地図なしで長い旅ができる渡り鳥のように、人間も地球の磁気を感じる
能力を持っていることを発見したと、東京大と米カリフォルニア工科大
などの共同研究チームが19日、米専門誌に発表した。
「第六感」とも呼べる無意識の潜在的な能力で、
何らかの利用法が見つかる可能性があるという。(産経オンライン)


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今回は、科学ニュースからこういうお題でいきます。
まず第6感とは何か? 最初にお断りしておきますが、これ、周知された
科学用語というわけではありません。どちらかというと、
オカルト分野で使われることが多い言葉です。

人間の5感は「視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚」で、それぞれに感覚器が
対応しています。で、古くから6つ目の能力があるんじゃないかと
言われてきました。ただ、体のどこを探しても、
それらしい感覚器はないですよね。まあ、性感というのもありますが
それは今回は論じないことにします(笑)。

「第三の目」


さて、西欧では、第6感の候補として、超能力が言われてきました。
その中でも特にテレパシーについてです。言葉をかわさないでも他人と
心が通じ合える能力、また、背後から自分が見つめられている視線を
感じる能力など。超心理学の分野では、この存在を明らかにするため
実験がくり返されてきましたが、誰もが納得するような結果は出ていません。

日本の場合だと、1970年代には、ユリ・ゲラーによる超能力ブームが
ありましたが、その後下火になり、第6感は「霊感」ではないかと
言われることが多くなってきています。日本で霊感が第6感だと最初に
述べたのは、右翼的思想家である中村天風氏とされます。

でもこれ、変だと思いませんか。人間に霊感があるためには、
まず最初に霊の存在が確定されてなければならないんじゃないでしょうか。
まあ、オカルト界では霊(魂)の存在は自明ということに
なってるからですが、あまり人前でそういうことを言うと
オカルト脳と判断されてしまいます。

解明されたクリプトクロムの働き クリックで拡大できます
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さて、科学的には、第6感の候補として「磁力を感じる能力」が
あげられてきました。われわれのすむ地球には地磁気があり、
それは方位磁針が回ることでわかります。ちなみに、なぜ地磁気があるかと
いうと、地球中心部の、溶けた金属の固まりである核の対流運動に
由来すると考えられています。

磁石の歴史は古く、紀元前には、すでによく知られたものでした。
ただ、これは近くで自然の磁石である磁鉄鉱が産出する地域での話です。
アリストレレスは、紀元前7世紀ころの人物、タレスが初めて磁石について
論じたと述べています。また、プラトンはその著書で、
「マグネシアの石」として磁石のことに言及しています。

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少し調べてみましたら、古代ギリシアには磁鉄鉱の鉱山があるんですね。
中国では、紀元前4世紀ころの文献から、磁石(茲石)の話が出てきます。
ですが、方位磁針が航海に使われるなど実用的になるまでには、
それから1500年ほどの年月がかかっています。

さて、引用ニュースの話に戻って、「鳥類は網膜でとらえる磁気感覚に
頼って移動する」 という説は、1970年代後半からすでに出ていました。
この磁気感覚は、人間の網膜にもある「クリプトクロム」という
特殊なタンパク質の働きを利用して得られるようです。

研究チームは、地磁気を遮断した室内で、日米など18~68歳の男女
34人の頭部を地磁気と同程度の強さの磁気で刺激する実験を行い、
その結果、磁気の向きに応じて無意識のうちに脳波が異なる反応を
示したことから、人間は地磁気を大まかに感じ取る能力を
持っていると判断しました。

サケの回遊ルート
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まあね、渡り鳥と同じ光受容体タンパク質が人間にもある時点で、
人間が磁気を感じることができるというのは正しいように思います。
この能力は回遊魚やミツバチ、渡り蝶などにもあり、
かつては人間も使っていたのが、定住生活を始めたことで、
だんだんにその能力は使用されなくなっていった。

ですが、なくなったわけでもなく、磁気を感じ取る力はまだ残っている、
ということなんでしょうね。第6感をあつかったホラーとしては、
もちろん1999年のアメリカ映画、『シックス・センス』を
あげなくてはならないでしょう。英語では正確には「The sixth sense」。

この映画の主人公の少年は、「死者が見える」という特別な能力を
持っていて、これがシックス・センス。超能力というより、
日本の霊感に近いものです。この少年にかかわっていくのが、
小児精神科医の主人公で、演じたのはブルース・ウィリスでした。
最後にドンデン返しがある作品なので、ご紹介はこのくらいにしておきます。

『シックス・センス』
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磁力の話に戻って、磁力に関する最大のオカルトって何だと思いますか。
青木ヶ原樹海では方位磁針がくるうなんて話もありますが、
これはガセネタです。実際に行って確かめてきました。
自分は、日本における最大の磁力ネタは「ピップ・エレキバン」なんじゃ
ないかと思います。一時期、地上波でも大々的にCMを流してましたよね。

この製品は永久磁石を使用していて、それをツボに貼りつけると血行が
促進され、こりを改善するというメーカー側の説明になっています。
メーカーが行った臨床実験では、貼った部分の体温上昇が起きる
などの結果が示されていますが、大規模な人数を対象にブラセボを
混ぜて行った正式な治験ではありません。

これって全部同じ磁石?
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ですから、そのまま鵜呑みにはできませんし、現状では、エレキバン程度の
磁力では、身体に変化を起こさせるのは難しいのではないかという
意見のほうが強いようです。あと、エレキバンの磁力が血中の
鉄イオンを含んだヘモグロビンに作用するという説がありますが、
鉄イオンは磁力には反応しません。

さてさて、べつにピップ・エレキバンをくさすのが目的の記事ではないので、
現在お使いになられている方は、どうぞそのまま使用されてください。
ただ、血行をよくするのが目的なら、温水シャワーを患部にかけるとか、
実際に効果のある手段はいろいろあります。では、今回はこのへんで。