今回はこういうお題でいきます。どんなことが書けますでしょうか。
じつは寿命って、オカルト史とはたいへんに深い関係があります。
なぜなら、西洋でも東洋でも「不老不死」は人間にとっての一つの
到達点と考えられていたからです。これをめざして、
さまざまなオカルトが発生してきました。
中国の道教では、冥界はこの世とあまり変わりのないものです。
そこで、修行を積んで死ぬことのない仙人になるのが究極の目標と
されました。秦の始皇帝がその晩年、不老不死を追い求めて、
東方海上にある蓬莱山に方士、徐福を派遣したのは有名な話ですよね。
錬金術師
不老不死になるため、具体的な方法として「煉丹術」を実行します。
これは外丹と内丹にわかれ、外丹は草木や鉱物から調合した薬を
服用します。これにより、中国では漢方薬が発達したんですが、
水銀や砒素を服用して命を縮めた者も多かったようです。
内丹は、人体の中で気を練り、火を起こす炉のようにして長命を得る
という方法で、瞑想や呼吸法が重視されました。
これが「気功」のもとになったのは間違いないですし、仏教の禅宗に
おける座禅の源流の一つであるとも言われます。
ただ、不老不死の仙人であっても、事故で死ぬことや殺されることは
あります。また、仙人になるには仙骨という生まれつきの素質が
なくてはダメで、誰でもがなれるわけではありません。道教で祀られる
神様には、中国のさまざまな時代で仙人になった人物がいます。
西洋では、錬金術で不老不死が求められました。錬金術の大きな目的は
2つあり、一つは卑金属から金を作り出すこと。もう一つが、
生命の水「エリクサ」を用いて万病を治し、長命を得ることでした。
この研究が現在の化学に発展していきましたし、修道院で作られる
リキュール類もここからできたものですね。
さて、では、人間はどのくらい生きられるんでしょうか。一説には、
120歳が人間の生物学的な寿命の限界と言われていますが、
これについては後でふれます。現在、ご存命の日本の最高年齢の方は、
1903年〈明治36年〉生まれの田中力子さんで、116歳。
同時に世界最長寿でもあります。しかし明治36年というのはすごい。
田中力子さん
103歳のときに初期の大腸癌で手術をしましたが、それ以外に
大きな病気はしたことがなく、頭のほうもしっかりしていて、毎日オセロを
やっているそうです。なるほど、オセロはルールは単純ですが、
そのわりにゲーム性が深いので、ボケ防止にいいのかもしれません。
では、すでに亡くなった方で世界最高長寿はどのくらいかというと、
ギネスブックが認定した記録では、世界最高が、フランスの
ジャンヌ・カルマンという女性で、122歳で亡くなっています。
ただ、この記録には疑問があり、自分の娘とどこかの時点で
入れ替わっている可能性が指摘されています。
さて、ギネス非公認の記録に目をやると、これはありえない世界になっていて、
世界最長寿記録は中国の李青曇(り せいどん)という人で、なんと256歳。
生まれたのが1677年、1933年に亡くなりました。職業は漢方医で、
山中で仙人から八卦掌(拳法)と内気功を教えられたということです。
身長は2m近くあり、残っている写真を見るとたしかに大きい人ですね。
李青曇
長寿の秘訣は、基本的に自ら採取した薬草、霊芝やクコの実、朝鮮人参、
ドクダミ、ツボクサ、あと米酒だけを口にする生活を続けていたためと
されます。まあねえ、256歳はとうてい信じられませんが、清朝時代の
「1827年、李青曇150歳の誕生日を祝った。1877年には200歳の
誕生日を祝った」と記された公文書が発見されているとも言われます。
あと、170歳、161歳の男性もいたようですが、どちらもアフリカの
人物であり、その信憑性には大きな疑問符がつきます。
で、最初のほうに書いた話に戻って、世界の長寿の人物を記したWikiの
表を見ていると、110歳代の人が多いんですよね。
その多くは120歳までいかずに亡くなっています。
テロメア
やはり生物学的な限界点があるのかもしれません。「ヘイフリック限界」
という言葉を聞かれたことはあるでしょうか。1961年、人間の細胞の
分裂回数には限界があることが発見され、その発見者の名前から
つけられています。なぜ限界があるのか、
ここで注目されたのが「テロメア」です。
テロメアは染色体の末端部分にあり、クリップのような形をしています。
生まれたばかりのときは長かったテロメアが、年齢を重ねるにつれて
だんだんに短くなり、細胞の分裂限界は50回、
これによって、人間の寿命は最長でも120歳までと見られてるんです。
怖いのは、正常な細胞が遺伝子変異した癌細胞はこれを持っていない
ことで、つまり不死性を獲得していることになります。
ですから、手術などの物理的手段で切り取ることができなければ、
現代の科学では治療法がないんですね。
さてさて、では、どうしてあらかじめ寿命の限界が定められているのか。
これは、遺伝子は種全体を繁栄させるのが最大目的で、
子どもを産み育てた時点で、その個体にはこの世から退場してもらう。
言葉は悪いのですが、自然による姥捨てと言っていいのかもしれません。
癌が存在するのも、そのシステムの一つだという説もあるんです。
最後に、日本の平均寿命は長いですよね。香港についで世界2位だったと
思います。ですが、健康寿命はそれほどでもありません。
これは、世界でも類を見ない異常な延命治療が貢献していると言われます。
医療の延命中心主義による人工呼吸や胃瘻など、スパゲッテイ症候群と
呼ばれるものですね。では、今回はこのへんで。