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藤原氏の氏神神社 奈良春日大社

今回はこういうお題でいきます。オカルト論ですが、
このところずっと道教やキリスト教の話題が多かったので、
ひさびさに神道の内容にしてみました。さて、
みなさんはこういう童謡というか唱歌をご存知でしょうか。

「♪ 村の鎮守の 神様の 今日はめでたい お祭り日
 ドンドンヒャララ ドンヒャララ ドンドンヒャララ 
 ドンヒャララ 朝から聞こえる 笛太鼓」
たいへんリズムのよい、陽気な気分になる歌なんですが、
今の子どもはこういうの知らないんですよね。

で、ここで出てくる鎮守神(ちんじゅがみ)って何でしょう。
字を見れば、鎮め守る神ということで、村の守り神的な
存在のように思えます。ですが、鎮守神ってかなり
難しい概念なんです。また、似たような用語として、氏神、
産土神(うぶすながみ)などがありますが、

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これらとどう違うんでしょう。今日はそのあたりの話を
してみます。まず一番わかりやすいのが氏神でしょう。
血統が共通する氏族があり、その人々が信仰する神を
氏神と言い、多くの場合、その氏族の祖先神になります。

日本の古代において、氏族の血統がどう考えられてきたかは
よくわからない面があったんですが、それが一変したのは、
1968年に埼玉県行田市、埼玉古墳群の稲荷山古墳から
出土した稲荷山古墳出土鉄剣によります。ちなみに
稲荷山古墳の推定年代が5世紀後半頃。

稲荷山出土鉄剣
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この発掘から10年後の1978年、腐食の進む鉄剣の
保護処理のため、X線による検査が行われましたが、その際、
鉄剣の両面に115文字の漢字が金象嵌で表されていることが
判明します。このため、「金錯銘鉄剣 きんさくめいてっけん」
とも呼ばれるようになりました。

裏側には、雄略天皇と考えられる「獲加多支鹵大王」の文字があり、
これも大きな問題なんですが、今回はふれません。表側には、
「ヲワケの臣。上祖、名はオホヒコ。その児、タカリノスクネ。
その児、名はテヨカリワケ。その児、名はタカヒシワケ。その児、
名はタサキワケ。その児、名はハテヒ。その児、名はカサヒヨ」

四道将軍の一人、大彦命
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と刻まれていたんです。剣の持ち主がヲワケという人物。
先祖がオホヒコ(第8代孝元天皇の皇子、大彦命のことか?)で、
そこから続く先祖の名がずらっと6代にわたって書かれています。
で、最後のカサヒヨの息子がヲワケ。最初にこれを見たとき、
自分は、アダムから続く『旧約聖書』の系図が頭に浮かびました。

古代人が、いかに自分の先祖と血筋を大切に考えていたかわかります。
このような氏族が、氏子となって祀ったのが氏神。代表的な
ところでは、藤原氏の氏神が武甕槌命で奈良県の春日神社の御祭神、
源氏の氏神は八幡神。あ、古代史の話を書いていたら、
もうこんなに長くなってしまいました。先を急ぎますね。

次に産土神ですが、その人が生まれた土地の神様のことです。
つまり氏神は血縁、産土神は地縁という違いがあります。
産土神は、もしその人が生まれた土地を離れたとしても、
一生その人を守護し、もし亡くなった場合、霊魂は産土の地に
戻ってくるとされました。

最近は自分の産土神を探すサービスなどもあるようです
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最後の鎮守神ですが、これが難しい。氏神、産土神より後に
できた概念で、でき方は2通りあったと考えられます。
平安時代になると荘園制が形成され、貴族や武士、寺院などの
私的領地ができます。これにより、氏族社会が崩壊し、
氏神信仰は衰退していくんです。

その荘園内に新しく神社を建て、鎮守の神を置きました。また、
神仏習合が進み、寺院の中に守護のための神祇が祀られるようになり、
これも鎮守神と呼ばれたんです。鎮守神は、その土地の古くからの
神の場合もあれば、新しく勧請された神の場合もありました。

武士が力を伸ばした荘園制度
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さて、近世になるにつれ、氏神、産土神、鎮守神の区別はあいまいに
なっていきます。理由はおわかりと思います。土地から離れる人が
増えたからですね。交通手段が発達し、各地で城下町が
整備されて都市化が進み、大名の国替えなど、
大人数が一度に移住するケースが増えていきます。

血族集団はあちこちの地に散らばり、新しくその土地に入ってきた
人たちが、いなくなった一族の氏神を古くからの土地神として信仰する。
そういった形でごちゃごちゃになっていったんです。そうして、
氏神も産土神も、鎮守神と呼ばれることが多くなりました。

祭礼に参加する氏子
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現在、ある神社の氏子には誰でもなれますよね。氏神の周辺に住み、
その祭礼に参加する者全体が氏子で、決まった一族である
必要はなく、氏子総代も、その血族の者でない場合も多いんです。
氏子になると、祭礼に参加するなど、さまざまな役割があります。

さてさて、どうにか説明することができたでしょうか。
まあ、もともと氏神も産土神も土地神としての性格が強かったので、
そこまで大きな違いのないものだったんです。7月に入って
夏祭りの季節になりました。自分も茨城から大阪に移って、
地元の祭礼には参加しています。では、今回はこのへんで。

 

まとめ 氏神ー氏族の神、 産土神ー自分が生まれた土地の神

鎮守神ーその土地に移ってきた人々が新しく祀った神、

    もとは氏神や産土神だった場合もある

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