今回はこういうお題でいきます。前回、入門編で書いたとおり、
魔術と魔法では大きな違いはありません。どちらも英語にすれば
magic です。日本語の訳語が違うだけなんですね。ただ、
日本語にした場合、ややニュアンスの違いはあります。
魔術は大人も楽しめるゲームや小説などに出てくることが多いですし、
民話や児童文学に出てくる場合は魔法と呼ばれることが多い。
『ハリーポッター』シリーズは児童文学なので、
魔法という訳語が採用されています。

では、魔法の最大の特徴は何かおわかりでしょうか? これは
はっきりしていて、非キリスト教であるということです。
『新約聖書』の文章には、魔法を禁じるということが書かれています。
神の力による奇跡以外に不可思議な出来事が起きた場合は、
それは悪魔の力(正しい教えが広まることをさまたげる異教の神も、
また悪魔の一種なんです)を借りているとされ、
術者は魔術師(wizard)魔女(wich)と呼ばれて、異端審問に
かけられて火あぶりにされることになっていました。
しかし、ヨーロッパでキリスト教が誕生したのは1世紀の初頭
ですし、古代にヨーロッパの多くの領域を支配していたローマ帝国で
キリスト教が公認されたのが4世紀のことです。そこから、
キリスト教はヨーロッパ全土に広まっていきました。

ですが、ヨーロッパにはキリスト教以前から信じられていた宗教が
ありました。その多くは多神教で、ギリシア・ローマ神話、北欧神話、
ケルト神話、少数民族による信仰などがありましたが、それらは
唯一絶対神を持つキリスト教とは相容れないものであり、
信仰は地下に潜りました。
これだけではありません。ヨーロッパの中世はキリスト教会の力が
強く、聖書に書かれていることはみな真実とされる暗黒時代で、
それ以外の科学は悪魔の力と見られていたんです。
そもそも科学という概念がありませんでした。ですが、
ルネサンス期にさまざまな発明がなされて、人類に有用な科学は
自然魔術と呼ばれて白魔術の元となっています。
そして、黒魔術と白魔術の境目にあったのが、錬金術や占星術、医術
などでした。ですから、当時の錬金術師の中には、悪魔の力を借りていると
告発され、火あぶりの刑になった者もいるんです。ですが、自然魔術に
ついてはキリスト教会もだんだんに認めるようになっていったんです。
この過渡期に起きたのが、ガリレオ・ガリレイによる地動説事件です。

ここまでをまとめると、
・ 魔法とは非キリスト教である ・ 魔法は悪魔の力を借りて行われる
・ 科学という概念はなく、魔法の一種と考えられていた
さて、これらのことを基礎知識として、魔法にはどんなものがあるかというと、
『ハリーポッター』シリーズや『グリム童話』に出てくるものがそうです。
ただ、ここで注意しなければいけないのは、話自体は昔からあったものの、
その時代の新技術が取り入れられて、筋が変化していっていることです。
例えば、「シンデレラ」の機械時計やガラスの靴。「白雪姫」の魔法の鏡。
「ヘンゼルとグレーテル」のお菓子の家。「赤ずきん」の猟銃などです。
機械時計の発明は13世紀、板ガラスの発明は14世紀ころ。
日本にガラス製の鏡が伝わったのは1900年代になってからのことです。
ベネチアでガラス工芸が盛んになったのが、やはり13世紀ころ。
これらの技術は驚異とともに民話に取り入れられていきます。
魔法を分類するのは、『ハリーポッター』に登場する、ホグワーツ
魔法学校の科目で見るのがいいでしょう。まずは呪文、その言葉を
唱えただけで望みがかなう便利なものです。
それと魔法薬。ヨーロッパでは、魔女が魔法の鍋で材料を調合して
不思議な薬を作っているという話が昔からありました。まあ今から考えれば
堕胎薬や治療薬だったのかもしれませんが、当時の人には魔法に見えました。

それから、箒に乗って飛ぶ飛行術。さらに魔法植物。マンドラゴラなどが
そうですね。あとは異種族の伝説。小人や巨人、トロールなどです。
これらはすべて、キリスト教とは異なるものと考えられました。
(ただし巨人は『旧約聖書』に出てきます)占いやお守りなどもそうですね。
さてさて、だいたいこんなところですかね。あと、これは魔法とは直接関係が
ないですが、ヨーロッパの童話には残酷なものが多いんですよね。継母が
前妻の子を殺すとか。さらに実子を殺す場合もあります。
継子いじめの話は日本にもありました。昔は旅の芝居の一座が各地を
まわって、子どもが継母にいじめられて井戸に吊るされるというような
筋をよくやっていました。
それと飢饉のときの口べらし。飢饉のときは一家が満足に食べられない
ので、実子でも殺してしまう。「ヘンゼルとグレーテル」の話が
まさにそうですね。育てられない子どもを山の中に連れ出して捨てる。

それと西洋の童話にはよく王子様が出てきますが、その地方の領主が狩りに出て、
領地の若い娘をさらうなどのこともあったんです。そういう事実を反映して、
西洋の童話は残酷で怖いものが多いんですね。では、今回はこのへんで。

