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恐山菩提寺と地蔵菩薩

今回はこういうお題になります。さて、みなさんは
青森県の恐山に行かれたことがあるでしょうか。自分は
10年以上前に温泉関係の取材で行ったことがありますが、
なにぶん古い話なので、現在の様子と合わない点が
あるかもしれません。

オカルト研究家として、もっとちょくちょく行けばいいんで
しょうが、新幹線は八戸までですし、アクセスがよくないん
ですよね。前は茨城から車で行ったので、あきれるほどの
時間がかかりました。青森に入ってからも長いんです。

さて、まずは恐山の概要を見ていきましょう。青森県、下北半島の
中央部にあり、カルデラ湖である宇曽利山湖の外輪山一帯を指します。
火山地形ですが、噴火があったのは1万年以上前とされます。
全国にある「〇〇地獄」という地形同様、硫黄性の火山ガスによって
草木の生えない荒涼とした風景が広がり、その面積が大きい。

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面白いのは恐山(おそれざん)の地名の由来で、恐いからという
わけではないんです。古くは宇曽利山(うそりやま)と呼ばれたのが、
転訛により恐山「おそれやま」と呼ばれるようになりました。
もともとの「うそり」は、アイヌ語の「ウショロ(くぼみ)」
から来ているということです。

日本三大霊場の一つで、恐山菩提寺があります。このお寺は
曹洞宗で、むつ市にある円通寺が運営を行っています。
恐山では地蔵菩薩信仰が盛んで、禅宗とは合わないんですが、
霊場を開いたのは天台宗、最澄の弟子である円仁(慈覚大師)です。

宇曽利山湖
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地蔵菩薩は、地獄を含めた六道世界のすべてに現れて人々を救うという
誓いを立てて菩薩になりましたが、特に子どもを地獄から救うことで
知られています。幼くして死んだ子どもは、親不孝の罰のため、
地獄の賽の河原で石を積むんですが、あるていどまで高くなると、
鬼が来て突き崩してしまいます。その無限の責め苦に終わりを与える。

ですから、恐山の各所には石積みがあるんですが、これは、
地下からの有毒な火山ガスを、直接地表に吹き出させないためも
あると言われています。また、あちこちに立てられた風車は、
子どもへの供物であると同時に、火山ガスの流れる風向きを
調べるためともされます。

賽の河原
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さて、恐山と言えば「イタコ」が有名ですよね。死者が乗り移って
口寄せをします。じつは仏教とは関係ない、神道系の巫女なんです。
イタコになれるのは、目が見えない、もしくは弱視の女性で、
厳しい修行がありました。必ずイタコの師匠につき、数年間
祓いの祝詞や所作を覚えます。

ただ、これで1人前というわけではなく、実際に死者の言葉を
取り次ぐには、高い技術が必要です。現在は後継者が少なく、
盲目ではない女性もいるようです。上記したように、イタコは
神道ですので、恐山菩提寺はまったく関与していません。
例大祭のときに東北各地から集ってくるんですね。

おっと、スペースがなくなってきました。温泉の話に移ります。
霊場内には恐山温泉があり、4つの湯小屋は無料ですが、
最初の拝観料は必要です。ここの湯小屋は、幽霊を見ることが
できると言われています。ただし、怖い幽霊ということではなく、

イタコ
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「湯につかってゆったりした気分で窓の外を眺めていると、
外を行きかう人に交じって、亡くなった親族や友人の姿を
見てしまう」といった内容になっています。自分も入りまして、
いいお湯なんですが、板一枚の外を人が行き交っているので、
なんだか落ち着かなかったですね。

さて、じつは恐山は日本の怪談史上、きわめて重要な役割を果たして
います。1973年から日本テレビ系列で放映されていた、
「怪奇特集!! あなたの知らない世界」。放送作家の新倉イワオ氏が、
視聴者の投稿をもとに、再現ドラマを構成しましたが、
その中で最も怖かったとされるエピソードが、

恐山の湯小屋の一つ
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「恐山の怪」あるいは「お歯黒お化け」と呼ばれる回で、
恐山に参詣に行った男性が霊場内で着物姿の女性を目撃する。
その女性は自宅までついてきて、男性は日に日におかしくなって
いきます。自宅で歯を磨いていると、なぜか歯が真っ黒になり
その後ろに女性の姿が。

男性だけでなく、家族もまたその霊にとり憑かれ、霊が茶碗の中に
現れたり、家族が歯が真っ黒になったままニターッと笑う。
こう書くとバカバカしいようですが、すごく怖かったとして伝説に
なってるんです。で、何が特筆すべき点かというと、それまでの
怪談は、多かれ少なかれ因縁の要素がありました。

悪いことをした人間、恨みを買った人間が、霊によって報いを
受けるという「四谷怪談」のパターンだったのが、何もしていないのに、
たまたま地雷を踏んでしまうような形で霊障を受けてしまう。
それもきわめてシュールな形でです。

日本のオカルトの先駆者の一人 新倉イワオ氏
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わけのわからない怖さ、理不尽な恐怖という、現代怪談を特徴づける
要素はこのあたりから始まったと見てもいいように思います。
怪談が因縁物というしばりから切り離され、幽霊も正体不明で、
必ずしも恨みを飲んで死んだ人間とはかぎらない。
怪談の自由度が高まったということです。

さてさて、ということで、恐山のオカルトを見てきました。
最初に書いたようにアクセスは悪いですが、行けば行っただけの
価値はあると思いますので、まだの方はぜひ恐山に参詣されて
みてはいかがでしょうか。では、今回はこのへんで。

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