にかたどって男と女を創造された」とあり、
その後に出てくる「神はアダムの脇腹からイヴを創った」
とする記述と矛盾が起きています。

悪魔リリス
キャプチャ

そこで一番最初の女、リリスが考え出されたのでしょう。
アダムとリリスは性の営みを行おうとしましたが、
アダムが上になる体位をとろうとすると、リリスは怒り、
平等であることを主張して紅海沿岸に逃げ出した。

また、リリスは国を滅ぼすものとしても考えられ、
歴史上の多くの悪女の正体がリリスであったとされたり
もしました。例えば、古代イスラエル最盛期、
ソロモン王に対峙したシバの女王も、リリスが姿を変えた
ものであったという説もあるんです。

シバの女王
キャプチャvv

でも、これもやっぱり矛盾があるのはおわかりでしょう。
聖書では、アダムもイヴも、最初は性を知らず、
蛇の悪魔のそそのかしで知恵のリンゴの実を食べてしまい、
裸を恥じてイチジクの葉を局所につけたとあります。
さて、上記したエピソードから、リリスを夢魔の女性型

である、サキュバスと見るむきもありますね。
男性に淫夢を見させ、夢精をさせる。このとき男性は
寝ているわけですから、サキュバスが上になることが多い。
これらのことから、リリスはウーマンパワー、フェミニズム
運動の象徴とされたりもしました。

次は「大淫婦バビロン」について。すごい名前ですね。
バビロンというのは、メソポタミア地方の古代都市の
名前ですが、それとは関係がありません。以前に書いた
『新約聖書』の黙示録に、7つの首の獣に乗った女という
記述があり、そこから考え出された悪魔です。



黄金や宝石で飾った赤と紫のドレスを身につけ、
淫水で満たされた黄金の杯を持ち、その額には「大いなる
バビロン、淫婦と憎むべきものの母」と印されている。
バビロンは多くの殉教者の血を流しますが、最終的には
神の手によって滅ぼされると預言されます。

さて、このバビロンの正体ですが、黙示録に出てくる
ところから、やはりキリスト教に激しい弾圧を加えていた
ローマ帝国ではないかとする説が一般的です。
バビロンが乗る黙示録の獣の7つの首は、歴代7人の
ローマ皇帝を表している。

ウイリアム・ブレイクの「黙示録の竜」
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これらには、ローマ大火の罪をキリスト教徒になすりつけた
暴君ネロや、キリスト教徒を迫害して数千人を処刑した
ディオクレティアヌス帝などが含まれています。ですから、
「多くの殉教者の血を流した」と言われるわけです。

バビロンの名前も、現代のキリスト教徒にはよく知られていて、
アメリカの小説家、トマス・ハリスの作品『レッド・ドラゴン』

(レクター博士が出てくるシリーズの一冊)には、ウイリアム・

ブレイクの描く黙示録の獣に魅せられた殺人鬼が登場しています。


アブラヘル
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さてさて、キリスト教の女悪魔についてみてきましたが、
まだもう少し字数があります。そうですね、サキュバスの一種の
「アブラヘル」という悪魔も有名です。魔女狩り人として有名な
ニコラ・レミの『悪魔崇拝 三部作』には、アブラヘルという

女の悪魔が男の前に現れ、性的魅力で操って息子を殺させます。
後悔した男は自殺しようとしますが、アブラヘルは、自分を
崇拝するなら息子を生き返らせてやろうと持ちかけ、
息子は腐臭を放つ死体のまま生き返った・・・ こういうゾンビの
元祖的な話があります。では、今回はこのへんで。