今回は現役の中学校教師の青山さんからお話を伺いました。青山さんは
地方の公立中学校にお勤めで、今年13年目の35歳。現任校は3校目の
中堅バリバリの英語教師です。学生時代は高校で陸上部に所属しており、
その関係で陸上部の顧問も務めておられるということです。
ちなみに、自分は大学で考古学を学んだ関係で、中学校と高校の社会の
教員免許を持っており、2週間ですが教育実習に行って授業もやらせて
いただきました。この2週間で、教師という仕事がいかに忙しいもので
あるかということがよくわかりました。たんに授業をやっていればいい
というもんではないんですね。学級担任であれば、膨大な学級の事務が
ありますし、多感な年頃の中学生相手ですから、クラスの人間関係にも
気を使わなくちゃならない。そのうえ部活動の指導もある、

毎日帰りは9時、10時になるんですよね。そのご苦労には頭が下がり
ます。この実態を見てしまったため、教職に就こうとは思いませんでした。
自分には無理ですね。それでこうやって占い師なんかをやっている
わけです。お話は、いつものホテルのバーでお聞きしました。
「bigbossmanです。今夜はインタビューに応じていただいて、ありがとう
ございました。それにしても、教職って忙しいですよね」 「はい、
忙しいです。自分もやっと慣れてきたところなんです」 「自分もほんの
ちょっとだけ経験がありますが、みなさん、どうされてるんですか?」
「そうですね。僕の場合だと、朝の7時半に学校に着いて、帰るのは
夜の9時頃ですかね。ですから夕食は10時ころになる。最近はブラックだ
ということが知れ渡って、年々なり手が減っているようです」

「ははあ。それで、学校にいて怖い話ってありますでしょうか。ほら、
よく言われる学校の怪談みたいなやつ」 「ああ、昔はけっこうあった
みたいです。でも、今は宿直などはなくなって、セキュリテイはほぼ
警備保障会社に任されていますから」 「それでも、これまで体験された
ことってあるんでしょう」 「まあ、不思議なことはありましたよ。学校の
花子さんみたいな話ではないんですが」 「よろしければぜひお聞かせ
ください」 「そうですね。僕らの学校では毎年、すべての学年で6月に
合唱コンクールをやります。これは新しいクラスになって、クラス全員で
一つの目標に向かうことで団結を高めるためです」 「ああ」
「それでね、合唱のピアノ伴奏も生徒がやるんです。クラス替えのときには、
学級に最低1人はピアノの上手な子を入れてあるんです」 「なるほどね、
  
1年生の場合は?」 「小学校から申し送りが来ます」 「ああ」
「それで、これは1年生のクラスでしたが、自由曲にずいぶん難しいのを
選んで、しかも伴奏に決まった子があんまり上手じゃなかったんです」
「それで?」 「必死に練習していたようですが、いくらやっても
つっかえてしまうところが何ヶ所かあった」 「で」 「でね、その子、
合唱コンクール・・・これは学校じゃなく、市の文化会館を借り切って
やるんですが、当日に休んじゃったんですよ」 「どうなったんですか?」
「音楽の先生が伴奏を弾いてもいいんだけど、それだと、後日必ず
不公平だって話が他の生徒から出る」 「でしょうね」 「それで仕方なく、
そのクラスは伴奏なしのアカペラで歌ったんです」 「どうなりました?」
「やはりアカペラですから、途中から音が外れてしまって、そのクラスは
 
入賞できませんでした」 「ああ、気の毒な話ですね。伴奏の子はずいぶん
責任を感じたでしょう」 「そうなんです。いじめられたりはしません
でしたが、クラスの他の生徒との関係がやはりぎこちなくなり、次の年の
3月に転校しちゃったんです」 「で?」 「それで、合唱コンクールの
ときの曲は全部、CDに焼いて卒業のときに記念としてプレゼントすることに
なってるんです。3年間の分を」 「はい」 「でね、CDは業者に委託して
作るんですが、その子たちの卒業式の後で1年のときのことを思い出して
CDを聞いてみたんです。そしたら・・・」 「どうでしたか」 
「アカペラで歌ってたはずなのに、伴奏のピアノの音が聞こえたんです。
他のクラスのよりは小さい音でしたが」 「不思議ですね」 「ええ、
でも、誰に聞いてもらってもやっぱり聞こえるんですよ」 「うーん、 

転校した伴奏の子はどうなりましたか?」 「さりげなくその学校に問い
合わせてみたんですが、亡くなったなどということもなく、心機一転
頑張ったようです。でね、その子、今年高校卒業なんですが、ピアノは
続けてて、東京の国立藝大に合格したんです」 「それはすごい」
「ええ、まあ、学校の怪談なんてこんな感じですよ。音楽室にはってある
ベートーベンの絵の目が動いたなんてことはないです」 「他には?」
「まだありますよ。ですが、これは僕だけが見たので、幻覚などなの
かもしれませんが」 「かまいません、ぜひ」 「さっき学校のセキュリテイは
警備保障会社に任せているって言いましたが、教師にも鍵閉め当番ってのは
あるんです。夏場などは教室の窓を開けますよね。その閉め忘れ等がないか帰る

ときに確認する。まあ大きい学校だと回ってくるのは2ヶ月に1回くらいですが」

「はい」 「でね、僕が当番だったんですが、その日は仕事で遅くなっちゃった
んです。回ったのは10時を過ぎてました」 「はい」 「新築の学校には、
それぞれの学年の階に多目的スペースがあって、そこで集会なんかを
やるんです。僕が懐中電灯片手に回ってると、そんな時間なのに、暗い1年の
多目的スペースにずらっと人が立ってたんです。何気なく入ったので、
ものすごくびっくりしました、逃げ出そうかと思ったくらい」 「それ、
何だったんですか?」 「よく見たらマネキンでした。じつは翌年から
制服が変わることになってて、複数の業者に見本を出してもらって、PTAの
方に来てもらって選定会をしたみたいなんです。ほら1年だと、2年、3年と
新しい制服になるわけでしょう」 「そうですね」 「僕は3年の担任だった

からもう関係ないし、その会があったことを忘れてたんですよ。でも、すぐに

気がついて、なあんだと思いました。でも、気持ちがいいもんじゃないので、
素早くそこの施錠を確認して、多目的スペースを出ようと思ったんです。で、
最後にふり返って見たら・・・」 「見たら?」 「3列くらい並んでる
マネキンの真ん中あたりを何かが手足を振り回して走り抜けたんです」
「うわあ、何でしたか?」 「たぶんマネキンのうちの一体だと思います。
新制服候補のブレザーを着てましたから」 「で、どうされました」
「そのときは怖くて確かめられませんでした。でね、翌日朝早く来て、

もう一度そこを確認したんです。そしたらマネキンの一体だけが、列から

大きく離れた場所で倒れてたんです」 「何だったんでしょう」
「わかりません」 「他にはありますか」 「もう一つだけ。学校の放送室
ってたいがい2ヶ所あるんです。体育館のステージの脇と、メインになる


放送室、これは職員室の近くにあることが多い、で、放送部とか放送委員会が
昼の放送で音楽をかけたりする。それである日、教室でクラスの生徒と
教室で給食を食べていると、放送で流れてた音楽がプツンと切れ、
ギャーッという悲鳴が響き渡ったんです。これは放送室で何事かあったのかと
すぐに走りました。でも、放送室のドアを開けると、その日担当の
女子生徒がふつうに給食を食べてて、きょとんとした顔でこっちを見ている。
僕だけじゃなく、駆けつけてきた教師は何人もいました」 「で」
「放送室でかける音楽なんかは、放送室のモニターからも聞こえるんです。
でも、その子は悲鳴なんて聞こえなかったって言うし、
結局、何だったのかはわかりませんでした」 「不思議ですね。モニター

スピーカーから聞こえなかったんだったら、テープやCDにその声が


入っていたわけでもないんでしょうし」 「ええ、これも不思議です。
でもね、校長先生を始め、全校生徒が聞いてるんだし・・・僕が体験したのは
これくらいですね。怖いより、わけがわからないと言ったほうがいいかも
しれません。ただ・・・学校というのは、大規模校だと1000人近い
思春期の子がいるわけだし、そのうち三分の一が毎年入れ替わってます。

ですから、人の念がこもっていたとしてもおかしくない

気はするんですよ。だからときどき、説明のつかないことが起きる

ことがある。「うーん、そうかもしれませんね。ポルターガイスト系かも。

いや、今晩は貴重なお話、ありがとうございました。

自分も中学校時代を思い出しましたよ」