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東京都内で1日から2日にかけ、餅をのどに詰まらせて
27~99歳の男女17人が搬送され、このうち80代男性と
90代女性の2人が死亡したことが2日、東京消防庁のまとめで
分かった。17人のうち、60代以上が12人だった。
同庁によると、1日、昭島市の80代の男性が雑煮の餅をのどに

詰まらせ、搬送先の病院で死亡。2日には品川区の90代女性が
餅をのどに詰まらせて心肺停止となり死亡した。東京消防庁は、
「餅は小さく切って、食べやすい大きさに。乳幼児や高齢者と
一緒に食べる際は様子を見るなど注意を払ってほしい」
と呼びかけている。(産経新聞)


今回はこういうお題でいきます。これ、じつは去年のニュース
なんですね。正月の1、2日で、東京都だけで17人が
もちをのどに詰まらせて救急搬送され、そのうち2人が死亡。
今年のニュースは明日あたりに出るんじゃないでしょうか。

ちなみに、不慮の事故のうち「窒息」が原因となる死亡者は、
年々増加していて、現在は約1万人。2006年に交通事故の
死者数を追い抜いています。右肩上がりの原因は、もちろん
高齢化によるものですが、それにしても1万人は多いですね。
ただし、このすべてがもちによるというわけではありません。

さて、のどにもちを詰まらせた場合、掃除機で吸い出せばいい
などと言われますが、これって正しいんでしょうか。
じつは、医療関係者はこの方法は勧めてないんですね。
こういう場合、本人はもちろん、周囲の家族もあわてていて、
逆にノズルで押し込んでしまうことがある。

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また、ノズルで舌を吸い込んでしまったり、気管や食道に
傷をつけて出血したり、ホコリなどのために肺炎を起こしたり
などのケースが考えられ、二次被害を起こしてしまう。
ただし、最後の手段として、細くなった吸引専用ノズルを
使って救命するのはありかもしれません。

一般的に勧められているのは「腹部突き上げ法」。両こぶしを
みぞおちにあてて押し込み、そこから上に向かって突き上げる
方法です。あとは「背中叩き法」などが推奨されています。
もちろん、救急車を呼ぶのも並行して行いましょう。

とち餅 現代のものはもち米も使われています
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さて、もちの歴史ですが、なかなか難しいんです。というのは、
例によって、もちの定義がきわめてあいまいだからです。
狭義のもちは、日本の場合「もち米を蒸し、杵などで搗きあげて
粘り気を出したもの」ですが、現在のこの形になったのは、
早くても古墳時代と見られています。

それ以前には、あわ餅、ひえ餅、とち餅など、雑穀や木の実を
原料にしたもちが食べられていました。ドングリ、トチなどを
もち状にして食べるのは、縄文時代にはすでにあったようです。
トチの実を煮てからアク抜きをし、粉にしたものを練ればとち餅に
なりますが、このアク抜きにすごい手間と時間がかかります。

きびだんご これももちの一種
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それでも縄文時代にあっては貴重な食料で、クリ、ナラ、トチ   
クルミなどの落葉広葉樹林が多かった東日本のほうが
縄文時代には食料が豊かで、人口も多かった。それが
水稲耕作の伝播によって弥生時代に逆転します。

さて、もちは神道では「ハレ」の場で食されるものとされ、
正月などの節句、あるいはめでたい式のときに飾って神に
ささげられ、参会者に配られるようになりましたが、
これも、起源はそれほど古いものではないようです。

上記したことと関係があるのかもしれませんが、ハレの場で
餅を食べる習慣は西日本で始まり、関東では正月には、サトイモ、
ヤマイモなどが食べられていました。芥川龍之介の短編
『芋粥』は、『今昔物語』から着想を得たものですが、

神道でもちが飾られるのは、そう古いことではありません
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あのような形で、関東ではイモ類が食べられていたようです。また、
もちの形も、西日本が丸いのに対して、東日本は四角いとされます。
あと、もちの語源としては諸説あり、一つは、狩猟用のトリモチ
の原料となるモチノキという植物がありますが、粘り気があって
モチモチしたものをもちと言うようになったという説。

もう一つは、日持ちがし、保存食になるのでもちと言うようになった
という説で、よくはわかりませんが、自分的には前者かなと思います。
さて、日本は中国から多くの文化を取り入れていて、中国では、
もち米を使ったもちはありましたが、主流ではなかったんですね。

月餅という中国のお菓子がありますね。あの原料は小麦粉です。
小麦粉などの粉を使ったもちは「練り餅」と呼ばれ、
お月見をする中秋節では、中国では大量の月餅を積み上げて
お供えします。これが日本に入って、米や米粉を使った
月見団子に変化していきます。

月餅 中国でもちと言えばこちら系
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さて、ぜんぜん怖い話にならないうちに終わってしまいそうです。
「月ではウサギがもちを搗いている」という話があり、
地球から見える月の地形をそのように表現しているんですが、
これも中国由来です。中国では、古代から月にはウサギが
住んでいると考えられ、これを玉兎と言います。

ただ、一般的にはヒキガエルのほうが有名です。「嫦娥奔月」
という中国の古話があり、嫦娥(じょうが)という女の仙人が
西王母から不老不死の薬を盗んで月に逃げたが、不老不死には
なったものの、体がヒキガエルに変わってしまい、
一人寂しく月宮殿で暮らしているという伝承です。

中国古代のもちを搗く月のうさぎ
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さてさて、陰陽道の最高の奥義書に「金烏玉兎(きんうぎょくと)集」
があり、インドで文殊菩薩が書いたものとされます。日本では
安倍晴明が秘蔵しており、晴明は道摩法師に殺されてしまいますが、
この書物の呪力でよみがえったことになっています。
書名の金鳥は太陽、玉兎が月を表しています。

ということで、もちから月の話になってしまいました。
当ブログの読者の年齢層がどのへんかはよくわかりませんが、
もちの事故には十分お気をつけください。もち米をそのまま搗いた
もちより、もち米粉でつくったもちのほうが噛み切りやすく、
喉に詰まらないとも言われますね。では、今回はこのへんで。

「金鳥玉兎集」
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