bigbossmanです。つい昨日ですね。またまたKさんと大阪市内の
ホテルのバーで飲む機会がありまして。初めて読まれる方のために
ご紹介しますと、Kさんの本業は不動産および飲食関係で
年収は数億。でも、自分は酒代をおごってもらったことは
ありません。いつもワリカンです。これは自分の意地も
あるんですけどね。で、Kさん、ボランティアで霊能活動も
されてるんです。現在、石垣島に自宅があるので、飛行機代だけでも
大変だと思うんですが、謝礼はおろか交通費も受け取ってはいません。
「Kさん、沖縄の暮らしはどうですか」 「うん、単調だと思うだろ。
実際、そのとおりなんだが、不思議と飽きないんだよな。
と言っても、月の3分の2は本土に出てきてるが」 「ああ、
やっぱ仕事がありますからね」 「まあそうだ。あ、bigbossman、

お前が好きそうな お土産を持ってきてやったぞ」 「何です?」 
「ほら、これだ」Kさんはそう言って、バッグからハンカチに包んだ
5cmほどのものを出し、自分に渡してよこしたんです。
「え? これ、石ですよね」 「そう、与那国島と言ったら?」
「あ、海底遺跡ですか」 「正解、ダイビングのときに拾ったもんだ」
「うーん、喜んでいいのかどうか。あれは自然地形って話も
ありますよね」 「まあな」 「・・・いや、貴重なものをありがとう
ございます。ついでと言ってはなんですが、最近、何か事件を
解決されましたか」 「またブログのネタ探しか」 「はい」
「ないこともないが、まだ途中なんだ」 「ぜひお聞かせ下さい。
ぜひぜひ」 「いいだろう。けどこれ、嫌な話だぞ」

「そのほうがいいです。お願いしますよ」 「2週間ばかり前だな。
ある不動産屋から、知り合いを通じて俺に調査依頼があった。
あつかってる物件の一つが、心霊スポットという噂が広まって、
週末になると若いやつらが探索に来るようになった。
このままだと物件の値打ちが下がるばかりだから、本当に幽霊が
出ているのか、もし霊障だとしたら除霊もお願いしたい、
そういう話だったのよ」 「物件というのはビルとかですか」
「それが、一軒家なんだよ」 「へええ、場所は?」
「南関東の〇〇県、〇〇市」 「ただの廃墟じゃないんでしょ。
何か事件の舞台になったとか」 「ああ。家そのものは築10年で
比較的新しいが、人が住まなくなったのが8年前だ」

「〇〇市で8年前・・・あ!」 「そう、母子の無理があった家だ」
「覚えてます。その家の奥さん、まだ20代でしたよね。
子ども2人を道連れにして無理心中した。全国ニュースになってます」 
「俺が調べたところでは、結婚して5年目、その建売りを新築で買って
2年目のことだ。子どもは2人とも幼児で、夫のいないときに
首を絞めて殺し、自分はリビングで首を吊った」 「なんで?」
「動機ははっきりわかってない、遺書がなかったから。噂では、
夫の浮気に悩まされて鬱になり、離婚寸前だったみたいだが」 
「ははあ。で、その夫はどうなったんです」 「3人の葬式を
済ませた後にふらっと家を出て、そのま行方不明。今もって
見つかってない」 「それで」 「家は夫名義だったから、

夫の両親が相続した。けど、そんな家、持っていたくないだろ。          
だからすぐ不動産屋に売ったんだよ。もちろん曰くつき物件なわけだから
かなりの安い金額で」 「ああ、一般の買い手はいないでしょうからねえ」 
「でな、悪いことにその家、新興住宅地内だが、崖下に1軒ぽつんと
離れてあるんだ。無理心中から1年、だんだんに噂が広まってな。
誰もいないはずなのに、深夜2階の窓に明かりがついてる。
しかもその窓に影が映って動く、ときおり庭のほうで女の叫び声が
上がるとか」 「うわ、そりゃ心霊スポット化しますね。あ、その家、
不動産屋が管理してるんですよね。電気は来てるんですか」
「いいとこに気がついたな。ふだん電気は止めてる。だから、
家の中に明かりがつくことはないんだ」 「うーん、それで?」

「噂を聞きつけた地元のヤンキーが深夜に来るようになった。といっても
廃墟じゃないから中へは入れない。外に車を停めて家の周囲を回る
くらいだが、たしかに何かしらの心霊現象が起きたみたいなんだ」
「で」 「こりゃ本物だって噂がさらに広まり、他の市や県外からも
見に来るやつがでてきた」 「で」 「不動産屋は捨て値で買って、
しばらく寝かせてから更地にでもするつもりだったんだろうが、
こりゃたまらんとなって、俺んとこに依頼が来たわけだ」
「なるほど、行ってみたんですよね」 「ああ」 「どうでした」
「それがなあ、不動産屋に案内させ、鍵を開けて中へ入ったんだが、
子どもを含めて3人死んでる家なのに、霊の気配はまるでなかったんだ」
「へええ、それで?」 「けど、人の気配はあった」

「どういうことです?」 「空き家なのに、明らかに生きた人が入った形跡が
あるんだよ。畳の部屋ではよくわからなかったが、フローリングの
床には、うっすらと積もった埃の上に足跡があった」 「どんな」
「それがはっきりしない。でな、まずは近隣の家々で聞き込みをした。
不動産屋から頼まれた興信所員ということにして」 「で」
「どこの家でも、幽霊がどうのこうのというより、肝試しに来るやつらが
うるさくて迷惑だという話をしてたな」 「そうでしょうね。
何かわかりましたか」 「ああ、5件目だったかな、少し離れた場所の
若い主婦に聞き込みをして、だいたいのことはわかったよ」
「どんな」 「まあ、そうあせるな。それから、夜だけ3日続けて、
その家に泊まり込んだ。真っ暗な中に俺一人でいたわけだ」

「うわ、わくわくしますね」 「そんな面白い話じゃないから」
「スミマセン」 「最初の2日間は何事もなかった。3日目の夜中、
2時過ぎだな、家の玄関で物音がした。足音をしのばせて見に行くと、
表戸の鍵を開けて入ってきたやつがいる」 「え、鍵 持ってる?」
「そうだ。電気そのものが来てないから、家の中は真っ暗。なのに
その人物は間取りをすべてわかってる様子で、物にぶつかりもせず
スタスタ歩いて、初めに階段を上がって2階に行った」
「ついてったんですか」 「いや、さすがにそれだとバレるから、
下で待ってたよ」 「で」 「10分ほどしてその人物は下りてき、
リビングに入った。そのソファの陰に俺がいたんだ」
「で」 「俺はだいぶ闇に目が慣れてて、その人物が何をしてるか

くらいはわかった。リビングとキッチンのしきりのところに
ロープをかけ、首を吊る動作をしたんだな」 「う、止めたんですか」
「いや、何というか、そういうジェスチャーをしてるだけで、
実際にはロープは持ってないんだよ」 「ああ」 「でな、
それが終わると、その人物は玄関に鍵をかけて出てったんだよ」
「Kさん、いいかげんに その人物が誰か教えてくださいよ。
とっくにわかってるんでしょう」 「まあ、そうあわてるな。
お前は誰だと思う?」 「行方不明になった夫でしょう」
「ブブー、大外れ」 「ええ? じゃあ誰です」 「さっき近所で
聞き込みをしたって言ったろ。そんときの主婦だよ」
「意味がわかりません」 「その主婦が家の鍵を持ってるってことは?」

「ああ、もしかして夫の浮気相手が」 「そうだ」 「Kさんは最初から
知ってたんですよね。どうしてわかったんですか」
「聞き込みで訪ねてその主婦が出てきたとき、強い霊気がした。
背筋が寒くなるほどの怨念を感じたんだよ」 「で」
「その女、4体の霊を背負ってたんだ」 「え、4体?」
「そう、無理心中した奥さんと子ども2人、それから夫の霊」
「うう、夫も死んでる?」 「そうだ。ただ、その主婦が殺したわけでは
なく、自殺だろうな」 「じゃあ、その霊の集団に操られて、
夢遊病みたいに動いてた?」 「そういうこと」
「うーん、で、今後は」 「その主婦にきちんと話をして除霊を行い、
それから奥さんたちの墓参りをさせるつもりだよ」 

与那国島の海底遺跡とも言われる地形

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