空間を満たしている物質には、いまだにその存在が確認できないダークマター
(暗黒物質)がある。欧州宇宙機関の観測結果では、
宇宙空間の約27%がこのダークマターであるともいわれているが、
その存在はあくまでも物理的推論を重ねていった上での仮説である。

暗黒物質の最有力候補として素粒子物理学で注目されているのが、
アクシオンと呼ばれる物質だ。アクシオンは強い磁場の中で光に変わると
予測されており、この性質を利用した検出が世界各国で試みられているという。

だが、この度、アクシオンを地上で検出することはどうやら難しいことが
明らかになった。なんと、アクシオンの大部分は「見えない星」を形成している
というのだ。科学ニュース「Live Science」(10月31日付)が、報じている。
(tocana)


LHCハドロン加速器
deeee (6)

今回はこういうお題で行きます。ただし、引用した記事については
ほとんど触れないことになると思います。いちおう少しだけ説明すると、
アクシオンというのは、ダークマターの候補の一つとして想定される、
仮説上の未発見の粒子です。ですから、上記の話は、現在のところ、
仮説の上に仮説を積み上げたようなものでしかありません。

アクシオンが実際に存在するかどうかわかりませんし、もしあったとしても、
それがダークマターではないかもしれません、ダークマターの候補としては、
この他にも、ブラックホールや星の死骸などの天体、
それ以外の仮想粒子もいくつかあるんですよね。

さて、では、そもそもダークマターって何でしょうか?
これは、この宇宙に存在すると想定されている未発見の物質です。
その特徴として、質量があり、光に反応しない性質を持っていると考えられます。
簡単に言えば、光を反射しないので、われわれには見つけることができない。

アンリ・ポアンカレ
deeee (1)

1902年、偉大な科学者であったアンリ・ポアンカレは、
その当時の科学的知見に基づいて、「暗黒なる物質はない」と著書に書きました。
それが、その時代の最先端科学が導き出した知見だったわけです。
ですが、それから100年、科学はさらに進歩を続けました。

天体物理学分野は、理論と観測から成り立っていますが、どっちかと言えば、

最初に観測があって、しかたなく、その現象を説明するための
理論が構築されるケースが多いんですね。それは、天体望遠鏡が
急速なスピードで進化していったからです。

エドウィン・ハッブル
deeee (3)

一つ例を上げると、エドウィン・ハッブルが、

遠くの銀河ほど速いスピードで遠ざかっていることを

赤方偏移から観測したことで、宇宙の膨張という概念が産まれ、
なぜ膨張しているのかを考えているうち、ビッグバン理論ができあがり


発展して現在に至るんですね。ちなみに、余談ですが、アインシュタインは初め、
宇宙の膨張という観測結果を信じようとはしませんでした。
後に、これについて、「生涯最大の過ち」と言ったのは有名な話です。

アルベルト・アインシュタイン
deeee (5)

ダークマターについても、始まりは観測です。1970年代になって、
アメリカの女性天文学者、ヴェラ・ルービンが、

遠くにある銀河の回転を観測しているうち、その周辺部の速度が、

中心部分とあまり変わらないことに気がつきました。これは、望遠鏡で

見える光る物質の総重量よりも、その銀河全体がずっと重いという
ことになります。そこで考え出されたのが、ダークマターという仮説上の物質です。

ここでまた一つ余談。ヴェラ・ルービンが行ったのは、理論ではなく観測で、
結果は誰がやっても同じになる確定した事実です。

ですから、この発見はノーベル賞の有力候補になりえるんですが、

ルービンは、受賞することなく2016年に死去。このことを、

ノーベル賞における女性差別ではないか、とする意見があるんですね。

ヴェラ・ルービン
deeee (2)

さて、ここまでは前置きで、いよいよ本論に入っていきます。
2ちゃんねる(現5ちゃんねる)に「幽霊は本当にいるのか(いないのか)?」
というスレがあって、そこでは幽霊肯定派と否定派が意見を

戦わしていたんですが、ときおり、肯定派からこういう意見が

出てくることがありました。

「現在の科学は完全ではない。なぜなら宇宙にはダークマターや

ダークエネルギーがあるのに、科学ではその正体が

解明できていないからだ。幽霊もそれと同じで、
遠い将来、もっと科学が進まないと解明できないものなのだ」みなさん、これ、
どう思われますでしょうか。自分には強い違和感のある意見です。

まあ、幽霊のことはさておいて、もちろん、時代とともに

科学は進展するでしょうが、はたして、ダークマターのような

「科学的な疑問」が なくなるときが来ると思いますか?

ポアンカレがいた1900年と、現在2018年を比較すると、
宇宙に関する科学的な疑問は、現在のほうがずっと多いんじゃないでしょうか。
そしてこのことは、天体物理学だけでなく、他の自然科学の分野でも同じです。

わかったことが増えれば増えるほど、それに付随してわからないことが出てきます。
これは、科学というものが、「ここまではわかった」 「これ以上はわからない」
という境界を定める役割を担っているからなんですね。
考えてみれば、中世のころは気楽なものでした。

神がこの宇宙を創り、地球はその中心にあって、すべての天体はそのまわりを

回っている。宇宙論についてはこれで終わりで、何の疑問もありませんでした。
ところが、16世紀に望遠鏡が発明されたことで、宇宙に関する疑問がどっと

増えました。ですが、キリスト教勢力の干渉によって、ガリレオ・ガリレイは、
自分が考えた地動説をひっこめなくてはなりませんでしたね。

ガリレオ・ガリレイ
deeee (4)

もし今後、 LHC加速器で、マイクロブラックホールが観測されたとして、
それは余剰次元がつぶれたものである可能性が高いので、超弦理論が正しいことが

証明され、この宇宙は空間9次元、時間1次元であることが判明したとします。
たしかにそれは一つの成果なんですが、それにともなって、
数多くの新たな疑問が出てくるはずです。

例えば、余剰次元は、ビッグバン後のいつ、どうやってできたのか?余剰次元の

中で物質はどのようなふるまいをするのか?とか、いくらでも考えられます。
そしてその中には、事前には想定できない、かなり解決の難しい、
ダークマターのような根源的な疑問もあるんだと思われます。ということで、
科学が進めば進むほど、疑問は増えるものだと自分は考えてるんです。

さてさて、そうは言っても、すべての疑問が解決するときが、
遠い将来にはくるんじゃないか、と思われる方もいるでしょう。
ですが、「疑問がない」=「全知全能のうちの全知」です。
人類が神にならないかぎり、すべての疑問が解決することはないと思いますよ。
では、今回はこのへんで。