今回はこのお題でいきます。現代における数秘術(Numerology)とは、
数によって行う占いのことで、生年月日や名前の画数などを
使うものが知られています。この数秘術の一部分は、
自分がやっている占星術にも取り入れられているんです。古代ギリシアに

おいて、あの3平方の定理で有名なピタゴラスによって始められ、
プラトンがその内容を発展させたとも言われています。

『ハリー・ポッター』のシリーズで、ホグワーツで実施される科目の中に、
「数占い(Arithmancy)」というのがあり、ハーマイオニーが、
その内容をとても気に入っているというセリフが出てきていましたが、
この数占いも数秘術から派生したものと思われます。
数秘術はいちおう学問とされますが、宗教や魔術と深いつながりがあります。



さて、ピタゴラスは紀元前6世紀から前5世紀あたりの人で、
その頃日本はまだ弥生時代でした。
日本の弥生時代には文字はありませんでしたが、
古代ギリシアは古くから文字と著作が発展していました。

ですが、ピタゴラスについては、その思考や生涯を書いた資料って、
ほとんど残ってないんです。これはわざとそうしていたんですね。
ですから、以下に書くことはあくまでも伝説で、
学問的な根拠はありませんので、そのつもりでお読みください。

ピタゴラスは自分の教団を主催して、数百人の信徒と共同生活を送っていました。
教団は原始共産制をとっていて、入るためにはまず自分の全財産を教団に
寄付します。これは、大事件を起こしたオウム真理教もそうでしたね。
じつはピタゴラス教団って、オウム真理教事件といろいろ共通点があるんです。

 



まず、教団内で得られた知識は、絶対に外部に漏らしてはいけない
とされました。もし漏らした場合は死刑、
船の上から海に突き落として殺したとも言われます。
また、教団の教えを文字に書いて表すことも厳禁でした。

このため、上記したようにピタゴラスの思想は、
ほとんど現代に残っていないんです。
すべては師から弟子に口伝で継承されたんですね。
ピタゴラスの肖像画や彫像のたぐいも、当時のものは一切ありません。

さて、この宇宙は数によって支配されているというのが、
ピタゴラス教団の教えの根源で、「万物は数なり」という言葉で表されます。
何気ない自然の現象も、その裏には数の法則が隠されており、
それを明らかにしていくのが教団の使命と考えられていたんです。

例えば、理性は1、女性は2、理性+女性=1+2=3、3は男性を表します。
逆に言えば、男性から理性を引いたのが女性というわけです。
これはずいぶん失礼な話ですね。そして、3(男性)+2(女性)=5(結婚)
まあ、すべてはこんな感じで数に関連づけて考えられていたようです。

 



音階を発見したのもピタゴラスである、と言われたりもします。
ギリシアの音楽といえば、竪琴(ハープ)のイメージがありますが、
ピタゴラスは、弦の長さの比が簡単な整数比のときに、
発する音がよく調和することに注目し、音階の概念をつくり出したんだそうです。
ピタゴラス教団では、この世のすべては数であり、
あらゆることが、整数とその比(有理数)で表されると考えていました。

ところが、ピタゴラスの定理において、等しい辺が1である直角二等辺三角形の
斜辺の長さは√2ですよね。(下図)√2は無理数といって、

1,41421356・・・と、分数でも少数でも

表すことができない数になってしまいます。
これは教団の根本原理からいって、たいへんにマズイことになるんですね。

皮肉にも、自分が発見した定理により、
教団の思想の根本が否定されてしまうわけですから。
そこで教団では、無理数を発見した弟子を処刑し、
無理数の存在を闇に葬り去ろうとしたということになっています。



さて、ピタゴラス教団は有力者の後援をえて栄えていましたが、
その有力者が政争に巻き込まれて失脚。そこで、かつて教団のテストに
不合格になって恨みを持っていた者に扇動された市民が暴徒化し、
ピタゴラスをはじめ教団員はほとんど殺されて壊滅した・・・

さてさて、もう一度おことわりしておきますが、これらは後世に広まった伝説で、
実際にあったことかどうかは、はっきりとはしていません。
ピタゴラス教団の象徴的なマークは五芒星(pentagram)でした。
これは当時ギリシアで信じられていた、
この世の源ととなる五元素を表しているようです。

五元素とは、「火、空気(風)、水、土、エーテル」などと言われたりしますが、
この他にも様々な説があります。五芒星は後世において魔術の象徴とされましたし、
日本でも「安倍晴明紋」として呪術的な意味を持つものとなっています。
では、今回はこのへんで。

五芒星 と安倍晴明紋(桔梗紋)