今回はオカルト論です。その中でも心霊主義について書いていきます。 
心霊主義(スピリチュアリズム)というのは、定義はいろいろあるでしょうが、
自分は、「19世紀以降、イギリスやフランスで広まった生命の
死後存続仮説と、霊魂の科学的根拠に基づく研究」ととらえています。

霊媒を通しての交霊会が各地で盛んになり、死者との通信などが
試みられました。この流行には、コナン・ドイルなどの文化人や、
多くの科学者が参加しています。今からすれば、何を非科学的な、
と言われかねない霊の話ですが、19世紀、科学の進展により、
キリスト教の力が弱まりました。

特に大きかったのが、ダーウインが発表した『進化論』です。
それまで、すべての生物はいちどにすべて神が創造したと
考えられてきましたが、ダーウインはそれにNOをつきつけたんですね。
さらにヨーロッパ各地でネアンデルタール人などの化石が発見され、
ダーウインの論を裏づけていきます。



「教会や聖書は絶対ではない」そのような意識が当時の知識人の間に
広がり、それまで宗教が一手に扱ってきた魂について、科学的な
アプローチが可能ではないかとする期待感が高まったんです。
この思潮は新大陸アメリカにもおよび、発明王エジソンが
霊界ラジオの開発をしていたというような話もあります。

当時の交霊会において、霊媒の奇術的なトリックが暴かれた例も
多々あります。当時の科学者は世間知らずな騙されやすいタイプも
多かったようですし、何よりもヨーロッパには上流階級に取り入るための
詐欺の伝統が脈々とあったからです。

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錬金術や占星術もある意味そうですし、カリオストロ伯爵などの
アヴァンチェリエ(山師)と言われる人物もそれです。
擬似医療行為や永久機関詐欺のようなのも、この範疇に入るでしょう。
これらは下層階級が、上流の人々に取り入るための手段として
発達してきました。このあたりの歴史を調べると興味深いものがあります。

さて、ホラー小説アンソロジー、異形コレクションの38巻『心霊理論』中に、
井上雅彦氏の、『私設博物館資料目録』という短編があります。
本邦の初期の心霊研究にまつわる怪しげな資料がずらずらと
紹介される話なんですが、上記の心霊主義時代にいったい何があったのか、

それはもはや鼻にガーゼを詰め込んだとしか見えないエクトプラズム
写真などからしかうかがい知ることはできません。

そこに写っているものの真偽はもはや永久にわからない・・・
そんなもどかしい気分を存分に味わえる作品です。

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このスピリチュアリズムが盛んになった時期には、 欧米で
怪談ブームとなり、多くの傑作、佳作が生まれています。
ディケンズの『信号手』、ラドヤード・キップリングの『彼等』、
アルジャノン・ブラックウッド 『空家』、

ヒュー・ウォルポール 『ラント夫人』、レ・ファニュの『クロウル奥方の幽霊』、
ウォルター・デ・ラ・メア 『失踪』、ジェイコブス 『猿の手』、
ヘンリー・ジェイムズ 『ねじの回転』、アーサー・マッケンの諸作などが
有名ですね。この中で、みなさんはどのくらい読まれていますでしょうか。

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また、この流れはゴシック小説の隆盛とも重なり、
ロバート・ルイス・スティーヴンソン 『ジキルとハイド』 
ブラム・ストーカー 『ドラキュラ』、メアリー・シェリー 『フランケンシュタイン』
などが書かれています。怪物たちも出そろってきたわけです。

さて、この心霊主義と怪談の隆盛は、明治期の日本にも飛び火しました。
好事家や作家による怪談会があちこちで開かれ、催眠術が
大流行したんですね。また、アメリカの船員からウィジャボードが伝わり、
「こっくりさん」として日本独自の進化?をとげています。

『リング』


「千里眼事件」と呼ばれる事件が起きたのも、心霊主義からの影響です。
千里眼・念写の能力を持つと称する御船千鶴子や長尾郁子らが、
東京帝国大学の福来友吉や京都帝国大学の今村新吉らの
一部の学者とともに公開実験などを行い、真贋論争が起きましたが、

だんだんに千里眼は偽物、トリックであるという意見が大勢を
しめるようになり、それにかかわった学者たちもマスメディアの攻撃対象に
なって、福来博士は大学を追われることになります。また、
催眠術は1908年、政府から「みだりに行ってはならない」とする

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通達が出され、「霊術」と名前を変えて地下にもぐります。
この霊術は、現在ある民間療法などのルーツとなって生き延びている
と言えるでしょう。ちなみに自分はアメリカで精神科の医師について
催眠術をひととおり学んでいて、できること、できないことは
だいたいわかります。

さてさて、ということで、心霊主義と欧米の怪談について簡単に
ふりかえってみました。これらの流れは現代の日本の怪談にも
影響を与えていますが、現代になって、怪談は日本独自の進化を
とげています。「実話怪談」という形ですね。
では、今回はこのへんで。