日本では自分の血液型をほとんどの人が知っていますが、
外国では「血液型、何型?」と聞くと「血液型? 知ってるわけないじゃん!」
と笑われたりします。でも、やっぱり自分の血液型は
知っていたほうがよさそうです。

性格判断とか相性占いとかにも使えますけど、血液型によっては
大ケガで生きるか死ぬかをわける大ごとになるかもしれません。
東京医科歯科大の研究チームが発表した論文によると、
血液型によって、大ケガで死亡する割合が変わってくるらしいのです。

2013年から2016年までに大ケガを負って救急に搬送された900名
以上の患者データを分析した結果、救命を施したにも関わらず
亡くなってしまった患者の死亡率はO型が28%、ほかの血液型は11%でした。
O型の人、えらいこっちゃです。(GIZMODO)




今回は、科学ニュースから、この話題でいきます。
うーん、まず、血液型とは何かというと、血球の中にある「抗原・抗体」
という物質の有無によって、人間を分類しようとするものです。
日本ではABO式の血液型分類がよく知られています。

A型はBという抗体を持ち、B型はAという抗体を持つ。
AB型はどちらも持っておらず、逆にO型はABのどちらも持っている。
このため、輸血する場合は、同じ血液型どうしで行うのが、
拒否反応が起こりにくく、安全なわけです。



ただし、ABO式は、数ある血液型分類の一つに過ぎません。
他にもRh式などがあるのはご存知だと思います。
血液の中にある抗原の種類は数百あるので、その組み合わせによって、
ほぼ無限に近い血液型タイプに分けることができます。

一卵性双生児でもないかぎり、自分と完全に同じ血液型を
している人はいないとまで言われています。
ですから、ABO式というのは、あくまで一つの目安にすぎないわけです。
まず、このことを前提として頭に入れておいてください。

自分はアメリカにいたことがありますが、たしかに自分の血液型を知らない
という人も多かったです。もちろん、軍に入隊した人は、金属製のタグに
自分の血液型を記入して身につけるので知ってますが、
日本のように、ほとんどの人がわかるということはありません。

さて、じゃあ、日本の血液型占いというのは信じられるものでしょうか?
日本で血液型占いが広まったのは、放送作家だった能見正比古氏によるところが
大きいですね。氏が1971年に出版した『血液型人間学』が大ベストセラー
になり、そこからテレビや雑誌で取り上げられるようになりました。

能見正比古


ただし、能見氏は別に医師や生理学者などではなく、氏の理論は、
統計学的に見ても、お世辞にも説得力があるものではありませんでした。
それなのに、血液型占いが爆発的に広まったのは、一つには、
上記したように、ほとんどの日本人が学校の検査で教えられて、
自分の血液型を知っていたことがあるでしょう。

もう一つは、日本人の血液型(特にABO式)にバラエティがあるからです。
日本の場合、A型が約40%、O型が30%、B型が20%、
AB型が10%くらいです。しかし、そういう国のほうが珍しいんですね。
例えば、ヨーロッパの多くの国では、A型とO型で80%以上になります。

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人間の血液型は、厳密に遺伝によって決まるので、
中には、95%がO型というグアテマラのような国もあり、
そういう国で、血液型性格分類や占いをする意味はないですよね。
また、B型、AB型が少ない国で、ことさらその性格を強調することは、
少数派差別につながりかねない危惧があると思います。

実際、世界の中で血液型占いをやっているのは、日本と、
その影響を受けた韓国、台湾くらいのものです。占星術や、
タロットカードなどの占いには長い歴史がありますが、血液型占いは、
そもそも、血液型が分類できるようになったのが近代のことで、
統計的事実の積み重ねがあるわけではありません。

さらに、血液型による性格分類といった類の話は、
ヨーロッパでのイメージはよくないです。これは、ドイツ・ナチスの
優生学によるところが大きいんですね。純粋ゲルマン人に多い
血液型は○○、ユダヤ人に多い血液型△△、○○は優れた
遺伝形質を持ち、△△は劣ったものである・・・という具合です。

ナチスの優生学 顔の長さを測られる女性


2014年に、日本とアメリカが共同で、1万例以上をサンプルとして、
血液型と社会的行動や性格との関連を研究した調査がありますが、
そこでは、意味のある関連性は見出されませんでした。
ですから、世界的には疑似科学あつかいされることが多いんです。

さてさて、上記の引用に戻って、なぜ救急にかかったO型の人の死亡率が
高いのかについて、はっきりした因果関係はわかっていません。
ただ、数字を見るかぎり、たまたまということでもないようです。
研究チームによれば「O型は血が固まりにくいという性質があるため、
大量出血の止血がしにくいのではないか」という可能性が指摘されています。

輸血パック


うーん、例えば交通事故なんかで、O型は、病院で処置される以前に
大量出血してしまっているなんてことは、ありえるかもしれません。
これを逆に考えれば、血が固まりやすいO型以外の血液型の人は、
血栓などを起こしやすいということが言えそうなんです。

実際、足で血栓ができ、それが心臓や脳に影響を与えるエコノミー症候群は、
O型の人はなりにくく、AB型がいちばん起きやすいんだそうです。
ということで、血液型で性格が違うということに根拠はありませんが、
生理的な違いはあり、それが命に関わる場合もあるということは、
頭に入れておいたほうがいいでしょう。では、今回はこのへんで。