今回はこういうお題でいきます。昨日、「宇宙論的自然選択」を
あつかった硬めの記事を書いたので、今回は同じ宇宙の話でも、
わりと気軽に読めるものにしたいと思います。さて、みなさんは
夜空の星など、ご覧になられるでしょうか。

自分はもちろん占星術師なので、夜間晴れていれば天測をしますが、
大阪に移ってからは、かなり観測が難しくなりました。
以前、茨城に住んでいたときと違って、街が明るすぎるんですね。
それと、今は冬場で空気は澄んでいるものの、
やはり悪天候が多くてなかなか星が出てくれません。

天の川を見上げるなんてロマンチックですが、現代人には
そんな余裕はないですよね。さて、天の川は天球上を
ぐるっと回っていますので、世界のどこからも見えるはずですが、
場所によって見え方は違います。下は南半球で見られる
天の川の画像です。

南半球から見る天の川
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東洋では、天の川はその言葉どおり川と考えられてきましたが、
西洋では「流れる乳」という見方が多いんですね。
英語では「Milky way」で、もともとはギリシア神話からきています。
好色な主神ゼウスは、自分と人間の女の間に生まれた男児、
ヘラクレスを不死身の英雄にしようと思いました。

ヘラクレスは半分人間なので、神とは違って不死ではないんです。
そのため、妻である女神ヘラの母乳をヘラクレスに飲ませようとしますが、
嫉妬深いヘラは、ヘラクレスを憎んでいたため断ります。一計を案じた
ゼウスは、ヘラに眠り薬を飲ませ、ヘラが眠っているあいだに
ヘラクレスに母乳を飲ませようとする。

ヘラの乳を飲むヘラクレス
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このとき、ヘラが目覚め、ヘラクレスが自分の乳を飲んでいることに
驚いて払いのけた際、天にヘラの母乳が流れ出した。それが天の
ミルクの環になった・・・まあ、だいたいこんなお話です。
これ、ギリシア神話のパターンの一つなんです。ゼウスが浮気をし、
妻のヘラが怒って いろいろと祟りをなす。

さて、天の川はずっと古代から見えてましたが、地球とは遠く離れた
場所だと思われていました。まあ、無理のない考え方です。
東洋では、上記したように川と考えられており、中国で、牽牛、織女の
話ができ、それが日本に伝わって七夕の行事になりました。

18世紀を代表する知性 エマヌエル・カント
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天の川についての理解が深まったのは、そう古い話ではありません。
1609年、ガリレオが望遠鏡で観察し、天の川は無数の星の
集まりであることがわかりますが、なぜそこだけ多いのかは
謎のままでした。1755年、ドイツの哲学者カントが、天の川も
太陽系と同様に重力によって円盤状に回転しているとする説を唱えます。

なかなか鋭いですね。1788年、ドイツの天文学者ハーシェルは、
天の川が巨大な直径と厚みをもった円盤状の構造である考え、
太陽がそのほぼ中心にあるとしました。これ、けっこう長く続いたんです。
地球のどこからも見えて、ぐるりと回りを取り巻いてるんだから、太陽
(地球を含む太陽系)がその中心と考えるのも、無理がない気がします。

天の川銀河
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この後、天の川の比較的正確な構造がわかってきたのは20世紀に
入ってから。天の川が渦巻銀河であることが判明したのは1958年。
また、「棒渦巻銀河」であると考えられるようになったのは1980年代
のことです。直径が10万光年、厚さが1000光年。また、全質量は
膨大な値になり、そのほとんどが暗黒物質(ダークマター)。

その中心は いて座の方向で、大質量ブラックホールがあると推定されて
います。太陽系が天の川の中心にあるわけではないこともわかりました。
銀河系の中心から縁までの およそ4分の3のところに位置するようです。
さて、ここからは名前の話になります。星の集まりである
銀河(galaxy)は、この宇宙にたくさんありますよね。

天の川銀河の構造
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そこで地球がある銀河のことは、定冠詞をつけて大文字を使い、
銀河系(the Galaxy)と呼ぶことが多いんです。ただ、これが正式名称と
いうわけでもなく、our Galaxyなどとも言われます。で、だいぶ以前に
なりますが、たしか朝日新聞で、われわれの銀河に名前つけよう、
という企画をやってました。

そこで出てきたのが、宇宙科学研究所の的川教授は「金河」。
落語家の柳家小ゑん師匠が「お銀河様」。国立天文台の家正則教授は
「M0(メシエ・ゼロ)」で、これは銀河の名前にMと数字をつける
慣習から。納得できるといえばできますが、平凡でもあります。
(ご存知と思いますが、ウルトラ兄弟の故郷がM78星雲)

天の川銀河における太陽系の位置
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宇宙科学研究所の平林助教授が「巴」。西はりま天文台長の黒田氏が
提案したのは「moga(モガ)」で、mother galaxyの略のようです。
『天文学辞典』を編集した鈴木敬信氏は、われわれのものだけを
銀河と呼び、他のものは小宇宙とするべきという説。

さてさて、ただこれ、日本だけの呼び名ではあまり意味がないですよね。
世界が納得するような名前にしなくてはならず、そうなると難しい。
やはり記号や数字を使うのが無難なのかなと思ったりもします。
では、今回はこのへんで。

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