うんこを食べる―。人類にとってある意味、最大の挑戦が始まっている。
研究の課題はどこにあるのか? 注意すべき点はなんなのか?
人間の「うんこ」を安全に食べることのできる未来は近づいている!
と聞いたら、皆さんはどう思うだろうか。「誰が食べるんだよ」
「実現しても食べたくない」という声が圧倒的多数のはずだ。

しかし、この問題は人類の発展にとって避けては通れない道なのだ。
現在、なんとあのNASA(米航空宇宙局)が「うんこ食」
の研究を進めているという。長期間にわたり宇宙に滞在すればするほど、
宇宙飛行士にとって「食」は生命に直結する問題だ。

宇宙に食べ物を運ぶことはコストがかかり、かといって軌道上で
宇宙飛行士自らが食べ物を栽培しようとしても、
あまりに時間がかかりすぎる。(週刊プレイボーイ)




今回はこのお題でいきます(笑)。この題名に拒否感がある方は
スルーしてくださいね。さて、宇宙に人間が滞在する場合、まず空気(酸素)、
水、食料、これらはどうしても必要です。ですが、宇宙船や
宇宙ステーションに物を積む場合、グラム単位で燃料コストがかかります。

さらにスペースの問題もあります。例えば、水を大量に積めば、
その分だけ人間の暮らす空間がせまくなってしまうわけます。
ウンコの場合も、それを保管するにはスペースが必要ですよね。
ですから、もしウンコをリサイクルできるものならそうしたい。
ということで、NASAでは真面目に研究を進めているんです。

ちなみに、オシッコはすでに宇宙でリサイクルされています。
尿処理装置で蒸留・精製し、普通の飲料水と
まったく変わらないものになります。日本の宇宙飛行士、
若田さんが尿からできた飲料水で乾杯してるのが
ニュースになってましたので、ご記憶にある方もおられるでしょう。



さて、ウンコって何でできているんでしょうか? これ、意外なことに、
口から食べた食物由来のカスは、6~7%にすぎないんだそうです。
60%以上が水分、約20%が腸壁細胞の残骸です。
特に、小腸の細胞が多いみたいですね。

みなさんは「大腸がん」という言葉は聞いたことがあると思いますが、
「小腸がん」ってあまり聞きませんよね。これは、小腸表面の細胞は、
ほぼ24時間で入れ替わっているので、がんができるヒマがないんです。

小腸にがんができる場合でも、大腸がんなどの転移であることが多いんです。
しかも、小腸のひだを伸ばして広げると、テニスコートほどの面積になります。
そっから大量の細胞の残骸が、ウンコに混じってくるわけです。

次に、15%ほどが腸内細菌の死骸です。人間の腸内には、
100~3000種類の細菌が100兆から1000兆個もいるんだそうです。
これらが日々死んで、その死骸がウンコとなって出てくるんです。
うーん、これは知りませんでした。人間の体って、
かなり食物の消化・吸収効率がいいんですね。



さて、では、ウンコはそのままで食べられるのか?「飲尿療法」というのが
ありますね。出たての新鮮なオシッコを飲むと健康によい、とするもので、
あの『ちびまる子ちゃん』の漫画家、さくらももこさんが、エッセイで
飲尿療法を実践していると書いたのを読んで、衝撃を受けたのを覚えています。

飲尿は、新鮮で雑菌が繁殖してないものなら、体に害はないという話ですが、
自分はできる自信はないです。もちろん、上記したような、蒸留されたもの
なら飲めます。ただ、ウンコの場合は、人間に有毒な成分が含まれているので、
そのまま食べるのはかなり厳しいでしょう。

 



有毒な内容物は大きく分けて2種類あって、一つはアンモニアや硫化水素
などの化学成分。でも、これはオシッコにも含まれますよね。
もう一つが細菌です。腸内の細菌には、体によいものも
悪いものもあるんです。大腸菌などが口に入ると腹痛を起こす原因になりますし、
その中でもO157などは重篤な中毒を引き起こします。

では、加熱殺菌すればいいのか。たしかに高温で加熱すれば、
ほとんどの菌は死にます。ただ、そう簡単には問題は解決しません。
というのは、加熱は酸素を消費するからです。宇宙船内で、
酸素は水以上に貴重です。オシッコを蒸留してできた水をさらに分解して
酸素を作って利用しているほどなんです。

火星のテラフォーミング


現在NASAが進めている研究は、自然にある特殊な細菌を利用するものです。
まず、ウンコから有毒成分をのぞき、栄養素だけを取り出す。
さらにその栄養素に細菌を加え反応器に入れることで、飲食可能な
バイオマスを栽培し、人間の食料とします。メタンを基質として増殖する、
メチロコッカスという細菌の成長を利用しているということです。

さてさて、自分は2つほど問題があるのかなあと思います。
一つは、上で書いたスペースについてです。もし、ウンコの食料化装置に、
大きなスペースと重量が必要だとしたら、食料を多く積んで、
ウンコも宇宙から持ち帰ったほうが効率がいいことになります。
ま、これから研究して省スペース化してくんでしょうけど。

また、もしウンコを水と肥料に分解して植物を育てるとしても、
やはり広い面積が必要になってしまうでしょう。
これは、他の星に植民した場合などにはいいかもしれませんが、
せまい宇宙船内では難しいでしょうね。

もう一つは、心理的な面ですね。もちろんウンコからできた食料は、
もとがウンコとは連想できないような、色、形、味になっているでしょうが、
食べるときに、「これウンコだったんだよなあ」という考えが
頭をよぎらないでしょうか。まあでも、そんなやわな神経の持ち主では、
宇宙飛行士は務まらないのかもしれません。今回は、このへんで。

宇宙ステーション内のトイレ、手にしているのは収尿器