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オンデンザメ

今回はこういうお題でいきます。まあ、自分の趣味がかなり混じった
地味目の内容です。さて、みなさんの中でサメを家で飼ったことがある
という方は少ないと思います。自分はアクアをやってるので、
8年くらい前に飼育していたことがあります。

といっても、成長しても1mを少し越えるくらいの小型のサメで、
残念ながら長期飼育はできず、8ヶ月ほどで死んでしまいました。
死因はおそらく水槽がせまいためのストレスでしょうね。
150cmX60cmX60cmの水槽でしたが、それでもせまい。

大型魚を飼う場合、水槽の幅はもちろん重要ですが、奥行きが大切だと
言われます。水槽内でターンできる奥行きがないと、つねに同じ方向を
向いてなくてはならずストレスが溜まります。これは淡水の大型魚でも
同じです。サメは本来、丈夫な魚なので、水族館のような5m水槽が
あれば飼うのは簡単でしょうが、一般家庭ではまず不可能です。

沼津市深海水族館で世界初、生体展示されたオンデンザメ 7日間で死亡
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さて、オンデンザメは漢字で書くと「隠田鮫」、隠田とは、年貢を
取られないよう農民が隠して作っていた田のことで、深海に隠れ潜む
イメージからつけられたのかもしれません。実際、なかなか目にする
ことができないサメで、その生態はよくわかっていません。
ベテラン漁師でも、生きて泳いでいる姿を目撃した人は少ないでしょう。

英語では、「Pacific Sleeper Shark」というようです。動画サイトの
youtubeには巨大ザメの映像がupされていて、メガロドンではないかと
海外でも話題を集めていましたが、正体は駿河湾深海で撮られた
7m級のオンデンザメのものです。

このオンデンザメ、現在、たいへん注目が集まっていて、
その理由は、世界最長の寿命を持つ脊椎動物であることが判明したからです。
北太平洋全域の水深2000m以上の深海にいて、泳ぐスピードが
大型魚の中でも極端に遅く、時速1km程度と考えられ、
「世界一のろい魚」などとも言われます。

世界最大の魚類であるジンベイザメ 20mちかくまでなる
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でも、おそらくこれ、動きが鈍いことと長い寿命を持つこととは相関が
あるんだと思います。食性は、ジンベイザメなどのようなプランクトン食
ではなく肉食。キンメダイやイカ・タコなど、深海に住む比較的大型の
生きた魚や死肉、口に入るものは何でも食べるようです。

解剖の結果、胃の中からは、魚の他に、ホッキョクグマ、アザラシ、
トナカイ、人間などが出てきています。ただし、前述した泳ぐスピードから、
自分で狩りをしたとは考えにくく、海に落ちて沈んできた死骸を
食べたのではないかと考える研究者が多いようですね。

さて、注目されている寿命ですが、クラゲなどは別として、
無脊椎動物で最長のものは、アイスランドガイというハマグリに似た
形の貝で、凍らせて持ち帰ったものを調べたら、507歳のものが
見つかりました。この最長寿貝はこのときに死んでしまい、
英BBC放送が取り上げて問題化したりしています。

アイスランドガイ 大きめのハマグリですね


貝類は、貝の裏側に木の年輪にあたる模様ができ、それによって
正確に寿命を測定することができます。ちなみに、貝類は一般に長寿で、
寿司ネタになっているミル貝は、人間に獲られなければ、
最低でも150年は生きると見られています。ですから、
自分より長寿の生き物を寿司にして食べているわけです。

では、オンデンザメの寿命はどのくらいかと言うと、これまで、
よくわかっていませんでした。理由は、サメ類は脊椎動物といっても
軟骨魚類だからです。軟骨魚は成長線が明確ではなく、骨を調べて
年齢を推定しようとしても、はっきりわからないケースが多いんですね。

そこで、2010年から、コペンハーゲン大学の研究者が中心となった
チームが、28匹の雌のサメの目の水晶体を収集し、その中に
含まれる特殊なタンパク質を放射性炭素年代測定法で測定しました。
これは考古学などでも使われる測定法で、かなりの誤差が出ます。

サメの目 色を識別する力はないようです
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その結果、オンデンザメの寿命は、5m程度のもので、
400歳±100歳あることがわかったんです。1年で約1cmずつ成長し、
性的に成熟し繁殖できるようになるまで、平均156年もかかる
ということです。オンデンザメの最大個体は7mを超えますので、
もしかしたら700歳の寿命があるのかもしれません。

ということは、織田信長が生きていたあたりに生まれたサメが、
いまだに生存していることになります。そう考えるとすごいですね。
ちなみに、それまで最長寿の脊椎動物はホッキョククジラの
211歳でしたが、記録は大きく塗り替えられました。

最長寿の哺乳類であるホッキョククジラ
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さてさて、では、このオンデンザメの長寿を人間に応用することは
できるでしょうか。生まれつき長寿の原因はいろいろあります。
低い水温で生活していること。上記のホッキョククジラはそのケースです。
体が大きいことや動きが速くないことも長寿と関係しているとみて
間違いないでしょう。あとは外的要因として、ほぼ天敵がいないこと。

まあ、最も根源的な理由は遺伝子がそうなっているからで、
細胞死をつかさどるテロメアなどが関係しているものと思われます。
研究するのはたいへんいいことですが、人間に応用するのは難しいかも
しれません。その長寿は、長い進化の過程で獲得されたものだからです。

進化ということを考えると、どうしても個よりも種が優先されます。例えば、
ネズミは寿命が短く繁殖力が強い、クジラは寿命が長く子どもは少ない。
このバランスは、種全体が最も繁栄できるように決められているんですね。
ですから、人間が無理に寿命を伸ばそうとすると、人類にとってよくない
事態が起きるかもしれません。では、今回はこのへんで。

テロメア これで細胞の分裂回数が制限される
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